2001(平成13)年7月6日(金) 1.観測支援: 東京消防庁ヘリ 「つばめ」 JA9980号機(小窓なし)   東ヘリ始発。クル−4名,東京都災害対策本部建設局3氏、観測員2名、計9名搭乗。 2.搭乗観測者 : 東宮(産総研)・ 大島 3.天候・飛行コース・時刻等 :  搭乗時間 09時07分 〜 15時25分 (神津島で給油・待機3時間余り) 観測時刻 09時58分 〜 10時28分(建設局3氏の阿古小ヘリポート着陸前後)と      14時20分 〜 14時28分 (3氏ピックアップ時) 9:07 東京ヘリポートにて搭乗。 9:09 南に向かって離陸、そのまま東京湾を一路南下するいつもの東消庁コー      ス。 9:15 海ほたる通過。 9:18 君津製鉄所西通過。 9:19 富津洲。 9:26 城ヶ島東。      相模湾内の海面は意外と波立ち白波が目につく。 9:39 伊豆大島南端東方、この先は海面穏やか。霞に浮かぶ新島・神津島、      左前方雲の下に三宅も見える。 9:55 三宅島接近、西の風、白煙と青白ガスが山頂よりわずかに高い高さから      東にたなびいている。ガスは斜面沿いに下降、海上はるかへ。 9:58 神着東寄り上空到達。 1回目: 高度約800m、ガスを避けて右旋回、遠方赤場暁〜スオウ穴を左に見 るかたちで反時計回り飛行へ。北東斜面〜スオウ穴の水面までは見えるがカルデ ラ内は見えず。カルデラ北縁から西側は山頂〜山腹全面的に西からはい上がる雲 にすっぽり覆われていている。中腹を雲上飛行。前方阿古の83年溶岩原〜今崎の 低い地域のみやっと雲なしで見えてくる。雲の切れ間をさがして南端まで回るが 雲のないのは海岸線〜海上のみ。南海上を右旋回、新澪から雲のない海岸沿いを 時計回りに西〜北へと神着まで。再度スオウ穴に接近、やはり西からの雲にさえ ぎられてますます見えない。神着上空を高度下げつつ左1旋回、 10:08 湯ノ浜漁港から海岸沿いに反時計回りへ。 10:12 阿古小ヘリポート着陸。 10:15 阿古小ヘリポート離陸(垂直浮上後今崎から海上へ) 2回目: 再度海岸沿いを時計回りに西〜北へ。伊ケ谷付近から雲の端沿いに山 腹を斜めに上がるかたちでスオウ穴へ接近。高度約900m。スオウ穴〜北東縁は 見えるがカルデラ内はだめ。上昇しつつ時計回り続行、ほぼ真東に幅狭くたなび く白煙を 4000ft (1200m)で余裕をもってまたぐ(10:19)。カルデラ内は 見えないが白煙は火口南東端の位置から上がっている。小ぶりながらパルス状。 これを 4800ft まで上がって南側雲上から斜め下に観察。雲上時計回り続行、2 周目へ。スオウ穴〜北東縁側から一瞬カルデラ内が見える。西側の黒池確認。主 火口不活発。再度白煙をまたぎ(10:24)雲上南縁上空からそのまま西へ。 10:28 阿古上空から離脱。 10:40 神津島空港給油施設わきに着陸、 10:43 エンジン停止。 11:10〜13:10 千両池方面地質調査。 14:02 予定を約1時間早めてエンジン始動。 14:08 神津島空港を西向きに発進。左旋回の後、三宅へ。 3回目:  14:18 伊豆岬から時計回り島内へ。西側上半分は相変わらず雲。 14:20 北側スオウ穴北〜北東斜面。午前より雲多めでよく見えず。 14:21 東へたなびく白色噴煙をまたぐ。雲上時計回り続行。 14:25 北斜面を下降、美茂井付近で左旋回、海岸沿い反時計回りで阿古へ。 14:31 阿古小ヘリポート着陸。 14:35 都建設局3氏搭乗 14:37 阿古小ヘリポート浮上離陸。今崎から海上へ出、進路を北へ。 15:03 伊豆大島東方をぬけて房総半島先端洲崎西を通過 15:06 城ヶ島東 15:09 久里浜 15:11 富津洲 15:25 左旋回後東ヘリに北から着陸、降機。 4。 観察事項 4−1. 噴煙  弱い西風のため噴煙は東にたなびいている。 純白色。灰を交えず。白煙柱は 上限高度約1100m(ヘリでまたいで確認)。カルデラ内の西風に押し上げられる ように東縁東で最高に達した後、下降ぎみに東海上へたなびいている。丁度三池 浜方向。下位に青白ガスを伴い、こちらは東斜面を這うように下って海面上にた なびいている。 白煙の幅は以前に較べて極めて細い(島内で幅300〜500m程度)。排出量の減少 明らか。しかし排出に意外に力強さが感じられ、小ぶりながらモックモックとパ ルス状に排出している。かつてに較ぶべくもないがモワーとだらしなくひろがっ たのに較べて迫力がある。これまで第一主火口から順に主な排出火口を南東にず らしてきているが、現在の vent は細く、頑張ってパルス状に出さなければなら なくなっていることを意味しているのかもしれない。 飛行中3度噴煙をまたいだが、白煙より100m程度は上だったためか、機内で臭 いは感ぜずじまいだった。 4−2. 火口・カルデラ底  カルデラは西斜面をはい上がってくる雲のため雲の蓋に覆われ、中は殆ど見る ことができなかったが、一瞬(2回目観察の2周目)風下わきの北東縁と雲の蓋 の間から覗き見ることができた。 かつての主火口(N1〜N2)は不活発、白煙排出は南東端(以前の記述のS2 or S3)と見えた。その位置は雲上から察する排出位置とも矛盾ない。北西噴 気帯からも200m以下程度の弱い噴気が4〜5本立ち上がっていた。 西池(=黒池)健在。火口丘北のカルデラ床中央に少なくとも3つの赤い小池確 認。(基本的に5月末と変わりないよう。)北池までは見えなかった。一瞬の観 察のためそれ以上中は見えなかった。 雲上周回時、雲の隙間から北東内壁もチラッと姿を見せた。上から下までのやや 明るい色の部分が見えたが最近の崩落の跡か?  その他、カルデラ壁・カルデラ縁・地割れ等については観察できず。  北から遠望すると、カルデラ縁稜線のシルエットがこの1ヶ月余りで大分違っ てきている感。北のピークが鋭くなったよう。スオウ穴寄りの北北東壁の崩落が 進んだのだろう。 4−3. 北東〜東斜面の降灰跡  北斜面〜北東〜東斜面が一見霜が降りたようにも見える。スオウ穴から明治火 口列にかけて、植生が失われて地形はますます見やすくなってきているが、枯れ 木の間の地表が白っぽくなり、植生のない登山道や明治のスコリア堆積面はやけ に白く目立つ。  黒いはずの赤場暁溶岩原や遠目に見える三七山も再び白い。気のせいか北斜面 下半部の鮮やかに緑の回復していた地域も全体に白っぽくくすみ、神着地区以東 の色とりどりの家屋の屋根もどうも鮮やかさに欠ける。これまでの経験からする と、降灰後に降雨があると緑の葉や傾斜のある家屋の屋根にかかった灰は洗い流 されて程なく色を回復する。どうやら比較的新しい降灰の跡と感じられる。  山腹の白っぽさは一様ではない。現火口からの降灰を想定すると、スオウ穴乃 至ややその西にふれたほぼ真北方向と、東北東〜北東方向の少なくとも2軸は考 えられる。  (大島 治)