7月20日(金) ヘリコプター:東京消防庁 ちどり(鈴木・服部操縦士・伊藤機関士) 観測搭乗者:下司(東大地震研),宮城(産総研) フライト: 午前8時56分,東京ヘリポートを離陸.東京湾中央部を南下. 9時 40分,三宅島付近に到達,観測開始.はじめに高度を上げて,5000ft付近から全体を 観察し,高度を下げながら主に山頂部西側の雲の切れ目からカルデラ内外の観察 .10時35分ごろ観測終了,三宅島を離脱.帰路は往路を引き返し,11時15分東京ヘリ ポート帰着.   天候: 晴れ.しかし東京湾奥では霞がひどく視程数km程度であったが,浦賀水道 付近から急速に視界がよくなり,剣崎付近から三宅島の噴煙を視認できた.海上 は鏡のような凪(Fig.1).風は弱い南西風.伊豆諸島の島や本土の上空には積雲 が発達していた.三宅島の島雲は北〜東側山腹に発生していたため,観測は雲の 切れ目の西側からに制限された. 噴煙の状況: カルデラ内主火口から白色の細い(太さ200-300m程度)の噴煙がカ ルデラ壁を越えてゆっくり上昇する(Fig.3).噴煙高度は最大2000m(海抜)で, 観測中ほぼ一定の高度を保っていた.風が弱いせいか,島の上空で噴煙が滞留し 塊状の大きな噴煙となっている.青白いガスが白色噴煙から分離して20km以上北 東方向へ漂っている.噴煙・火山ガスは一度高く上昇してからゆっくりと風下へ 流れるため,噴煙・火山ガスの流れと地上の間には隙間が出来ている( Fig.1). カルデラの状況: カルデラ輪郭に大きな変化はない(Fig.4).カルデラ西縁に ある, 5月中旬に北半分が崩壊した落ちかけのブロックもほとんど変化せずに残 存している.カルデラ底にある,南側の池(黒い池)の水量がかなり減少し,干 上った池底の赤錆状の物質がもとの池の輪郭を示している(Fig.7).カルデラ 内の地形には大きな変化は見られない.スオウ穴西側カルデラ壁の小規模崩落は継 続しているらしく,小量の土ぼこりが見られた. 火口の状況:火口地形に顕著な変化はない.白色噴煙の量が激減し,主火口の外側 火口底をほぼ完全に観察することが出来た(Fig.5).外側火口底はほぼ全面に硫 黄が付着している(Fig.6).外側火口底の中央には顕著な噴気孔が存在し,青白い 透明な火山ガスを噴出している.この噴気孔周囲には硫黄の付着が見られない.内 側火口からの白色噴煙の量もこれまでで最も少ない.主火口周辺の噴気の量もかな り少ない. 山腹の状況:18日の小噴火で降灰が予想される北東山麓は噴煙のため観察できな かった.阿古〜レストハウスの山腹は一時ほとんど樹木の葉が落ちていたが,この 付近も大分緑が目立つようになった.泥流対策としての播種の試験なのか,村営牧 場東側にくっきりした緑色の部分が出来ている(Fig.2). 注意:レストハウスから七島展望台へ登る舗装道路の下のスコリアが一部洗い流 され,アスファルト舗装の下が空洞になり始めている場所があるので,通過すると きには要注意.レストハウス前交差点から約300mの地点で,左側斜面のガリーから スコリアが流れ出しているところ. (下司信夫) 写真キャプション Fig.1 北西側から見た三宅島. Fig.2 南西山腹から見る雄山. Fig.3 北側から見る噴煙.細い噴煙が上昇し,カルデラ上空に停留している. Fig.4 西側から見るカルデラ全景. Fig.5 主火口全景.火口底中央部に活発な噴気孔(群)がある.上昇する噴煙のかなりの部分はこの噴気孔から出ている. Fig.6 外側火口壁・火口底のほぼ全面を覆う硫黄 Fig.7 カルデラ底の池群.手前の赤い池の水量が減少している. Fig.8 北西山腹のガリー.この付近では未だほとんど植生の回復は見られない. Fig.9 今日は「海の日」.富津岬の海水浴場も行楽客でにぎわう.