7月27日(金) 1.観測支援: 東京消防庁ヘリ 「かもめ」 JA9692号機     立川より飛来。飛行目的は三宅島観察のみ、途中給油着陸なし。     クル−3名(奈良隆志機長)と我々観測員2名の計5名搭乗。 2.搭乗観測者 : 宮城(産総研)・大島 3.天候・飛行コース・時刻等 :    この項は観測飛行の備忘録に火山活動関係以外のことも記述しています。   時間のない方は第4項へどうぞ。 南海上に台風6号 (955 mb) 接近、おかげで35度も超える連日の猛暑は一服、北より の風が吹いて久しぶりに凌ぎやすい日となったが空は一面にあやしい雲。暗雲を突い て発進、途中スコール状のシャワーをくぐり、視程不良のため海面の見える低空飛行 を続けたが南は徐々に明るくなり、青空のもと海面に機影が映り出したと思ったら眼 前はいきなり三宅島。追い風に乗って速い!発進からたった37分!  しかし島はすっぽり雲に覆われて上半部〜カルデラが全く見えず、高空からの噴煙 観察・低空での海岸沿い観察が主となった。北北東の風、白色噴煙は新澪方面南南西 海上へ。晴れて地上の見えるのは海岸沿いのみ。  搭乗時間 08時56分 〜 11時02分 (途中給油なし)  観測時刻 09時33分 〜 10時05分 (32分、洋上旋回を含む) 8:56 東ヘリ発進。北向きに離陸後ただちに右旋回、東京湾を一路南下へ。      荷物積載用に中列座席を取り払ってあるためか、我々2人は珍しく?      操縦士すぐ後ろの2列目に着席(目前にGPS)整備担当氏は4列目。 9:02 羽田寄り(西)から定点海ほたる通過。 9:06 富津洲。浦賀水道はスコール状に雨のカーテン、中心を避け迂回飛行 9:14 洲崎沖。海面波立ち白波目立つ。砕け方は北の風。 9:25 視程回復。海面の大きなうねり(南東からと見える)は台風の余波か。 9:33 三宅島に北北西から接近、上空は晴れているが島の上半部はすっぽり雲      に覆われている。雲の高さ標高450〜1000mくらいか?噴煙はこれを突き      破ってはいない。 伊豆岬北の洋上から観察飛行に入る。時計回りで 1回目: 東〜南の海岸線沿い〜西中腹(の上らしい)〜北中腹(の上らしい)を      雲上1周(最高5200 ft)して噴煙全景を観察、 2回目: 小半径で雲上をもう1周、火口上空の噴煙上昇状況を観察、      雲のない西海上に一旦離脱して高度を下げ、阿古に接近、 3回目: 今崎(南西)から時計回りで大路池(南)まで都道沿いに低空観察、      大路池手前で反転、東海岸沿いに北上、そのまま 10:05 北東海上から離脱、 10:24 雨雲。北上につれ徐々に天候悪化、飛行高度1500ft から700ft へ下降 10:32 洲崎沖 10:41 久里浜 10:46 富津洲、東京湾内も白波、北風で湾奥まで湾内全体が洗濯板のよう。 10:52 海ほたる 10:59 東ヘリに南側から直に着陸、 11:00 エプロンに停止 11:02 エンジン停止、降機。       復路は向かい風のため往路より18分長くかかって所要55分間。 4。 観察 4−1. 噴煙 上空は晴れだが山頂は雲に覆われている。北から見る雲の高さ標高450〜1000mくら いで噴煙はこれを突き破ってはおらず、高空から見ると噴煙は雲の上限ぎりぎり、よ って噴煙高は最高1000mくらい。 北北東の風により新澪方面の南南西海上へ細くたなびいており、上限は殆ど水平。 白い雲と一見識別しにくいが雲より純白色、かつ塊状の綿飴の連続のよう。モックモ ックという以前の力強さは感じられないものの弱くパルス状。太さも際だつことなく 、噴煙活動は増減を繰り返しながらも減衰傾向のトレンド上にある感(観察飛行中は 中でも弱い方)。 噴煙下位に青白ガスを伴っており、南南西の雲の下、斜面を這うように下って海面上 にたなびいている。 飛行中噴煙をまたぎ、低空では東西両側から接近したが臭いは感ずるまでには至らな かった。(青白ガスの中に突っ込んではいない。) 4−2. 火口・カルデラ・山頂周辺 全く観察できず。 4−3. 山麓斜面と北北東〜東斜面の降灰跡  山麓斜面下半はかなり緑が回復してきている。その回復ぶりは春先目覚ましかった (以前感動して書いた記憶がある)が、緑濃くなったこの季節、島をほぼ1周してみ ると元々噴火の影響をあまり受けていない阿古・伊ケ谷・伊豆・坪田地区の山麓の緑 は特に濃い。その他の山麓地域や中腹は緑と赤茶、それに灰をかぶって枯死した灰色 のコントラストが明瞭。かつ緑と赤茶それぞれに濃淡もある。(昨秋早々と赤茶色に なった三池浜の松並木も大分緑がかっている。)  その緑の濃さの中にあって、空港ビルの北約100mから南約300mくらいの区間から 山側の狭い(細い)地域の緑が(新芽の緑も)くすんで見える。山頂側ほどくすみが ひどい(色の冴えがない)ようにも見える。これは植生の差ではなく降灰の跡の可能 性が大きい。ただし新鮮さはない。いつからこう見えたのか?(この地域は少なくと も2ヶ月以上観察のチャンスがなかったので私にはわからない。)東南東にたなびい た幅の細い噴煙からの降灰と思われるが、過去の微動+風向を検討してみる必要があ る。(滞島者はいても夜間の降灰はまず目撃されていない。翌朝も都道に余程はっき り積もっていないと気づきにくいらしい。このことは前回も記した。念のため。)  7月6日のフライト時、北斜面〜北東〜東斜面の白さに驚かされたが、3週間後の 今日、標高約300m以下にその後新たに明瞭な白さが加わったようには見えない。7 月6日視認分の降灰は、その後風向データとも照合の結果、前回の検討どおり6月24 〜26日のものであるらしい(気象庁観測データに基づく)。該当する微動は次の6回 あるが風向が殆ど変わらず、このどれに対応するかまでは絞り込めない。降灰分布か ら見ると複数回が対応する。6例中5例が夜間(1例夕刻)だが、振動記述からみる 限り(1)(3)は可能性が高そう。 (1)6月24日(日)1638 やや振幅の大きな微動、空振を伴う、島内で震度1。 (2)6月24日(日)1940 やや振幅の大きな微動、空振を伴う。 (3)6月24日(日)2311 やや振幅の大きな微動、空振を伴う、島内で震度1。 (4)6月25日(月)0050 やや振幅の大きな微動。 (5)6月26日(火)0223 やや振幅の大きな微動、空振を伴う。 (6)6月26日(火)0401 やや振幅の大きな微動。  今日のフライトでは上記のように久しぶり(2ヶ月以上ぶり)に北東〜東山麓を観 察できたが、降灰により白く見えるか否かはかなり地表地質に依存していることが見 てとれた。すなわち、平坦な細粒スコリア堆積面や路面上は白く、ささくれ立った( 起伏に富んだ)アア溶岩表面は白さに欠ける。単位表面積当たりの降灰量を考えれば 当たり前のことではある。このため、赤場暁は溶岩原はあまり白くないが泥流の覆っ た部分は白い。瓢箪山のスコリア堆積面も白い。三七山は教科書的に明瞭で、北半分 のスコリア堆積面は白く、山頂クレパスは滑落崖の構造を白黒の色の差で見せ、間か ら海岸へ流出したアア溶岩表面は黒い。上空から地質図を見ているよう(ちょっと大 袈裟?)。そういえば1983年火口列も去年の降灰直後はスコリア堆積面・溶岩原・滑 落崖の差が降灰で明瞭だった。  (大島 治)