8月6日(月) 今回の同乗者は山崎さん(気象庁),及川 純さん(地震研)の他1名. 搭乗したヘリは警視庁航空隊の「おおとり8号」. 午前9時6分,東京ヘリポートを離陸.およそ1時間後の9時56分に三宅島が 見える.三宅島測候所内にある絶対重力計のデータを回収するため,10時00分 及川さんが伊豆の中学校にあるヘリポートでヘリを降りる.10時03分に再離陸, 10時27分前の24分間観測を行った.観測コースは,伊豆方面から一度海上に 出たあと,島の北北西方向から真南(村営牧場の少し手前付近)までカルデラリム 付近を時計回りに旋回.その後カルデラリムを離れ,一周道路のほぼ真上を 反時計回りに旋回し,伊豆方面まで戻る.このルートを3回繰り返した. 観測時の飛行高度は,1,2回目は900m,3回目は1100mであった. 観測終了後,神津島へ向かう.10時41分,神津島に到着.給油と人の 入れ替えの後,11時18分に神津島を離陸.及川さんを拾いに再度三宅島へ向かう. 11時32分,伊豆の中学校ヘリポートにて及川さんと合流.11時33分に伊豆の ヘリポートを再離陸,帰途につく.12時33分,東京へリポートに帰還. [噴煙] この日の噴煙は南南西〜南西方向にたなびく.噴煙は白色だが量は多い(写真1). 風が弱いせいか,噴煙は幅広い範囲に拡散しているような印象を持った. 噴煙の到達高度は約1500 m. 10時03分〜10時27分の観測時には,噴煙と同じ方向に青みがかった硫酸ミストが 移動していたが,11時32分に再度三宅島に立ち寄ったときには,島の北北西方向 (伊豆)にもミストが認められた.風が弱かったため,より広範囲にミストが 拡散したらしい. [カルデラ内部] カルデラ内部の様子は,これまでとほとんど変化なし(写真2,3).メインの コーンの中にある内側火口から,白い噴煙が1500 mの高さにまでもくもくと 上昇している.また,この内側火口の中央付近から,白い噴煙に混じって 青みがかったミストが直接放出されている様子が確認できる(写真4). メインのコーンの周囲からも白色の噴気は上がっているが,量的には少ない. カルデラ内にある黒色水たまりは,かなり水位が下がり,その大きさが著しく 減少した.カルデラの北側にある泥水色の水たまりも,一時期に比べれば 小さくなった.ただ,スオウ孔の大きさはほとんど変化なし. [カルデラ壁] スオウ孔をはさんだ両側,すなわちカルデラ壁の北北西側と北東側の斜面が うす茶色に汚れている(写真5,6).これらのうち,北北西側の汚れはカルデラ 壁面に露出する地層の縞模様が見えなくなる程濃い.この様子を見る限り,最近 火山灰の放出があった可能性がある.山の北北西および北東斜面が,周囲に比べて やや白っぽくなっていることから,この火山灰の一部はカルデラ壁の外に 放出されたようである.7月10日前後に小噴火があったこと,またその時の 火山灰の方向が島の北側と推定されていることから,このカルデラ壁の 汚れは7月初旬の小噴火のイベントに対応していると考えられる. [山麓および山腹] 七島展望台をはじめ,村営牧場付近はだんだん黒みを帯びてきた(写真7). これは地表に堆積した火山灰が流失し,溶岩流からなる地肌が露出してきたことを 暗示する.また,村営牧場付近には,うす茶色を呈する地表面の中に局所的に 鮮やかな緑色を呈する領域がある.これは草の種を人為的にまいた事によって 生じた変色域と推定される. 南側のカルデラリム付近に認められた何本かの亀裂については,今回は噴煙の 真下に当たるため,確認することはできなかった. (大野) [写真の説明] 写真1 カルデラ壁からあふれ出す青みがかったミスト.このときは,ミストと     噴煙はともに南南西〜南西方向に流れる. 写真2 北北東から見たカルデラ.飛行高度約900 m.メインのコーンから噴煙が     上昇する.写真の左端・カルデラの北東側斜面がスオウ孔あたりに比べて     なんとなく白っぽい. 写真3 カルデラの内部.黒い水たまりはかなり小さくなった.かるでら北側の     水たまり(泥色)もサイズが減少.それ以外はあまり変化無し. 写真4 白い噴煙を上げるメインのコーン.北東側から撮影.白い噴煙の真ん中     からは,青みがかったミストが直接噴出している.メインのコーン     だけでなく,火口列やコーンの麓付近からも噴気が上昇しているが,その     量は少ない. 写真5 うす茶色に汚れたカルデラの北北西斜面.地層の縞模様がかき消されている. 写真6 うす茶色に汚れたカルデラの北東斜面.北北西斜面同様,地層の縞模様     がかき消されている.汚れの範囲は北北西斜面より狭い. 写真7 村営牧場付近.七島展望台付近はかなり黒っぽくなった.火山灰がどんどん     削剥されているようである.写真の右下部分には,局所的に緑がかった     領域があるが,これは人為的に草の種をまいた事によると推定できる.