2001(平成13)年8月24日(金) 1.観測支援: 東京消防庁ヘリ 「ちどり」 JA119A 号機     今週8月20日(月)から飛行計画が変更された。自衛隊機で行われてきた     COSPEC観測を、警視庁・東京消防庁でも試行することになったため。      ヘリは、火口観測の後、神津島で給油とCOSPEC搭載(+乗員昼休み)、     COSPEC測定、神津島に戻って測定装置を降ろし再度給油、東ヘリに帰還、     というスケジュール。我々火口観測組は神津島で3時間余り待機となる。     今日の「ちどり」は立川より飛来。クル−4名(佐々木機長)、我々観測     員2名、東消庁鈴木防災部長・菊地3部指揮隊長同乗で、計8名.     COSPEC観測時はクル−4名+観測員2名(気象庁;中堀・川崎氏)。 2.搭乗観測者 : 平(気象庁)・ 大島 3.天候・飛行コース・時刻等 :   四国〜東北に大雨をもたらした台風(11号)一過の昨日は広い範囲で晴れマークだったが、 今日は雲がでている。三宅島も雨量多かったはずで、その影響が噴煙活動・ 斜面浸食〜泥流に も出ている可能性があり、今日の観察対象は盛り沢山。(東消庁ヘリはヘッドセットなくパイ ロットとの直接会話が出来ないため、下記の要望メモを用 意、洋上安定飛行中に渡して含んで もらった。)雲・噴煙・ガス条件等をにらみ合わせての機長判断で、ふだんあまりない飛行 ルートとなり、短時間ながら効率的な観察 となった。  天候は一応晴。都内は全天の半分以上雲だが西〜南に青空がのぞく。全体にかすみ立ちス カッとしない。(東京湾内150mの低空飛行でも下はスッキリ見えない。)洋 上もずっと白く もやっぽい中を飛行(4500 ft)、しかし高空は青空にすじ雲が見えて既に秋の気配。  三宅島は西風弱く島雲わずか。西斜面から山頂北半にかけてちぎれ雲が邪魔するが、見える. ただし上昇した白色噴煙が傘になって日射をさえぎり、カルデラ内は暗め。  搭乗時間 09時00分 〜 15時44分 (神津島滞在4時間)  観測時刻 09時49分 〜 10時15分 (26分間) 9:00 東ヘリにて搭乗。      東消庁2氏と整備担当主任が操縦士すぐ後ろの2列目に着席。もう1人      の整備士が3列目左、中央と右にはCOSPEC台座用に?中と右に我々2人。 9:03 発進。北向きに離陸後すぐ右旋回、東京湾を一路南下へ(高度150m)。         〜 海ほたる 〜 浦賀水道 〜 久里浜 〜  9:21 剣崎(三浦半島最南東端) 9:35 伊豆大島南端(波浮)東方。(高度4500 ft)      大島には西からの上昇気流の雲がカルデラ部の上+2倍の高さ      (=約2300m)に立ち上がっている。海面波立ちなく穏やか。 9:46 新島向山が霞の中に白く確認できる。 9:47 前方、三宅島。上空まで大きな雲はないがもやっている。      噴煙高々と上がり直上から東側に広くひろがっている。      高さ=山頂+島の高さの2倍=約2300m。(大島の上昇雲と同じ。)      東消庁2氏は観察後降りることになった。座席交代、観察員は右窓に。 9:49 三宅中ヘリポート上空を通過、そのまま南下して、観察飛行に入る。      靄っぽいのと噴煙の傘で上空高く上がってもあまり意味ないため、      高度そのまま、4400ft。西縁ごしに火口見える。(左窓)      9:54 村営牧場上空で右旋回反転、カルデラ縁に接近、時計回り観察へ。      千切れ雲で一時遮られるが中見える。 9:58 スオウ穴から東へ離脱。      北東斜面上で左1旋回して高度を下げ、地獄谷 〜 三池へ下降、 10:03 三池浜から海岸沿い時計回り飛行(高度1000ft?)、東〜南〜西へ。 10:10 阿古大鼻から真東へ。カルデラ西縁まで山登りのように斜面を上昇。 10:12 カルデラ西縁から縁沿い低空(高度約800m)を時計回り。 10:13 スオウ穴で左旋回、反転。  〜:15 北縁へ再接近後、縁沿い反時計回り西南西縁まで。(左窓ごし)       右旋回離脱。三宅中ヘリポートに向け北行、観察終了。 10:23 三宅中ヘリポートへ西から着陸。東消庁2氏降機。 10:26 同  離陸。そのまま神津島へ。(高度1000 ft) 10:38 神津島空港東から着陸 10:40 エンジン停止、降機。 程なく中堀・川崎氏COSPEC積み込み。給油、クルー昼食・休憩の後、ヘリは 12:25 離陸        COSPEC観測 14:02 着陸。午前中三宅に降りた東消庁2氏もこの便で降機。 待機時間の間、大島は秩父山方面地質見学へ。 後半、平さんの車に拾われ、現地対策本部初訪問。 14:41 ヘリ脇でスタンバイ。やがて現地対策本部訪問の東消庁2氏も帰着。 14:51 エンジン始動。    〜 神津島・式根島・新島・鵜渡根島・利島・大島のすべて西岸沿い 〜 剣崎からは往路の逆。アクアラインクロス時、初めて海ほたるより東で道路を跨ぐ 。 15:43 東ヘリ着陸 15:45 降機、ヘリはその後立川へ。 4。 観察 4−1. 噴煙  遠望する噴煙は高度2300m程度まで大々的に上がり(東海岸上あたり)、活発な活 動に見え る。しかしカルデラ縁越しにのぞき込んでみると意外とおとなしい。以前の モックモックとい う力強さはなく、しまりなく白煙がモワ〜と上がっている。久々の 高い噴煙は、無風に近いき わめて弱い西よりの風のいたずらによるところ大らしい。 上空にひろがる普段より多めの白煙 は、台風11号の多雨による影響も考えられる。  噴煙は白色。火口直上へ真っ直ぐ上がり、カルデラ縁上300〜400mを底に急に横に ひろ がっている。西から見るとキノコ雲状。底が(傾いているが)平ら。キノコの茎 は直径200〜 300m。傘の底とカルデラ縁の間から東の遠景が見える(空港滑走路 も)。 急に横にひろがった白煙の行き先がはっきりしない。大体は東へ向かっているが、南 東〜南南 東へもひろがっている。(風弱いためか。)東向きの噴煙は底もゆるく (20度くらいに見え る)上昇するが、南南東向きの噴煙の底はむしろ一旦垂れ下がっ てから低角度(10度以下)で 上がる。このためキノコの底面は北高南低ぎみに傾き、 非対称。西側から斜面を上昇してカル デラ〜南斜面越しに東方へ抜ける気流を考えれ ば、底の形はとりあえずわかる気がする。  SO2 ガスも拡散して視覚的にいつもほど明瞭ではない。東に広くひろがっていると 見え、東 斜面が薄く青白くみえる程度。ヘリコプターのカルデラ縁沿い周回時、東縁 接近時には臭いを 感じたが、東海岸沿い中空飛行では感じられなかった。(ヘリはい ずれも窓開け。) 4−2. 火口  主噴煙(白煙)は従前どおり接近した2火口から出ている(が、合体して1本の白煙として 上がっている)。活動中の火口は南東奥の大型火口とその北隣りの小火口 (火孔)。 前者(南東端大型火口;以前S2とS3に区別していたが、1つに大型化している。)からは白煙 がモワ〜と上がる。これまでになく輪郭がはっきりと見え、直径約170m ?(150〜200m)、 南西側には殆ど垂直の壁が迫っている。 後者は、旧主火口(第1火口またはN1)の南東端にあとからできた小火孔(直径20m程度)。 (7月ころの熱測定で他より高温が測定されていると聞いているが、)過熱 水蒸気をノズル状 に排出しているのか、白煙は火孔ではあまり見えず、50mくらい上 空から上方に見えている。 (火孔付近もその気で見ると中心は無色透明、周囲は筒状 に白っぽい。) 旧主火口(第1火口またはN1)内部は、上記小火孔周辺を含めて硫黄べったり。 噴煙とは別に、噴気はあちこちから上がっている。最高250m程度でカルデラ縁に達するもの ではない。出所は、新たな箇所は見あたらないが、すべての火口を包含する火口縁(大輪郭; 径約300m)のあちこち、火口外の北西噴気帯、火口丘(火砕丘)北西斜面の亀裂内、火口丘 北麓、火口丘東斜面の大クレバス。 4−3. カルデラ カルデラ底: 台風(11号)の置き土産で水浸しになっている。カルデラ底中央(火口丘北 麓)にかつての「湿地帯」が再現、無色の水の池が多数できている。特に目立つ大池は3つ。 常在の「西池(黒池)」「北池」健在だが、黒池はやはり黒く、湖岸はえび茶色。西カルデラ 壁崩落の崖錐成長に押されて大分細っていたが水位上昇やや復活の感。「北池」には岩礁状に 小さな「島」ができている。大が2つ、小が数個。北カルデラ壁崩 落の崖錐成長著しく、崖錐 斜面を転動してきた大型岩塊が池に飛び込んで島状突起になったと見られる。 カルデラ壁: カルデラ壁崩落による崖錐成長は西・北西・北・北東・東で目立つ。 南東は火 口丘肩にかかるためもあり岩なだれとして底部まで展開。岩なだれの発生源は1535年割れ目の 両側が顕著だが、一見、4月から大きく変化したようには見えない。北壁は変容激しく見える が詳細観察の時間はなかった。 カルデラ縁: 北カルデラ壁崩落による拡大は明らか。南西縁以東の地割れは今回は噴煙に近 いため見られなかった。西縁の大地割れは南半がまだ残っている。スオウ穴も水面が後退した ように見える。 4−4. 泥流 台風11号の雨で懸念された泥流発生の跡はあまり見られなかった。 ○ 北斜面は観察できず。赤場暁の都道は確保されている。(多少かぶったかも。昨日除去し た?) ○ 坪田の町並みの北はずれ(橋の北)の2カ所はまた発生したらしい。後背地が茶色の地肌 を見せ、都道常習地2カ所は黒ずんでいる。手前で止まっている車がある。 ○ 大路池西方2カ所の仮設橋付近、異常なし。但し中腹の谷の一部は以前に較べ地 肌を見せ る幅がひろがっている。 ○ 村営牧場は、南西斜面の谷からの流れで、これまでの泥流流路が拡幅・延長した。従来の デルタ状地域2カ所がひろがり、先端の細い流路は1983年火口列を横切り滑落崖を下って鉢巻 き道路を再度遮断している。  (大島 治)