12月4日(月) 今回の同乗者は中野 俊氏(地調)の他,御蔵島に向かう都の職員2名と 災対関係者1名.搭乗したヘリは警視庁の「おおとり4号」でした. 午前9時5分,東京ヘリポートを離陸.三宅島を通り過ぎ,10時2分に御蔵島に 到着.都の職員2名をおろした後,再離陸.10時13分,三宅島上空に到着し, 10時55分までのおよそ40分間観測を行った.途中神津島に立ち寄り,給油と 災対関係者の入れ替えを行った後,11時35分に神津島を出発.首都高速で 起こった事故の状況を確認するために,美女木JCT付近まで行った後, 帰途につく.12時55分,東ヘリに帰還.長いフライトでした. 今日は天候とパイロットに恵まれ,カルデラ内部およびカルデラ壁を存分に 観察することが出来ました.この日に大野が撮影したカルデラ内部の写真も ご覧下さい. [噴煙] この日に撮影された噴煙の様子(島の南東から撮影)を写真1に示す. 折からの北風にあおられ,メインの噴煙は南に流れていた.噴煙の色は白で, 所々硫酸ミストの青い煙がまとわりつく.噴煙はいったん上昇した後,高度を 下げ,海面上を這うように流れていった.またこの噴煙とは別に,東南東方向に 伸びる白色の噴煙も認められた.噴煙の到達高度は海抜1500mほどで,東南東 方向の噴煙の方がやや高い. 坪田上空・高度900m付近をヘリが通過した際に,弱い硫黄臭を感じた. [カルデラ内部] カルデラの北西端,南端,北東端上空でそれぞれホバリングし,カルデラ内部を 詳細に観察した.また,カルデラの中心を何度か横断し,最近崩落したカルデラの 北側斜面を観察した. 写真2はカルデラ南端にあるコーンおよび火口列の拡大写真である(上下が 判別しにくくてすみません.写真の上が東になります). カルデラ内部にあるコーン,マウンド,水たまりの位置関係に大きな変化は 認められない.火山灰を伴う噴気は認められないが,噴気活動そのものは 非常に活発で,メインのコーンやその周辺(コーンとカルデラ南東壁の境界 付近)から白色噴煙が定常的に放出している.メインのコーンのすぐ脇には, 周囲に硫黄を付着させた小さな噴気孔が列状に連なっている.メインのコーン の西に並ぶ列状の火口群からも噴煙があがっているが,顕著ではない. 写真3は南から見たカルデラ内の全景写真である. 今回,カルデラ底には大小さまざまな,かつ色もバラエティに富んだ水たまりが 存在するのが確認された.カルデラ北端にある大きな水たまりの東側には, カルデラ壁に沿うように茶褐色の水たまりが点在する.これらの多くは カルデラ壁の崩落物によって埋め立てられつつある. カルデラ南部の火口群の北側には,赤色および陸水色を呈する水たまりが 認められる.これらのうち,陸水色の水たまりは比較的新しい泥流堆積物の 分布と連続していることから,泥流に伴って生じたものと思われる. カルデラの北西域にあるマウンドは,中央部が赤褐色を呈する.一時期に比べて やや比高が高くなったような気がするのは気のせいだろうか?このマウンドの 東側斜面(大きな赤い水たまりに面する)には,ガリーの発達が認められる. [カルデラ壁] 最近の崩落によって露出した,カルデラの北西壁(マウンドの上部)と北北東壁 (スオウ孔の下)の断面を観察した.フライト本来の目的からはややずれてしまう が,大変興味深い写真が撮影できたので,お叱りを承知の上であえて紹介する. 写真4は北東から見たカルデラの西〜北西壁の写真である. カルデラ壁は赤(褐)色,黒色,黄土色を呈する火砕物と溶岩の累層から成る. また,その累層を突き抜ける岩脈が白っぽい筋として何本も認められる.これらの うち,カルデラの最上部に位置する分厚い黒色の火砕岩(?)層が特徴的である. また,赤褐色層(赤色スコリアと思われる)が意味ありげな起伏で挟在する様子も 認められた(mantle beddingしているのか??).顕著な不整合面等は 確認できなかった. 特筆すべきはスオウ孔の下である.スオウ孔の下には,ろうと型を呈する黒色の 火砕岩が,火砕物と溶岩の累層を貫いて地表(すなわちスオウ孔)まで達している のが認められる(写真5).ろうとの上の部分(ラッパの内部)には,成層した 湖沼性の堆積物が,またろうとの下の部分(くびれ)には,黒色の火砕岩(白い 斑点があるので溶岩には見えない.おそらくvent breccia)がそれぞれ認められる. ろうとの下の部分(〜火道)の幅は,スオウ孔にある水たまりの短径の約0.7倍で, 下部ほど細くなっている様に見える(切られ方の影響かもしれない) [スオウ孔] 写真6は12/4のスオウ孔である. スオウ孔のサイズはほとんど変化していない.ただ,水の色が一時期の毒々しい 赤色に比べれてかなり落ち着いた様に見える.今回観察した限り,スオウ孔の 湖水は赤茶色の泥水であった. [山麓および山腹] 時間の都合上,山麓・山腹の調査はほとんど行わなかった.気が付いた点だけを まとめる. 島の北東域(〜最も降灰量の多い地域)にある赤場暁の上流域には,火山灰層の 表面に大小さまざまな規模のガリーが無数に発達している.それらの一部は深く えぐれており,旧地表面やその下位にある堆積層(溶岩か??)までが露出 している.これを見る限り,大雨時には大規模な泥流の発生に留意する必要がある. (大野)