12年12月08日(金) 観測時間 10時20分 〜 10時35分,      11時52分 〜 12時03分 搭乗時間 9時03分 〜 13時55分 (東ヘリ→海ほたる→富津岬→久里浜東沖→城が島東→大島東→0958神津島1002 →1017三宅中ヘリポート1020→(第1回観測)→1035観測終了→ヘリは神津島待 機→三宅中ヘリポート1152→(第2回観測)→1214神津島1307→往路の逆→ 1355東ヘリ) (東京消防庁 はくちょう JA 6720 クル−4名 清水機長) 観測者: 大島 治(東大) 津久井雅志(千葉大) 天候:はれ 冬型が崩れ,風弱く,海上はもや,大島付近は1300〜1700mに雲 自治省消防庁課長,同随員,東京消防庁消防指令長の三宅島,神津島視察の任務あり.  神津島にて東京消防庁職員3名をのせて,三宅島伊豆のヘリポートへ,ここで,消防庁, 東京消防庁職員計6名降機.大島・津久井は第1回観測へ,伊豆〜反時計回りに飛行,坪 田上空で右旋回,カルデラを時計回りに観察.スオウ穴上空で左旋回,西山腹を反時計 回りに大路池上空まで,右旋回して,もう一度カルデラを時計回りに神着まで観察1035 観測終了.(ヘリは神津島待機)三宅中ヘリポート1152〜1203消防庁職員と第2回観 測.伊豆−椎木ランド−大路池北−三池上空右旋回−カルデラ西縁を(高度最高1000〜 1100m?−−低い!が,雲に押さえられてそれ以上は無理らしい−−で)北上,神着で 離脱.神津島に着陸,待機の後,東京ヘリポートに1355帰還. 天気は晴れだったが,全般にもやがかかり,見通しはあまり良くない.風が弱いため, 噴煙は上に立ち上り,北東方向にゆっくりたなびく.噴煙の下にはやや青白い火山ガス が確認されるが(拡散したためか),あまり濃くなく,向こう側を見通すことができる.   未確認情報として,前日12/7午前,有色噴煙あり,との報告があったが,本日は比較 的勢いの良い白色噴煙のみで,降灰はない模様.  カルデラ底,および噴火口もみえたが,もやのためと,飛行高度が低めのため見づら い.大島さんによるとカルデラ壁,カルデラ底に大きな変化はないとのことであった. 私にとっては,カルデラの中が見えたのは9/26以来だったので,その時には,スパッと 切られていた壁が,今回は小さな崩落によって,随分壁面が凸凹し,崖錐も発達してき た印象を強く持った. (津久井雅志) **************************************** (多人数搭乗のため大型ヘリ、中央に通路、右2列、左1列の旅客座席、右後方に担架 /ストレッチャー。両側に扉、ただし飛行中は閉め切り。) 今日のフライトは必ずしも観測が主目的ではなく、自治省消防庁審議官一行 の災害調査渡島に同行、現地視察中の待機時間を利用して上空観察をおこなう、という ものだったため、普段とは違うやや複雑な行程となった。三宅中学校野球場に完成の仮 設ヘリポートを使用。     (付記)待機時間は1時間半ちかくあるため、普段並に観察できるものと思って安 心していたのが間違いのもと? 西側カルデラ縁1往復半の予察段階であっさりと「終了」 を告げられ、そのまま着陸態勢となった。間髪を入れず反転再上昇再観察をお願いする 勇気が出なかった気弱さが災いしたと言うべきか? 同乗の津久井さんにとっては久々 に見る山頂だったというのに、何とも申し訳ないことでした。ウ〜ンメッチャ残念。 (飛行コース等は普通その時の噴煙や雲の状況次第で判断することが多いた め、あらかじめ事細かに話しはしないが、何回か繰り返し見る必要があることは言って おくべきだった。わかっているものと思い込んでいた大油断!) * 窓ガラスの雨滴よごれは反射光での撮影に障害(オートフォーカスは雨滴よごれに あうことあり。) * 室内気温のせいか、窓ガラスが曇ってガラス拭きに始終した。 搭乗者 : 津久井・大島のほかに、消防庁災害調査の一行は、東ヘリ発着: 自治省 消防庁(防災課長+1名)と東京消防庁消防指令長の3名。 神津島発着: 東京消防庁派遣隊長、隊員(ガス測定)、機関員の3?名。 (三宅島上空観察はカルデラ西縁〜南西縁〜南斜面から実質1 5分程度) 09:00 東京ヘリポート 搭乗    09:02 移動開始 09:04 離陸〜東京湾中央を南下(海ほたる通過)〜浦賀水道〜伊豆大島東方 〜新島東方〜 10:00 神津島着陸 (3?名搭乗)  10:03 神津島離陸〜 伊ケ谷南より中低空進入〜 機長より「山頂は雲がかかっ て見えません」の機内アナウンス、そのまま左旋回、大久保浜付近を2回旋回して高度 下げ、 10:17 三宅中野球場仮設ヘリポート着陸、消防庁関係者降機。 <上空観察>  10:23〜10:33 の約10分間〜 伊ケ谷 〜 村営牧場 〜 と高度を上げ つつ、西〜南斜面観察。「高度3500ft。これ以上上がれません」のアナウンス。 坪田付近で反転、〜 カルデラ南縁〜西縁〜北西縁を往復、南縁〜西縁〜そのまま山頂 離脱。ヘリ神津島待機。  11:53  三宅中仮設ヘリポート離陸 <消防庁一行と上空観察> 11:57〜12:02 の約5分間〜 北西斜面 〜  西縁近く 〜 南斜面 〜 三宅空港東海上で反転〜  南斜面 〜 西縁 〜   12:02  大久保浜より離脱 12:15? 神津島着陸  審議官一行の現地対策本部訪問の間、空港待機。 13:00  搭乗、エンジン始動(神津島)〜 神津島東側〜新島東方〜利島東方〜 伊豆大島東方〜浦賀水道〜海ほたる〜 13:53  東京ヘリポート着陸 13:57  エンジン停止、降機。  天候・噴煙 : 晴。 上空に全面ではないが雲。(少しモヤがかかり視程すっ きりではない。)海はべたなぎ。無風に近い南西の風。噴煙は上へ立ち上り北東へ。 雲の上へ出ており、1500m超。斜面を這うように下降するいつもの青白ガスは 見えず。風が弱いため幅広く拡散か?空港上空からは噴煙下の向こうが十分見える。 (普段噴煙が一方向にたなびいている場合は噴煙下は重いガスが漂って向こうは見 にくい。) (付記)三宅に向けて南下中、伊豆大島東上空で雲のため高度を上げたところ、左前 方に雲海を僅かに破り、東に低くなって雲海に没する噴煙(ヘリから見て右辺急傾斜 、左辺緩傾斜の三角形)が見えた。その時の機内アナウンス高度は(聞き漏らしたが 津久井氏によると)1700m、よって弱風のためほぼ真上に上がった噴煙は180 0〜1900mくらいまでいっていたと思われる。 活動状況 :   主火口からの白色噴煙活動盛ん。純白色、灰を混えず。 カルデラ内の気流のせいか、噴煙が多少カルデラ南壁側に寄ってから上昇するために 、噴石丘と主火口の北側輪郭が普段よりよく見える(はずだが、窓ガラスの曇りに四 苦八苦)。噴石丘北西斜面クレバスからの噴気は減少。北西側に1列に並ぶ噴気口6 〜7点の活動は相変わらずだが、一昨日(6日)より弱い。これらの南奥で6日盛ん だった(ように見えた)部分からの噴気が見えない。南壁面の崩落で噴気口が埋まっ たか?  今日の主役は主火口。 カルデラ内全体はもやがかかり、カルデラ底北半の詳細は底 ・壁ともにちゃんと観察出来ずに終わった。小さくなった赤池の健在は確認。  7日午前に「黒色噴煙が上がり3000フィートの三宅島噴煙がSSWに流れた」旨の未 確認情報があり、これに対応する火口周辺の変化がないか注目したが、一目でわかる ほどの変化は見つからなかった。 上記の南壁面の崩落で一部の噴気口が埋まり黒い灰となって噴き上げられた可能性は 十分考えられるが、壁面自体は見えず確証は得られない。また、上空からの瞬時に近 い観察では、南斜面にそれと一目でわかるような堆積物分布も認められない。これま での壁面崩壊でも、多くの場合ダストは上がっても明瞭な堆積物を残すには至ってい ないことを考慮すると、可能性を否定することもできない。(大崩壊なら話は別。) カルデラ壁北半の崩壊では壁面構成物に対応して赤色〜黄土色のダストが上がり、カ ルデラ壁下部〜底にその崖錐堆積物がたまる。南側は黒色壁面構成物が主と見られ、 噴煙活動領域に崩れ落ちれば細粒物は当然黒色噴煙となって上昇させられるだろう。 (一般論として考えられること。) なお帰還後、カルデラ縁の写った写真を一昨日(6日)と今日で較べてみたが、明瞭 な違いは認め難かった。カルデラ縁最上部が崩れずとも下半部の崩落でオーバーハン グぎみ(表面上不変)になることもあるので、好条件時の観察が望まれる。 カルデラ内南部の噴気・噴煙活動地帯では今後も「黒色噴煙」を上げる可能性は高い と思われるが、特に心配材料ではない。但し、壁面崩落の規模が大きく、噴煙・噴気 量の急減などガス排出に支障を来す程度だと、その後、ガス排出通路確保のためにウ ップン晴らしの爆発をすることもあろう。(ガス急減時はその後しばらくして山頂周 囲要注意) その他。 南西および南斜面の(今日は見ていないが東斜面も)荒廃がすすんでいる 。ガリが深く顕著になってきている。来春以降の多雨季に土石流災害の懸念。 (大島 治)