11月1日(木) ヘリコプター:陸上自衛隊第一ヘリコプター団 JG2908 (CH47J)  観測搭乗者:下司(東大地震研),中堀・尾台(気象庁) フライト: 11時30分陸上自衛隊木更津駐屯地集合,12時42分離陸,浦賀水道を 南下し,伊豆大島東方海上をへて三宅島神着上空へ13時23分進入.火口観測開始. 13時 45分ごろから高度を下げ,COSPECによる二酸化硫黄量観測開始.三宅島の東 5〜 7マイルを,噴煙をくぐりながら4回測定.14時19分観測終了,往路を引き返 し15時 02分木更津基地に着陸.丁寧なフライトに感謝. 天候: 天候は快晴だが霞がかかっているため視程はあまりよくない.海上は凪, 白波なし.風は弱い西〜南西風(4500ftで8kt程度). 噴煙の状況: 噴煙量はかなり少ない印象を受ける.カルデラ内主火口から白色の 噴煙がカルデラ壁を越えてゆっくり上昇する.噴煙高度は最大1500m(海抜)で, 塊状の噴煙の上昇により100m程度の増減があった(写真1).9月中旬の噴煙に比 べ,やや太い印象を受ける.白色噴煙は風下へ7-8kmまで漂っており,それ以遠に は白色噴煙から分離した青白いガスのみが漂っている.噴煙・火山ガスは一度高 く上昇してからゆっくりと風下へ流れるため,火山ガスの底は標高200mあたりに ある.COSPEC測定中に噴煙の下をくぐる時,やや硫黄臭いを感じた. カルデラの状況: カルデラの輪郭・カルデラ内の地形には大きな変化は見られな い.すおう穴西側カルデラ壁が小規模に崩壊したらしく,すおう穴直下に形成され た崖錐に発達していた大きなガリー(9月25日報告)の一部が埋められている(写 真3). 主火口の状況:火口地形に顕著な変化は見られなかった(写真2).外側火口底の 中央には5月中旬から高温が観察されている顕著な噴気孔が依然として存在し,青 白い透明な火山ガスを活発に噴出している.内側火口からは白色噴煙が連続的に上 昇する.主火口周辺の噴気帯の位置・規模などに大きな変化なし.気象庁による熱 赤外測定の結果,火口最高温度は356℃. 主火口南側のカルデラ壁外側の,主火口を取り囲むような長さ約500m,幅300mほ どの三日月型の領域が比較的最近堆積したと思われる火山灰のため灰色に変色し ているのが確認できた(写真4,5).9月中旬からしばしば観察されている有色噴 煙からの降灰と思われる.ガリーや樹木の状況から推測すると,堆積している火 山灰の量は最大でも10cm以下の模様.なお本日12時32分にも有色噴煙の上昇が確 認されているとのこと.カルデラ内の火砕丘斜面,すおう穴直下の崖錐表面など が(そういわれれば)やや灰色がかってみえるのはこの有色噴煙からの降灰の影 響かもしれない. (下司信夫) 写真1 北からみた三宅島.噴煙は高度1500mまで上昇し,ゆっくりと東へ流れ る.噴煙は断続的に上昇する大きな塊に分かれている. 写真2 北側からみた主火口.火口の構造に大きな変化はない.依然として外側火 口底中央の噴気孔群から活発な火山ガスの噴出がみられる.火砕丘斜面や主火口 右側のカルデラ壁がやや灰色がかって見える. 写真3 北西からみるカルデラ内部.カルデラ内部の地形に大きな変化はない.す おう穴直下の崖錐部に一部新しい崩壊堆積物がみられる. 写真4 主火口近傍のカルデラ外側斜面にみられる降灰部.主火口の南側にあたる. 写真5 その拡大. 写真6 逆光で噴煙を見あげると,あいかわらず火山ガスのためにオレンジ色に染 まって見える.