2001(平成13)年12月5日(水) 1.観測支援: 東京消防庁ヘリ 「つばめ」 JA 9980 号機 (小窓なし) 2.搭乗観測者 : 火口観察  : 大島           COSPEC観測: 中堀・碓井氏(気象庁) 3.天候・飛行コース・時刻等 :   朝、都内は鉛色の空だが南方は明るい。飛んでみると新島近くまではモヤっていたが、 三宅島は晴。南西の弱い風(5〜6ノット)で山頂上空に島(笠)雲、これを貫 いて多 量の白色噴煙が上昇、1700m程度まで上がって北東にたなびいている。 噴煙を避けて島の西側を南下、雲の隙間から火口をチラと見た後、西側を北上、三宅 中 学上空で高度を下げ、北西からカルデラ接近、雲と噴煙の影で暗いカルデラ内を西 側か ら1回覗いて「火口観察終了」となる。  三宅中学に5分間着陸してCOSPECを観測態勢に固定(左側)、ドアオープンで離陸、 北東5マイルの洋上噴煙下を2往復、ガス測定終了後そのまま神津島へ。給油。救急 のもう1機が来る前に離陸すべしとのことで昼食・休憩カット。神津島は快晴。  搭乗時間 09時00分 〜 12時34分 (神津島給油着陸20分間)  観測時刻 10時00分 〜 10時14分 (火口)        10時27分?〜 10時46分 (COSPEC)        11時43分 〜 11時45分 (火口) 8:30 COSPEC積み込み、機内の椅子や筏など配置替え(東ヘリ格納庫内) 9:00 搭乗。 9:03 エンジン始動、  9:10 発進。 9:12 北向きに離陸      離陸後すぐ右旋回、東消庁コースで東京湾を一路南下へ(高度150m)。      〜 海ほたる 〜 観音崎 〜 久里浜東 〜 視程よくない 9:29 剣崎(三浦半島最南東端)東 9:43 伊豆大島南端(波浮)東方。(高度2500 ft)      大島かすかに見える。海面波立ちなく穏やか。うすもやの中を飛行。 9:55 前方、三宅島が見えてくる。視程回復。      上空に大きな雲はないが、山頂付近に島雲。噴煙高々と上がり北東へ。      高さ=海面+島の高さの2倍強=約1700m。(縁上約1000m) 10:00 三宅中ヘリポート上空から島内へ。そのまま西側を南下、観察態勢に。      高度約5000ft?ちぎれ島雲と噴煙でカルデラ内はよく見えない。 10:03 村営牧場上空で右旋回Uターン、北上。       伊豆上空で高度下げ右旋回、 10:09〜10 南下しながらカルデラ西縁に接近、火口見える。Uターン後 10:13〜14 西側から遠めにカルデラを望んで「火口観測終了」 10:18 三宅中ヘリポートに東から着陸。COSPECを観測態勢に固定(左側) 10:23 左ドアオープンで離陸、ドア側に整備担当氏、内側に中堀・碓井氏。 10:27?COSPEC観測開始。北東洋上5マイル、高度300 ft。       噴煙下横断観測 10:46 三宅中沖でCOSPEC観測終了。 10:57 神津島空港に西から着陸、 11:00 エンジン停止、降機。        給油の後 11:20 再搭乗、  11:25 エンジン始動、  11:28 発進、  11:29 東向きに離陸  11:39 伊ケ谷南から島内へ。風向きが変り、噴煙は北北西へ。北西斜面をガス       が下り、さらに西斜面へ拡散している。カルデラ西縁接近不可。       南側へまわる。噴煙を取り巻くように東に廻ると 11:44 東カルデラ縁から中が見える! ヘリはスオウ穴から北西へ。 11:45 三宅中上空から離脱、北上。 12:00 大島東 12:19 富津洲 12:34 東ヘリ到着、エンジン停止後降機。        4。 観察 4−1. 噴煙とガス  噴煙量きわめて多い。昨日の雨の効果と思われる。白色、灰を含まず。10時台、 白 色噴煙は島の高さの2倍強=約1700m(カルデラ縁上約1000m)に上り、北東に延 々 とたなびいている。その後風向きが変り、11時半過ぎには北北西へ。比較的弱い 風( 5〜6ノット)で、噴煙は(あまり倒れずに)火口からほぼ直上に上がり、上限 に達し てそのまま風下にたなびいている。そのため、噴煙下限とカルデラ縁との間に 200〜 300mの隙間も見える。  噴煙量は多いが、排出の力はそれほど感じられない。 11月14日に見た噴煙はパルス状で途切れがあり、その隙間から向こうの景色や地 上 が見えたが、今日は噴煙量多いためか切れ目は見え ない。しかし遠めにみると噴煙頂に 凸凹もあり、基本的にパルス状ではあるらしい。 11時半過ぎ、南東よりの風向では、青白いガスがカルデラ北西縁の(ノコギリ歯状 の 浸食谷の)低みから漏れ出る(噴き出す)のが明瞭。伊ケ谷上方の北西斜面沿いに 立ち こめ、さらに西斜面へと南にもひろがり、その先は旧カルデラ縁付近を境に上空 に拡散 している。 4−2. 火口  短時間の観察だが、主噴煙(白煙)はいつもの主火口南東寄り(南側の列の奥;S 2 〜3付近)から出ている。旧主火口(北側の列;N1〜3)付近は火口の輪郭を見せ白 煙 たちこめているが、高い噴煙にはなっていない。北西噴気帯も白煙盛ん。(多分昨 日の 雨で)噴煙量がきわめて多いこと以外、特に変化を認めず。 4−3. カルデラ  これも瞬間的観察で、下記の特記事項以外大きな変化を認めず。 カルデラ底と北壁:底は(多分昨日の雨で)水浸しになっている。カルデラ底中央 の 池が11月14日段階より大きくなった感。赤黒い「西池(黒池)」健在、北西の 赤褐 色の「西小池」も健在。  だが、北壁に大イベントが起きたらしい。昨年8月以来最も安定に存在してきた「北 池」が殆ど消えた!北壁が崩落しており、「北池」は新たな崖錐にほぼ埋没した模 様。 最後の(東側からの)一瞬の観察のため詳細はわからない。白っぽい多数の巨大 岩塊が カルデラ中央側にばらまかれているように見える。噴煙の影の濃淡も重なってわかりに くい。見ようによっては池が西側の「マウンド」寄 りや中央寄りに細々と生き残ってい るようにも見える。崩落した北壁には上部から細長い縦すじがついているよう。位置は、 夏に盛んに崩落してえぐれた北壁東端(スオウ穴西)からやや離れ、えぐれ部分西隣の 頑強な突出部分の西隣)らしい。  この状況は11月27日観察(津久井氏)の写真(北壁上〜中部)には見えない。従 って、このイベントは11月27日〜12月5日の間の出来事と思われる。 南西地割れ(亀裂)、西地割れには変化なし。  (大島 治)