三宅島火山噴火調査 観測日時等 13年12月14日 (金) 観測時間 13時30分 〜 15時00分      搭乗時間 12時40分 〜 15時50分                 海上自衛隊館山航空基地1254→大島東沖→1326三宅中ヘリポート1330→三宅上空観察1355→COSPEC観 測→1509三宅中ヘリポート1510→1539海上自衛隊館山航空基地着陸−機体水洗−1547エンジンカット (海上自衛隊) 観測者氏名   津久井  (千葉大)   中堀   (気象庁)   大久保  (東大震研:島内作業) 天候状態  はれ 飛行経路・高度  本日は館山の海上自衛隊からのフライト.昨日は雨のため中止で予備日の本日実施.館山発のフライ トの場合,移動に時間がかかるため決心時間のかなり前に出発することが必要.昨日(大久保さん,吉 本さん,中堀さん搭乗予定)は館山駅までやってきて折り返されたとのこと.私は予備日の本日のみの 予定で一人だけ運がよくて申し訳ない.ドライスーツ(超厚手の木綿でできた“つなぎ“ −−首,手 首には強力なゴムが入っていて風が服の中にはいらない.強風でも服がばたつかない),”頭巾?” (硬いプラスチック板がついていて狭い機内での頭を保護する?)着用.  南関東は晴.視程よく基地からも富士山が見える.季節風の西風が強いため東京湾内でも白波がた つ.COSPEC観測機材搬入後,搭乗.12時54分館山航空基地離陸.高度4500フィート(1500m)で南 下.大島付近には雲もなく,よく見える.  三宅島北方上空からの観察では,ヘリの飛行高度(1500m)位に雲がかかり,それより上は視程よ い.その下はかすんでいる.噴煙は,火口上で三宅島の高さの1/4(200m)程度上昇,強い西風で東麓 に流される.白色噴煙は島内上空で消散し,火山ガスは海上へ(写真1,2).海は細かい白波が立ち大 荒れ(写真2).  13時21分4500フィート上空の気象状況:風向(北から時計周りに)310°(北西の風)40ノット/h (〜20m/s).  13時26分三宅中ヘリポート着陸.地上100〜50mの西風がものすごい.機体が大きく揺れるので慎重 に着陸.大久保さん降機,30分離陸,火口観測へ.  カルデラ上空を3500フィートで時計周りに3周して観察.強い風のため噴煙はカルデラ内にこもって いる.したがってカルデラ壁の一部は観察できたが,カルデラ底は全く観察できない(写真3).13時 55分観測終了.この時3500フィート上空では,風向290°,風速50ノット/h(〜25m/s)!.  次いで,COSPEC観測へ.14時04分から,火口から7マイル東,高度100mを北(190°の方向へ)→南 →北→南へ(1.5)往復,次に火口から5マイルはなれて1.5往復,14時16分300フィート上空で風向 275°風速40ノット/h.最後に3マイル離れて南から北へむかって片道観測.  三宅上空に戻りカルデラを時計周りにもう一周観測して観測終了.三宅中ヘリポートで大久保さん搭 乗の後,館山へ.着陸後,機体をシャワーで洗浄し,降機. 観察結果 ○ 噴煙 噴煙は北側からの目視では火口上200mの高さまで上昇.上空の強い西風で三池方面にふきお ろされ流れる(写真1,2).火口の上まであがる噴煙量は特別多くはなさそうだがカルデラ内に充満. カルデラ底はほとんどど見えない(写真3).カルデラ観測時には噴煙高はヘリの高度とほぼ等しい 1100mくらい.噴煙は白色.白色噴煙は島の上空で消滅.火山ガスは斜面に沿って流れくだる.強風の ためか,濃度自体はあまり高くないようで,COSPEC観測で噴煙を横切っても,臭いは感じたものの (簡易濃度計で最高値1ppm)で,気分が悪くなるほどではなかった. ○ カルデラ内部・火口 前日の雨で壁にたういた灰が流されてきれいに見えるはずだが,噴煙・ガス がカルデラ内に滞留しているため見にくい.ガスごしにカルデラ壁の様子(写真4〜7)はみえたが,カ ルデラ底,火口の様子はほとんどみえない.火口内の最高温度は430℃で,最高温度更新とのこと. ○ カルデラ縁 スオウ穴の西側の北壁が崩落している(写真4).大島さんの12/5フライトの報告の北 側の大池の縮小はこの崩落によるものか?? 強風の中,何事もないかのように安定した運航をされたクルーに感謝. 写真 1 北から島をみる.噴煙は火口上200mまで上がり,東へ流されている.白色噴煙は 島の東端く らいで消散. 写真 2 南東海上から見た噴煙とガス. 写真 3 カルデラ北側上空から見た火口.左手のカルデラ壁に厚い溶岩の累層が辛うじて見えるが, 火口は噴煙・ガスでよくわかりません. 写真 4 南からみたカルデラ北壁.スオウ穴左側がまた崩落している. 写真 5 カルデラ東壁の様子. 写真 6 カルデラ南東壁の様子. 写真 7 カルデラ北西壁の様子. (津久井 雅志)