2002(平成14)年1月30日(水) 1.観測支援: 東京消防庁ヘリ 「つばめ」 JA 9980 号機 (小窓なし)     東ヘリ始発、クル−4名(清水機長)、観測員4名、重力班1名、     計9名搭乗。 2.搭乗観測者 : 火口観察  : 川辺(産総研)・ 大島           COSPEC観測: 中堀・佐久間(気象庁)           重力観測(島内作業): 大久保(震研) 3.天候・飛行コース・時刻等 :   筆者にとって12月5日以来約2ヶ月ぶりのフライト。朝、都内は太陽がまぶしく、 今日 は見えるかと期待したが冬型の気圧配置で伊豆大島以南は白波が目立ち始めてい やな予 感。果たして三宅島は晴時々曇ながら、強い西風(機長アナウンスでは風速 20m)のため カルデラ内に白煙こもり、中はよく見えない。噴煙は東に横倒し、ガス も東山腹を下って 東方海上へ。  運航時刻 09時00分 〜 15時42分 (神津島給油着陸2回)  観測時刻 10時10分 〜 10時33分 (火口)  4名        12時55分?〜 13時35分? (COSPEC)2名(火口観察班地上待機!) 9:00 搭乗。      操縦席後ろの2列目に左から大久保・中堀・石橋整備士・川辺、      3列目左から大島・佐久間・石塚整備士。2〜3列の間にCOSPEC。 9:06 エンジン始動、  9:10 発進。 9:12 北向きに離陸、      離陸後すぐに右旋回、いつもの東消庁コースで東京湾を一路南下。      〜 海ほたる 〜 観音崎 〜 久里浜東 〜  9:29 剣崎(三浦半島最南東端)東 9:44 伊豆大島南端(波浮)東方 9:55 前方に三宅島が迫る。上空にちぎれ雲の群がかかり雲底高度約1300m。      強い西風で噴煙は雲の下左方(東)に横倒し様にたなびき、噴煙高度は      山頂縁上300m以下(海面上1000m弱程度)。 10:05〜07 三宅中ヘリポートに西向き着陸、重力データ回収の大久保さん      降機。火口観察2名は右窓側へ、西向き離陸。 10:10〜33 カルデラ/火口観察 西斜面鉢巻き道路外側を南下、大路池西方からカルデラ南西縁に接近、西〜北縁沿い にス オウ穴まで、のルートを4回繰り返す。1〜2回目は高度2500〜2800ft、3回目 3500ft(ドアオープン)、4回目3000ft未満。カルデラ内に白煙こもって底まではな か なか見えない。滞留状況は刻々変り、4回目にやっと底の様子がほぼ見えた。内壁 の詳細 は北側以外観察不能。 10:48 神津島空港に東から着陸、 10:53 エンジン停止、降機。        給油・昼食の後 12:40頃 COSPEC観測2名を乗せて離陸 14:15頃 COSPEC観測後、大久保さんを「回収」して神津島空港帰着。        給油。この間3時間余り、火口観察の2名は神津島待機となる。 14:45 神津島空港を(強風のため滑走路東端まで行ってから)西向き離陸、       〜神津島〜式根島〜新島〜利島〜伊豆大島のいずれも西側〜 15:37 東ヘリに北から着陸、  15:42 エンジン停止後降機。        4。 観察 4−1. 噴煙とガス  風速20mの強い西風のため、噴煙はほぼ真東に倒れ、島内では空港北2/3(ベンケ ネ岬) 〜サタドー岬の狭い範囲(火口から挟角30度弱)に流れて海上遠方にたなびい ている。噴 煙高は最高でも縁上300m以下(高度約1000m)、東方への上昇角も10度 程度(〜以 下)と低い。噴煙量特に多いとも少ないとも感じられず、このところの平 均的なところ か。白色噴煙、灰を含まず。噴煙排出に力強さもなく、過去に比べると 大分減衰したよう に見えるが、排出はパルス状らしく、流れる噴煙に山谷と途切れも 認められる。  青白ガスは白煙の下部〜両脇に見えるが、スオウ穴上空から三池港が透けて見え、 以前 強風時によく見かけた明瞭な吹き下ろしに比べてガスは少なめの感。  強風のため観察前半のカルデラ内は白煙こもって白く泡立ったバスタブのように見 え た。風上側から見ると、斜面沿いに吹く(吹き上がる)強風に縁沿いの白煙がきれ いに頭 を押さえられ、カルデラ内側に押されながら上昇、風下へたなびいていく様が 見えた。 4−2. 火口  強風のためカルデラ内は白煙こもってよく見えなかったが、後半何とか見えた。気 流の ため、上昇する噴気・白煙はカルデラ南壁側に吹き寄せられて壁沿いに上がって いる。  もうもうと噴煙を出しているのは相変わらず南東奥の火口(南側の列の奥;S2〜 3付 近)と見える。旧主火口(北側の列;N1〜3)付近は火口の輪郭を見せ白煙たち こめてい るが、高い噴煙にはなっていない。N1火口西外側の小火口(気象庁の「エ リア2」;ここ は活発な時は中が透けて見えることが多い)は根元から低い白煙をあ げている。  噴気点は結構多く、北西噴気帯は従前どおり活動中。休止することの多い火口丘 (火砕 丘)北麓のクレバス、東の大クレバスも今日は白煙を上げている。  火口で見る噴煙活動状況は、従来の標準と比べると弱く、排出量も中の下クラスの 感。 4−3. カルデラ  視程悪く十分な観察はできなかったが、以下、見えた限りの西〜北側からの観察事 項。 4−3−1. カルデラ底と北壁:  「北池」埋没から約2ヶ月、北壁崩壊による堆積物はカルデラ中央に張り出し、新 たな 低みに出来た池は北東底(スオウ穴直下より東寄り)と中央の2つが顕著。「北 東池」は カルデラ壁の断続的な小崩落を受け続けているとみられ茶色く濁っている が、「中央池」 はその影響から離れて比較的澄んでいる。北壁直下にも茶色く濁った 小池が2つある。  「北東池」は1月18日にも観察した川辺氏によると、最近の雨のためか水位上昇し て大 型になった(、また付近の大型岩塊分布にあまり変化はない)とのこと。スオウ 穴下に発 達した崖錐は扇頂から末端へ岩塊径の変化が目をひく。崖錐末端に当たる岸 線付近には大 型岩塊がばらまかれ、池の中から顔を出しているものもある。 「西池(黒池)」付近は視程不良でよく観察できず。「中央池」と繋がっているよう にも 見えるが不詳。 4−3−2. 南西地割れ(亀裂)・西地割れ: 特に変化を認めず。 4−4. 降灰  カルデラ南南西縁〜南縁〜南南東縁に新たな降灰の跡?が見られる。南縁を中心に 山麓 側に最大約100m程度の範囲、南斜面の表面がうっすらと白くなっている。(南 東〜東縁 表面の様子は噴煙の下で見えない。)しかし表面に多数刻まれた小雨裂は底 を見せており (既に降雨に見舞われており)真新しい降灰とは言えない。近過去の降 灰跡に見える。  気象庁観測によると、最近では、1月23日に降灰が認められている。三宅島火山 観測 情報 No.43 いわく、 「本日12時34分頃、小規模な噴火があり、灰白色の噴煙が火口上200mまで上が り、東に 流れるのを確認しました。また、島の東部でこの噴火によるものとみられ る少量の降灰を 確認しました。有色噴煙を確認したのは平成13年11月1日以来 です。」 とある。その後の降灰確認はないので、この白色の降灰跡は1月23日のものらしい。  降灰の白さの最も濃い部分は、噴煙活動最も盛んな南東隅の火口(S3)よりも西 寄り (旧S2火口)の直上付近にあたる。この付近のカルデラ壁は切り立っており、 壁からの 崩落物は即、火口を塞ぐ役目を成す。このところ南壁の大きな崩れは見られ ていないた め、小刻みな崩落の累積でつまり気味になった vent が鬱憤晴らし(排気 効果回復のため) に、小爆発したのかもしれない。 ***************************** 写真1。 強い西風で東にたなびく噴煙。北海上から。 写真2。 西斜面上から見る噴煙とカルデラ南西〜南縁。斜面沿いに吹き上がる強風 に縁 沿いの白煙は頭を押さえられている。 写真3。 南から見る低い白煙と南斜面上部。手前中央のガリの浸食はこの2ヶ月間 大き な変化はない。 写真4。 東にたなびく白煙。上限高度約1000m、右下は空港(ベンケネ岬)。 写真5。 北東から見る噴煙。弱くパルス状。下部斜面沿いに青白ガス。太陽光反射 部は 赤く見える。 写真6。 スオウ穴上空から見る噴煙と火口の状況。主な噴煙は南東隅の火口から排 出。 写真7。 西側上空から見るカルデラ北西半。ガスって中はよく見えない。右手前の 地割 れ健在。北壁崩落により、北のシルエットは大分なだらかになった。 写真8。 白煙の間から覗く火口付近。主噴煙は南東隅の火口から。右手前の北西噴 気 帯・火口丘北と東のクレバスいずれも噴気は弱い。 写真9。 スオウ穴上空から見る火口付近。旧主火口(北側の列;N1〜3)の活動は 弱 い。右下に誕生約2ヶ月の北東池。 写真10。 北西から(最後のチャンスにやっと)見えたカルデラ底。北北東壁(スオ ウ穴 付近)下の崖錐が北東池北岸に迫る。 写真11。 かすんで見えるカルデラ底、北縁上から。中央左右に「北東池」と「中央 池」。左下は崩壊続く北壁、直下の崖錐の低みに小池が2つ。右は旧マウンド、右下 端の 北西壁下の小池健在。 写真12。 最近大きな変化の殆どない南西斜面〜縁付近。地割れ健在。カルデラ縁沿 い右 方(南縁)にひろがる白色部は1月23日降灰の跡らしい。   大島 治