2002(平成14)年3月25日(水) 1.観測支援: 海上保安庁ヘリ「わかわし」JA 6805 号機(Super puma ?)     箭野機長以下クル−5名、観測員4名、重力班1名、計10名搭乗。胴体     両脇に大型燃料タンクを備えた足長機とあって、じっくり観察の上、途     中給油もなく、約3時間半で終了した。  海保ヘリに搭乗は初めて。見るものみな珍しい。普段の警視庁・東消庁ヘリに較べ て大型機。胴体中央両 側に大扉・その内側に平床があり、天井高も海自の HSS-2B よ り若干低い程度、作業空間が広くて観測には 大変具合よい。他庁の同型機(正式名称 はアエロスパシアル式AS332L1 だそうだ)と同じく操縦席の後ろ に隔壁があり、客室 との間の通路部分に機関士(整備士?)席があるため後方客席の我々から前は見にく い。その代り客席(右2列、左1列)最後尾の床は窓になっていて真下から後ろが見 えるらしい。外には 260kg ウィンチ以外に斜め下横向きのスピーカーも突き出して いる。なるほど「海上保安」庁機と実感(写 真30)。  全員ヘッドセット着用、ライフジャケット(カーキ色)は空気ボンベ付きでやや重 め。モンキーベルトは 3名装着。快適なフライトで、親切・柔軟な対応のクル−に感 謝。 2.搭乗観測者 : 火口観察  : 川辺(産総研)・ 大島           ガス観測  : 飯野・大塚(気象庁)           重力観測(島内作業): 古屋(震研) 3.天候・飛行コース・時刻等 :   筆者にとっては1月30日以来約2ヶ月ぶりのフライト。朝方の都内は薄雲におおわ れているが比較的明る い空。上がってみると低空に茶色っぽいきたないモヤ、高空に 薄雲。直射日光は弱いが視程は比較的よく、 低空のモヤの絨毯の上に白雪の富士山・ 箱根駒ヶ岳や天城山山頂が浮いて見える(写真29)。  三宅島も上空に雲、曇り空の下ながらカルデラ内はよく見える。(直射日光がない ため噴煙の影も出来 ず、しかし明るめで観察しやすかった。)北東の風、噴煙/ガス は南南西斜面を下って海上にひろがり、 COSPEC観測はその直交方向(ほぼ御蔵島〜三 本岳を結ぶ線上)で行なわれた。 天気は下り坂、海上ガス観測終了時に雲は山頂ぎりぎりまで覆っていた。滑り込みセ ーフ、の感。  飛行時間 09時36分 〜 12時40分 (途中給油なし)  観測時刻 10時29分 〜 10時57分 (火口観察)        11時02分 〜 11時46分 (海上ガス観測) 09:00 海上保安庁羽田航空基地集合。 09:15 モノレールわきの格納庫前で搭乗。       その後新聞各社格納庫との間を牽引車に牽かれてエプロンへ出てゆく。 09:26 エンジンスタート 09:36 離陸。     〜横浜へ南西進〜横浜大黒埠頭から湾岸沿い南下〜本牧埠頭〜横須賀港〜       茶色くきたないモヤの上に白雪の富士山・箱根中央火口丘や天城山山       頂が島のように浮いている。Haze top は約4000ft、高度4500ft で飛       ぶ。きたない haze にパイロット同士の会話は「黄砂だろう」。 09:51 城ケ島東(毘沙門漁港の真上)から洋上へ。       内陸部は北西の風だったが無風状態となる(パイロット会話)。       高空一面のうす雲のため晴ではないが、右前方には伊豆大島〜天城山       が見渡せる。パイロットには三宅島も見えているらしい。 09:59〜10:05 伊豆大島東方通過 10:07 利島東方通過、新島〜神津島まで見える。海面に白波が立ち始める。 10:17 三宅島接近。白色噴煙は1000〜1100m程度(島の高さの 1.5倍)ま       で上がり、南南西麓へ下っている。三宅中ヘリポートは丁度到着ラッ       シュ、3機つめかけていて、我々は2番目の着陸となる。1番目の警       視庁ヘリが着陸中、大久保浜から伊ケ谷にかけての伊豆岬沖合で左大       旋回待機。 10:24〜26 西から着陸、重力の古屋さん降機。右ドア内側に上下2段に安       全ロープが張られる。30m以上垂直浮上の後、時計回りに神着〜美茂       井〜へと高度を上げつつ北東から山頂接近。 −−− <火口観察> −−− 10:29 観察開始。時計回り。南西に流れる噴煙をまたいでカルデラ西側へぬ       ける(テスト飛行)。牧場北方で左旋回後、右ドアオープン。1983年       火口列(ほぼ噴煙右側面)沿いに 10:35 カルデラ西縁接近。時計回り本観察(1回目)へ。       火口・カルデラ底は比較的よく見える。縁沿いに廻った後、南東縁(       1535年火口列)から噴煙左翼沿いに南西進、鉢巻き道路〜二男山南側       で噴煙軸をまたぎ、再度カルデラ西縁に接近。       このルートで計5周(3〜4周目は小廻り)。 10:57 大路池上空で噴煙左翼から離脱、火口観察終了。高度下げつつ南下、       御蔵島方面へ向かう。右ドアに向けてガス観測(COSPEC)準備。 −−− <ガス観測> −−− 11:02 御蔵島北西で反転。ガス観測7マイル測線にのり北西進開始。 11:07 噴煙軸を通過(1回目:東>西) 11:16 三本岳南側を通過後、西北西で反転、5マイル測線(三本岳北側)に       移る。以後、噴煙軸を以下の時刻に3回横切り、計2往復。 11:23 : 30 噴煙軸通過(2回目:西>東) 11:33 噴煙軸通過(3回目:東>西) 11:43 : 30 噴煙軸通過(4回目:西>東) 11:46 御蔵島北西(三宅島南)で観測終了。ドア閉。 −−−  −−−−  −−− 11:48 新鼻南西で噴煙軸通過(東>西) 11:49 間鼻接近。以後西岸沿い1km程度沖合を北上 11:54〜56 三宅中学ヘリポートに西から着陸、古屋さん搭乗。    〜伊豆大島東方〜城ヶ島東方〜三浦海岸〜横須賀港東〜横浜ベイブリッジ〜 12:39 羽田基地に北側から着陸、 12:40 エンジンカット。その後牽引車に牽かれて格納庫前へ 12:48 降機。   4。 観察 4−1. 噴煙とガス  北東の風で噴煙は南西へ、島の南南西部に流されている。(写真1〜7)(後刻飯 野氏から聞いたパイ ロット情報では高度1000ftで60度の風、25kt。) 噴煙は白色、灰 を含まず。相変わらずカルデラ南東隅か ら排出しているが、従来に較べて噴煙量は少 な目。排出に力なく、以前のようなはっきりしたパルス状排出 は見られない。概して モワーと上がっている。  火口を出た白煙はカルデラ内の気流で一旦東側に巻き上げられ、カルデラ縁付近の 高さに達してから風向 きどおり南西に流れている。(写真8)(注参照)  カルデラ外に上昇する白色噴煙は北東風に押されて南縁から斜面にこぼれ出るよう に流れている。(写真 9)高くは上がらない。上限は当初海抜約1100m弱(写真5、 6)、後半若干高めの1200m余りに(写真 1、3)。風速にもよるか。  白煙本体はほぼ島内で消散ぎみ。(少ないことに加え、冬とちがって気温が高くな ったせいもあるの か)。噴煙は下部を主に青白ガスを伴っており、遠方ほどこれが目 立つ。南南西斜面を這い下った青白いガ スは間鼻〜新鼻の海岸から海上へ延々とひろ がっている。(写真1〜3)  噴煙のひろがる範囲は火口から見込む角度20度弱、過去の例では強風時のパターン (なのだが、白波も少 なくそれほど強い風でない、むしろ穏やかにしては拡散範囲が やや狭い感じ)。  海上での SO2 観測値は 18700〜23400 t/day とのこと。(ドアオープンヘリの上 での臭いはあまり強 くなく、鼻の感覚では10000〜15000t/日くらい?と思ったが大 分/やや?ハズレ。) なお、海上測定高度 300 ft、機速 80 kt/h を極力維持。(飯野氏談)  海上でガス測定中の 11:15 頃、一時的に高さ 1500m くらいまでと見える白煙柱 が異方向に上がるのが観 察された(写真4)。前記のように、火口で見る白煙は力な くモワーと気流任せに上がる感じで、以前のよ うな力強い連続パルス状排出は見られ ないが、何時間か何十分に1回くらいは鬱積晴らしぎみに力強い噴煙 を上げるのだろ うか?パルス間隔が以前よりかなり長くなった、と捉えられるかもしれない。(長時 間観察 でないと本当かどうかわからないが。)常時の力無さが火口下では鬱積ぎみで あることの裏返し、と考える といずれ小爆発の可能性も考えられる。この 11:15 頃 の白煙柱は文字通り白色、灰含みの有色でもないから 小爆発には程遠い。気流のいた ずら?それにしてはいたずらが過ぎる。控えめなくしゃみ程度だろう。 (注)カルデラ内の白煙の動きについて:  カルデラ内の白煙の動きは、島全体の一般風向とは異なり、カルデラ内の気流によ る。風をものともしない かつての力強い噴煙排出などは別だが、排出力に欠けるとき は顕著。今日のような北東風(〜60度=東北東風) の場合、火口付近の白煙がむしろ 風上側の東寄りに流れる例はこれまでもよく見られた。これは次のように解 される。  カルデラ縁はスオウ穴から東にかけての北東縁が最も低く(深く)切れ込んでい る。北東風はここからカル デラ内に入り込む。前方には左カーブの西〜南西カルデラ 壁がひかえており、お椀の中に横から入ったも同然、 風の水平成分は壁沿いに徐々に 東に向きを変えさせられる。一方少量ながらも東縁沿いに入り込んだ風は南東〜 南壁 で逆に西に曲げられる。また真正面から南西壁上部に当たる北東風は縁を乗り越える 流れと壁沿いの下降 気流に分けられる。外に逃れるもの以外どの風も火口付近でかち あい、量的に優る西壁周りの風に軍配が上がる 。結果として東寄りに上昇するらし い。 4−2. 火口  カルデラ底の西風や下降気流により白煙が一旦東側に巻き上げられた後南縁から外 へ流れ出ているため、火口 は西〜北側から普段(の私のフライト時)よりはるかによ く見えた。 4−2−1. 「南東火口」初見参  白煙は主に3つの vent から排出している。モーモーと最も盛んに噴煙を出してい るのは相変わらず南東奥の 火口(南側火口列の奥;旧S3付近)。その西隣(旧N1と S2の間付近)と旧主火口(N1、北側火口列=N1〜 3の最も西寄り)からも上がって いるが後2者は弱い。火口丘北西延長線上の噴気帯や火口丘周辺山麓部の噴気活 動も これまでになく弱い(写真8)。(火口地形は、今日よく見えてみると、以前個人的 に N1〜3、S1〜3+ 4? を区別していたのと大分変わっている。後述のように特に南 側火口列が変化しているので、以後ここでは南 東奥の火口を単に「南東火口」と呼ぶ ことにする。)  火口から東に吹き寄せられる下位の白煙と南西にたなびき始める上位の白煙との隙 間から一回だけだが「南東 火口」の様子が見通せた。ポッカリ丸い輪郭が見える(ス テレオ写真10、11)。直径約200m(簡易写真計測で は約190m)。垂直ではないが急 傾斜の南カルデラ壁を廂(ひさし)代わりにその下部に火口がえぐれ込んでい る!  ここはかつて最初はカルデラ南壁下の比較的浅い崖錐斜面に蒸し焼き状態に出来始 めたところだ(01年2〜3 月以降と記憶、目下未確認)。崖錐斜面がなくなった (01年後半と記憶、これも目下未確認)どころか、現火口 はカルデラ南壁下に食い込 んでいる。別の表現をすれば、南壁下に浅い海食洞状に円く浅くえぐり込んだ輪郭に 見える。(アーチ状に天井すら見える。)壁下の火口、Kilauea Iki Crater の 1959 Vent を思い起こさせる (成因は違うが)。 4−2−2. 南壁下に食い込んだ南東火口の天井付近に昇華物付着?  飛行中は気付かなかったが、写真をよく見ると、南壁下に食い込んだ南東火口の上 部内壁が白い。厚さ(上下 幅)簡易計測で約50m、天井に近い火口内壁上部に昇華物 が付着しているのではないか?(天井裏までは見えな い!)下限がほぼ水平なため一 見地層にも見えたが、上位の薄い成層構造とは不調和、溶岩にしては山頂近傍の この 位置にしては特殊事情がない限り厚過ぎる。貫入岩体の可能性はないではないが(あ まりそれらしくも見え ず)、窪んだ地形を考えれば昇華物の可能性はかなり高い。今 後の観察に待ちたい。 4−2−3. 火口底  南東火口は火口底の位置も低い。以前はN1火口より十分高い位置にあったが、現 火口底はN1より若干(10〜 20m程度)低く見える。(上空から斜めに見ているので 数字は確実ではない。)ここにあった南壁下の崖錐やよ り下位の岩石は、過去1年間 の「小噴火」と呼ばれたガス抜き活動(小爆発)によって火山灰として噴き上げら れ、この火口をつくっていたことになる。  白煙の上り方を見ていると、円い「南東火口」内に vent は2カ所あるようにも見 える。手前(西側)からの 白煙が邪魔して奥の底は見にくいためよくわからない。以 前と高さの変化は大いにあるが、元のS3+S4?が水平 位置的にはそのまま生きている可 能性がある。(S4? は噴煙排出状況から想定していた最も南東寄りの幻の火口 で、噴 煙に邪魔されて結局これまで殆ど視認できずじまいだった。) 4−2−4. 今後の展開予測  南壁は下部が多少南東火口の天井代わりになっている。将来この厚さ200m近い切 立った天井が崩れ落ち てカルデラ縁が南に拡大する可能性は十分ある。現状では、少 量ずつとは言え南壁の崩落物はもろにこの火 口を埋める役目を果たしている。ガス排 出路閉塞への役目を果たしていることになる。大量に崩れ落ちて一 挙に埋め尽くしガ ス排出路に栓をすることが出来れば喜ばしいが、(残念ながらまだガスが勝つだろう が、)少量ずつの崩落ではある程度詰まった段階で息抜きに小噴火(小爆発)を起こ し、通気をよくするに 違いない。 4−2−5. 火口温度  こちらが火口「観察」をしている間に行なわれた飯野氏の火口「観測」では、火口 の最高温度は約380 度、とのこと。 4−3. カルデラ縁  薄曇りで直射日光がないため噴煙の影もなく、カルデラ内は(色の鮮やかさには欠 けるものの)よく見え る。北壁崩落のダストも少なく、観察にはよい状態。雨上がり ではないのに周壁の構造もよく見え、このと ころ崩落は以前ほど大きな規模ではない らしい。(以前崩落によるダスト=土煙がひどい時はカルデラ壁〜 底全体がきな粉ま ぶしのようにオード色になってよく見えず、観察のためには雨で洗い流されるのを待 って いたこともある。)しかし周壁崩壊=崖錐の成長・カルデラ底の埋積は少しずつ 確実に進んでいる。  4−3−1. 北壁 (その1) 北壁大崩落は3回くらいに分けて?  昨01年12月初め頃北池を埋没させた大崩落以来北カルデラ壁の全容をスッキリ見る のは初めて。北壁最高 点の下が大きくえぐれている(写真15、16)。幅200〜150mく らい、上下は300mくらいか、(地形図と 照らし合わせれば正確な数字が出るのに今 はパス、)上方と下方で広く、中間ですぼまる形の多少砂時計似 の断面を呈して大き く上下2段に崩落している。(正確に言えば、下段が接近して2段に分かれているの で 3段かそれ以上だが、形としては上下2つに分けられる。)移植ごて〜シャベルで 上から縦に削り取ったよ う。北壁は少なくとも3回に分けて大崩落したとみえる。  各段底部に上方からの黒っぽい崩落物がひっかかっている。その下方に崖錐がひろ がっている。直下の崖 錐上限は以前に較べはっきり上昇している。  北壁は上部100m程度がアグルチネートやスコリアで赤黒い。それより下の大部分 は崖錐も含めて見かけ が白っぽく淡色主体。各段底部と壁面直下の崖錐最上部(壁面 沿いの狭い部分)は色黒く(写真15)、最近 は最上部からの小崩落が主体と見える。 (その2) 北壁浸食溝と突出部  北壁大崩落部の両側にも崩落によるカルデラ縁の湾入や壁面浸食溝がある。(写真 15〜16)。東側ではス オウ穴との間の北壁東端で崩落、湾入状に壁面後退、大崖錐生 成が続いてきた(写真18〜19)。西側にも崩 落による同様な湾入部〜壁面浸食溝が2 本、際立って発達している。このため、後退した北壁大崩落部と両 側の崩落湾入部と に挟まれたカルデラ壁は、浸食に堪えた dike 似の突出部として、後退壁面からカル デラ 内へ突き出すかたちになっている。以前から目立っていたスオウ穴西隣突起がま すます目立つ(写真17〜1 9)。 (その3) 北壁最高点の東側が欠け落ちた  ごく最近のものらしい変化も見える。これまでの北壁最高点の東側が欠け落ちてい る(写真15)。上から 見るとカルデラ縁の崩落位置はなお明瞭、最高点の東側北斜面 が無くなっている(写真17〜18)。縁沿いに は後続部隊の地割れが多数用意されてい るため、崩落はまだまだ続く。  飛行中に大きな崩落はなかったが、それでも北北西壁の小崩落で赤い土煙がカルデ ラ縁上に上がるのを見 かけた(写真14)。 4−3−2. 北東壁  スオウ穴火口の東縁から東にかけてのカルデラ壁最上部の崩落が進んでいる。スオ ウ穴火口の東壁南端は 3月13日(津久井氏写真)まではほぼ元どおりだが、3月1 9日(吉本氏写真)には崩落してスコリア質 の黒い中身を露出させている。今日3月 25日までに崩落は更に進んだ。スオウ穴火口の東縁先端が斜め (約45度)に削れ落 ち、東に連なる北東カルデラ壁は最上部まで中身を見せている(写真20、21)。  スオウ穴火口はこの崩落によって内部構造の完全断面をカルデラ壁面に露出させる ことになった(写真 20)。物語りたいが、現活動とは無関係ゆえ、ここでストップ。  このところのスオウ穴火口東縁から東にかけてのカルデラ壁最上部の崩落により、 直下の崖錐面も発達、 崖錐上限は若干上がり、内壁下部のキプカ状に顔を出していた 部分は1/3ほどに縮小している(写真 21)。  このカルデラ北東壁最上部の崩落により、外側の北東斜面から浸食(拡幅と先掘 と)を進めてきたスオウ 穴東隣の谷はほぼカルデラ壁に達するかたちとなった(写真 22)。 4−3−3. 東壁〜南東壁  大きな変化は見当たらない。時々小崩落はあると見られ、内壁斜面の部分部分に比 較的新しい岩塊がまと まって散らばっている。1535年火口付近の下は多い(写真 23)。  1535年火口列上部の2連火口は、東火口の真ん中でカルデラ壁に切断されたまま。 その南西方に若干突出 したカルデラ縁は外側に新たな地割れを伴っている(写真 24)。 4−4. カルデラ底  底は干上がりぎみ(写真25〜27)。南西壁の崩落で小さくなった西池(黒池)の大 きさがその後あまり変 化ないのに較べて、北東池と中央池は著しく小さくなってい る。以前に較べて降水量が特に少なかった訳で はないとすると、後2者は崖錐発達に よる影響も考えられる。隙間だらけの崖錐堆積物では水は貯められな い。細かい灰で 不透水層をつくれば別だが。  水の色は茶色。西池も茶色。西池の水の供給源には噴気活動も考えられてきた。色 の変化は噴気活動の減 衰と関係しているかもしれない。  底の水量・白色噴煙の量の変化に雨量は大きな影響をもつが、火口活動により地下 が乾いてきたことも考 えられないだろうか? 4−5. その他  今回は周辺部をきちんと観察する時間はなかった。通りがけに見た大路池付近は緑 が多い(写真28)。昨 年3月にも各地で緑の回復に目を見張ったが、茶色〜灰色のま まの地域は多い。地形的にガスの流れを受け にくい地域(以前議論した)はやはり緑 が濃い。 (大島 治)