12月25日(水) 今回の同乗者は東宮さん(産総研),中堀さん,岡村さん(以上,気象庁),古屋さ ん(地震研)の4名.搭乗したヘリは東京消防庁の「かもめ」.天候は晴れ時々曇り. 9時39分,東京消防庁立川基地を離陸,三宅島に向かった.  10時39分,三宅空港に着陸.島内観測の古屋さんが降りた後,10時41分に再離陸, 火口観測を開始した.観測は11時11分までおよそ30分間行った.観測コースは,スオ ウ穴のすぐ西からカルデラリム沿いを反時計回りに村営牧場の上空まで飛行.このルー トでの飛行を3回繰り返した.観測時の飛行高度は,1回目は約3200ft,2回目 は3000ft弱,3回目は約3500ftであった.  観測終了後新島へ移動し,給油と昼食を採った.ガス観測が終了するまで新島で待 機した後,14時45分に新島を離陸,帰路に着く.15時26分,東京消防庁立川基地に帰 還した.長時間にわたる丁寧なフライトを遂行していただいた東京消防庁航空隊の皆 様に深く御礼申し上げます. [噴煙] 噴煙はほぼ真東に流れていた.噴煙の色は白色.放出量は10/6の吉本さんの観測時や, 11/13の金子さんの観測時より多い.噴煙が主火口内部に充満していたため,中の詳 しい状況はわからない.噴煙の上昇高度は主火口からおよそ300m程度で,季節風が強 かったせいもあり,カルデラリムのすぐ上で側方にたなびいていた(写真1).青み がかった硫酸ミストはほとんど観察されなかった. [カルデラ底] カルデラ内部の様子は,11/13の金子さんの観察時とほとんど変化していない.主火 口付近や噴気帯周辺はほとんど変化がない(写真2).噴気帯の最も西側の部分では, 新鮮な崖錐堆積物の隙間から白色の噴気が漏れだしているように見える.一時期は青 みがかった硫酸ミストが主火口から直接放出されている様子が観察できたが,この日 は主火口付近を詳細に観察してもその様子は確認できなかった(写真3). コーンと北西のマウンドの間の低地に出来た3つの水たまりは,中央が茶色く,南北 に位置するものが緑色を呈する(写真4).サイズも11/13の時とほとんど同じ.金子 さんの写真によると,カルデラの北側に大きな茶色の水たまりがあるはずだが,今回 は観察できなかった. [カルデラ壁] カルデラの西南西斜面に,大きなダイクが認められた(写真5).ダイクは,カルデ ラ南端の噴気帯の直下にある緑色の水たまりのすぐ西から,上方に向かって伸びてい る.カルデラ底から地表までの間を3分割した場合,ダイクはカルデラ底からおよ そ2/3の位置で2本に分岐しており,一見するとアルファベットの「Y」の字形を呈し ている.これで,カルデラ壁に認められる大きなダイクは,スオウ穴に通じるダイク と,カルデラ南壁の主火口のすぐ南側のダイクと併せて,3本目となった. [山腹および山麓] スオウ穴の様子はほとんど変化していない(写真6).湖水も緑色を保持している. また,カルデラの南斜面,雄山林道付近の様子もほとんど変わっていない(写真7). ヘリから見た限りでは,ガリー浸食は想像以上に進行していないように見える.赤場 暁付近では,谷の出口付近に大きな砂防ダムが完成したほか,泥流対策の導流溝も2 本整備された.この他,三池の東側や三宅島空港の上流付近も,砂防工事が進められ つつある. [その他] 中堀さんによると,火口温度は約270度であった. (大野希一) [写真の説明] ※撮影時刻は誤差1秒以内です. 写真1 真北から撮影した三宅島.噴煙はほぼ真東に流れている.主火口からの上昇 高度は約300m.風が強いため,カルデラリムから出たらすぐに横倒しになってしまう. 11時00分27秒撮影. 写真2 主火口および噴気帯周辺.噴煙の色は白.放出量は10/16や11/13にくらべて やや多め.11時02分41秒撮影. 写真3 噴煙をあげる主火口の拡大.噴煙量がやや多いため,主火口内部や周辺の様 子はよくわからない.火口の縁はやや黄色く見えるが,青みがかった硫酸ミストが直 接放出されているようにはみえない.11時09分14秒撮影.     写真4 北北西から見たカルデラ底の様子.カルデラ底には,コーンとマウンドの間 に出来た低地に,いくつもの水たまりが出来ている.11時09分07秒撮影. 写真5 北北西から見たカルデラ西南西壁.アルファベットの「Y」の字形をした白ぽ いダイクが認められる.11時04分06秒撮影. 写真6 スオウ穴.湖水の色はほとんど変化していない.11時01分46秒撮影. 写真7 カルデラの南斜面.ガリー浸食の程度も含めて,ほとんど変化なし.11時10 分40秒撮影. 写真8 赤場暁.一周道路上2箇所に泥流の導流溝が完成しているほか,谷の出口に砂 防ダムも出来ている.10時50分16秒撮影.