平成15年5月27日(火) 観測時間 10時50分 〜 11時29分 搭乗時間   9時47分 〜 15時16分 東ヘリ948→木更津東→館山西沖→1050三宅上空観察1129→1144新島空港(給油・昼食) 1314→三宅上空→COSPEC観測→1417→大島東沖−横須賀VOR→横浜→1516東ヘリ  (警視庁 おおとり1号 JA9602  クル−3名)  観測者 津久井(千葉大),中堀・白土(気象庁),川辺(産総研) 天候:曇り(時々雨) コース  9時48分,東京へリポート離陸.東京,神奈川は,もやで視程が良くないため,木更津の東を羽 田,木更津の空域を迂回して南下.神津島の天候は東風,8ノット(〜4m/s),曇り,視程は 10km以上とのことで,期待を持つ. 10時50分三宅上空へ達する.曇ってはいるが,雲底は 1400〜1500mくらいありそうで火口,カルデラ観測は可能.噴煙は火口上まで上昇した後北西方 向へ.ヘリははじめに高度800mでスオウ穴→カルデラ東縁沿い→1595年火口→東山腹→スオウ 穴を3回繰り返して観測,次いでスオウ穴→カルデラ東〜南縁沿い→村営牧場→南〜東山腹→スオ ウ穴を1回,最後に高度を1300mに上げてスオウ穴→カルデラ東縁沿い→1595年火口→東山腹→ スオウ穴を3回繰り返して11時29分観測終了.新島空港11時44分着.給油と昼食後13時14分離 陸.COSPEC観測をおこなう.火口から5マイルの距離を伊豆沖→南下→薄木・龍根沖→北上→伊 豆沖→南下→龍根沖へ.その後海岸線沿い(約3マイルの距離)に北上→湯の浜漁港→反転後,反 時計回りで赤場暁まで飛んで14時17分離脱.東ヘリ15時16分着陸. ◯ 噴煙,火山ガスの様子 白色噴煙は火口上まで上昇した後,伊ヶ谷方面へ流れる(写真1,写 真2).噴煙の高度は雲のためはっきりとはわからない.火山ガスは視認できないが,ヘリコプ ターがカルデラの南〜西側に回ったとき,および新島へ向かう途中,硫黄臭を感じた.COSPEC観 測では火山ガスは風が弱いため拡散して,ほぼ島の全周にわたって検知されたとのこと. ○ 火口の様子 主火口からの白色噴煙の量は5月1日(大野さん,川辺さん報告)に比べて明らか に多い(特に南側火口)模様(写真3). ○ カルデラ壁,カルデラ底 雲のため暗いけれども,噴煙にさえぎられることなくカルデラ壁,底 を観察できた(写真4〜10). 5/1に見られたスオウ穴西側,北西の崩壊跡の埃が洗いおとされて きれいになっている(写真4). カルデラ西壁に突出した部分(写真5,Y字型の岩脈の北(右)側)の南側壁面に大きな亀裂が入っ ていて(写真6左よりの陽がさしているところ;5/1川辺さんの写真にはすでに写っている)剥落 するのは時間の問題. 最近の壁の崩落によって西側の水溜りと,モマウンド(写真10上中央右より)“南側の水溜りは大 幅に縮小している.北東の水溜りは5/1よりも若干広がっている(写真4,10). 〇 カルデラ周辺および風下の樹木は枯死しているものが多い.その一方で新たな草本は葉を出し ているように見える(写真11). 写真1 北西海上,伊豆沖からみた三宅島と噴煙の様子.噴煙は伊ヶ谷方面へ流れる.火山ガスは はっきりとは見えない. 写真2 南西海上,薄木沖からみた噴煙の様子.噴煙は左手伊ヶ谷方面へ流れる. 写真3 主火口の様子.白色噴煙は少なくない. 写真4 カルデラ北壁の様子. 写真5 カルデラ西壁の様子.Y字状の岩脈の右側の突出部は崩落を続けている. 写真6 南からみたカルデラ西〜北西壁の様子.突出部に垂直方向に入った亀裂に注目.このブ ロックも近いうちに規模の大きな崩落をすると思われる. 写真7 北からみたカルデラ南〜南東壁の様子.1535年スコリア丘が左端に見える.南東壁の累重 した白っぽい溶岩がブロックとして崩落し,斜面にひろがっている. 写真8 北からみたカルデラ南東〜東壁の様子. 写真9 西からみたカルデラ北東壁の様子. 写真10 火口底の様子.写真右上が北,右下が東にあたる.上中央右よりに“マウンド”,左下に 北側主火口と噴煙が見える. 写真11 三池港上空から役場,雄山をみる.樹木はほとんど枯死しているのだが,右下三池浜の爆 発角礫岩(9世紀)の堆積物上には草の葉の緑が見られる.本日,噴煙・火山ガスは主に北西へ向 かっているので,こちら側は平和. ***************** 2003,5,27の三宅島ヘリ報告追記(2003,6,6)  カルデラ西壁の崩落とカルデラ底への展開に関し,産総研のHPに川辺さんが5/1と 5/27の比較 を写真で示しています (http://www.gsj.jp/miyake2000/miyakeindex.html).  また,気象庁火山課の中堀さんによれば,5月24日午前9時34分頃,空振を伴っ た比較的大き な崩落振動が確認され,規模の大きさや北側のA点よりレストハウスの 振幅が大きい(振り切れて いる)点から,崩落がこの振動に対応すると考えて間違い ないとのこと.なお,最近はこれ以外に も頻繁に崩落波形が見られているとのこと.