6月3日(火曜日)快晴 ほぼ無風 観察:嶋野 同乗者:岸さん,宮下さん(気象庁) 搭乗機:ちどり(東京消防庁航空隊;機長大山さん他3名) 安全な操縦と親切なコース取り,大変ありがとうございました. [行程] 09:36 立川防災基地を離陸.逗子上空,伊豆大島東方を通って三宅島へ. 10:19 三宅島を目視確認.やや霞ががっているが,山頂付近には噴煙見えず上空は快晴.今回は現地重力調 査がないためそのまま火口観測へ. 10:26 三宅島北岸大久保浜上空より反時計回りにカルデラ縁から数キロのところを旋回(高度約3000 フィート).スオウ穴北東方で待機. 10:36 右に旋回しつつ高度を上げる(スオウ穴直上,高度約3500フィート).再びしばらく待機.カルデ ラ底がよく見える.その後,もう一周カルデラ縁付近を旋回. 10:49 三宅島上空域離脱. 10:59 神津島空港着陸. 給油,昼食(空港内の売店でやきそば) 12:46 コスペック観測班は三宅島に向かい再び離陸(私は待機) 13:57 神津島帰着 給油 14:37 神津島空港離陸.新島東方,伊豆大島三原山,逗子上空を通過して再び立川へ. 15:30 立川防災基地着陸. [噴煙]ほぼ無風であったことに加え,カルデラ縁から出るような大きい噴煙はほとんどなく,特定方向にた なびく噴煙は認められなかった.5月1日の大野さんの主火口,外輪山の表現を借りると,主火口からは青白 いガスが放出され,ほぼ垂直に上昇していた.水蒸気は間欠的に放出されているようだ.一方,外輪山の縁に あたる亀裂からは白色の蒸気が放出されていたが,亀裂が目視できる程度であり,あまり活発ではない.カル デラ縁の南側を飛んだときにのみ硫黄臭をやや強く感じた. [カルデラ壁]西壁上部がやや崩落したのか,赤色酸化した部分が目立つ.下部には真新しい崖錘があるの で,最近も崩れたのかも知れない(前回5/27のフライトの時とあまり変わらないかも知れない).津久井さ んの指摘した北西壁の亀裂がはっきりしている.円弧状になっており,上に向かって下盤がオーバーハングす る形になっている.亀裂の上盤の体積からするとこれが一度に崩落したら3/20クラスあるいはそれ以上の堆 積物がカルデラ底に出来るだろう. [カルデラ底]過去に何度か報告があるが,カルデラ底北西部分にあるマウンドが盛り上がって見える(特に 変化はない).スオウ穴のすぐ西のカルデラ壁を起源とする岩屑なだれの堆積物はまだ認められるが,先端部 分に赤色酸化した火砕物を多量に含むと思われる堆積物が覆っている.前者のようなローブ状の輪郭や流れ山 地形は認められず表面は平坦である.5/21の写真を見るとこの堆積物の分布がちょうど5/21の水をかぶった ところに一致するので,先述の西壁や主火口付近を給源とする泥水がここに溜まり,干上がって出来た堆積物 であろう.5/21に比べてほとんど水が干上がってしまっていることを考えると,マウンドが盛り上がって見 えるのはマウンド自身が盛り上がっているのではなく,周囲が相対的に低下しているからなのかも知れない. (嶋野岳人) [写真解説] Fig1:北方より見た三宅島.快晴.中央やや左に見られるような小さな雲は,青白いガスが上がって行き,や がてこのような雲に変わることが分かった. Fig2:北西縁よりカルデラ南西半部.主火口からは青白いガスのみで,もくもくした水蒸気はほとんど出てい ない. Fig3:スオウ穴のエメラルド色の水とその付近の地下断面.写真左側が3/20に崩壊した地域(黄色く変質し ている). Fig4:今日はずっとこんな感じでガスが出続けていた.手前の3/20崩落部分では,ときどき土煙が上がって いた(スオウ穴右手わかりにくい). Fig5:カルデラ底.3/20に出来たと考えられる岩屑なだれの給源は北(右).一方,西側(上側)から暗赤 色の堆積物が張り出し,表面を覆っている. Fig6:北西壁のカルデラの輪郭に平行に垂直の亀裂が認められる(黄矢印で挟まれた所).3/20のもの(ス オウ穴のすぐ西)と体積は同じくらい.手前の赤い部分(赤矢印)が新しい?崩壊部(ごく小さい)。