2003年10月15日(水) 観測ヘリコプター:警視庁 JA9678 おおぞら2号SuperPuma 観測者:吉本(地震研),中堀・飯野(気象庁) 観測時間:10時26分 〜 11時05分(火口観測),     :12時50分 〜 13時30分(観測), :13時30分 〜 13時58分(火口観測), 搭乗時間:9時33分 〜 14時56分 天候:晴れ,西の風 4m/s, 9:33 東京へリポート離陸 噴煙・ガスの様子:前日の雨のためか白色噴煙の量は前回の9/30よりかなり多かった.白色噴煙 の上昇力は弱く,カルデラ壁直上から東南東に流れていた(写真1).噴煙高度はカルデラから 400mぐらいである.白色噴煙量は午後の観測時には午前中よりも噴煙の量が減少していた.青 白色のガスは白色噴煙の下方を三宅空港の方向に流れていた.風下側ではガス臭を感じた. 火口およびカルデラの様子:白色噴煙は主に主火口北側から放出されており,噴気地帯の噴気量 も前回に比べ量が増えていた(写真2).主火口南側からは噴煙はほとんど放出されていない(写真 3).気象庁による火口の温度観測の結果は291度であった.カルデラ底の水たまりの水位は上昇 し,分布面積が拡大していた(写真4,5).カルデラ壁には依然として多数の亀裂が残存している(写 真6,7,8). 11:20 新島着陸 12:38 新島離陸 12:50 コスペック観測(5mile 4回,3mile,2回,海岸線2回,計8回計測) 13:30 コスペック終了,再び火口観測 13:58 火口観測終了 14:56 東京へリポート着陸. (吉本充宏) (写真) 写真1:南東から見た三宅島,白色噴煙,青白色ガスは東南東にたなびいている. 写真2:火口および噴気地帯の様子,9/30の観測に比べ,白色の噴気量が増加している. 写真3:主火口南側からはほとんど噴煙が放出されていない. 写真4:カルデラ底の様子,水たまりの水位は増加し,分布面積が広くなっている. 写真5:カルデラ底の様子 写真6:カルデラ壁北西側の亀裂 写真7:カルデラ壁北側,スオウ穴の西の亀裂 写真8:カルデラ壁南西側の亀裂 [噴煙] 夏期に特有の"島曇り"と,風が弱かったため,山頂付近は厚い雲で被われていた (写真1).この日,地上付近(300ft)は北北東風だったが,上空(3000ft)は北東 風だった.また,さらに高度が高くなると,東風の成分が強くなった.このため,噴 煙は様々な方向に流れた.山頂付近を多う大きな噴煙(+積雲)は,大局的には西に 流れていた(写真1).色は白色で,到達高度は最高で約2000m程度と見積もられる. 噴煙よりも密度が大きい青みがかった硫酸ミストは,地上付近の風に従って,白色の 噴煙とは独立に島の南西方向に流下していた(写真1および2).ガス観測時に阿古の 沖で刺激臭を感じたが,ガスに伴う弱い臭気は島の西側まで感じた.風が弱い分,硫 酸ミストがより広い範囲に拡散しているようであった. [メインのコーンと主火口内部] メインのコーンは,外側の"外輪山"と,内側の"主火口"を持つ2重構造を呈し (写真3,4),その形状や大きさに特に変化はない.主火口内部は白色噴煙が充満し ているため,内部の詳しい様子はよく分からないが,噴煙のすきまから黄色い硫黄が 火口の内壁やコーンの斜面にべったりと付着している様子が確認できる.青白い硫酸 ミストは,写真奥の主火口の縁あたりから直接放出されている.コーンの縁辺部にも わずかな噴気が認められ,その噴気孔の周辺部は,硫黄の付着により黄色く変色して いる. [カルデラ底] 島曇りのため,火口観測は不可能と思われたが,カルデラの南西側のごく限られた範 囲から,数ヶ月ぶりにカルデラ内部を観測することが出来た.カルデラ底は,これま で認められた大きな水たまりがほとんど確認できなくなり,サイズが小さくなった (写真5).カルデラ底自身は,全体的に小さな起伏が目立つようになったが,その 一方で,北西にある大きなマウンドはあまり目立たなくなったように思われる.これ は撮影方向が悪いからかもしれない.カルデラ底の南東側に,小さな黒色の水たまり を見つけた(写真5).これは従来カルデラの南西にあったものとは位置が異なるた め,別物であると考えられる.また,カルデラ北壁の崩落によると思われる大きな崖 錐堆積物が認められる(写真6).このことから,3/20以降もカルデラ北壁の崩落は 継続しているものと予想される.また,カルデラの南西側に認められた亀裂は,今も なお残存する(写真7).