三宅島ヘリ観測報告 報告:嶋野(東大地震研) 日時:2003年10月30日(木)快晴 風:北東16ノット(現地) 発着:羽田航空基地(海上保安庁) 搭乗機:わかわし(JA6805)搭乗員(5名) 同行:宮下,中堀(気象庁),宮城(産総研)(以上敬称略) [行程] 10:10 羽田航空基地離陸 天気快晴(上空では富士山を目視確認) 10:30 伊豆大島:目視確認 10:45 三宅島視界に入る(ほとんど雲はかかっていない: Fig.1) 白煙放出(鉛直方向:山頂上空数百mで滞留,水平方向:西から西南西に たなびく) 北東沖より接近し,そのまま約10マイルくらい離れて南下(時計回り). 11:05 南沖からコスペック観測に(高度300フィート,飛行速度55ノット,ドア 開放). 11:15 三本瀬付近で戻り(左回りに) 11:22 立根付近沖で右回り 風向きがやや変化(真南に噴煙たなびく) 11:33 伊ヶ谷沖で旋回し左回り,より島に近づく(約5マイルで測定). 11:39 右回り.高度を3500フィートにあげて火口観測に.東側から観察. 12:13 三池港上空で三宅島上空から離脱.羽田に向けて飛行(高度約300フィート 低空飛行). 12:55 横浜上空  13:02 羽田航空基地着陸. 13:20 解散. [観察結果] コスペック測定に時間を要したため,火口内部観測は20分弱程度だった.また, 日差しが低くなったため,火口内南側は影になって観察しにくかった.観測した範 囲では,地形,現象等の顕著な変化は認められなかった. 天気の良い日にしては,比較的活発に白色噴煙(噴気)を放出していた.水蒸気が 主体と考えられるが,日射光が赤く色づいているところから,火山ガスも相当でて いると考えられる.間欠的に噴煙が上がるため,小さいバルーン状の雲が風下に向 かって連なっている.ほとんどの水蒸気は噴煙がカルデラ壁よりやや上(300-400 m)に達した段階で消滅してしまっている(Fig. 2).火山ガスは南〜西南西方向に 流れており,この方角では火口周辺はもちろん,三本瀬付近でもかなりガス臭がし た. 山頂火口は主火口中心部で最も活発に噴煙を出していた(Fig. 3).その周辺でも絶 え間なく噴気がでている様子であったが,ガス,水蒸気の放出量は遙かに主火口の 方が多い.赤外カメラでは150度で振り切れた(気象庁). カルデラ底部には赤茶色の池が多数認められた.北北西側のマウンドの輪郭は大き さは以前と変わらないが,周囲がやや平坦になったためか輪郭が比較的明瞭であっ た(Fig. 4).9/30の写真と比較する限りカルデラ壁の崩壊もほとんど進んでいない とおもわれる(Fig. 5).