固体地球力学II(学部・院 共通講義)2001年11月22日講義分 

(1)クレロー(Clairaut)の定理 

Question

Answer

クレローの定理の右辺m=w2 b/(GM/a2)を求めるときに,a=bを代入して良いのでしょうか?(井上(信))

 

形状扁平率fをつかうとb=a(1-f)だから,

m=[ w 2 a/(GM/a2) ] - f*[ w 2 a/(GM/a2) ]

第一項は1/300のオーダー,第2項は1/3002のオーダーだから

第2項は無視できる.

重力扁平率を実際に測定した人はいるのでしょうか?(大渕)

最初に重力が緯度によって変わると気づいたのは,フランスの天文学者リシェー(1630-1696)と思われる.パリできちんと調整した振り子時計を,南米ギアナに持っていくと,1日に2分28秒も遅れるようになった.ギアナで調整後,パリに持っていくと2分28秒進むようになった.

振り子の周期はT=2 p (L/g)1/2だから,上の結果はgの緯度依存性を表す

クレローの定理は経験則ではなくて,式変形から導出されたのですか?だとするとすごい(鈴木)

すごく良い感性の質問.29日の講義で,「おまけ」で話すこととしましょう.

クレロー(1713-1765)ってどんな人か,事典で調べておくと面白いかも.

クレローの定理から,もっと有益な情報が引き出せないでしょうか?(大木)

幾何学扁平率と重力扁平率を観測して,惑星の自転角速度を見積もるってのどうでしょう?金星探査機マゼランでやったのかな?(金星や水星みたいにゆっくり自転の惑星の場合が面白いかも)


(2)正規重力・測地基準系

Question

Answer

正規重力と,実測の重力の差はどの程度でしょうか?(福田)

実測の重力に高度補正(0.30mgal/m)を施した値と,正規重力の差を,フリーエア重力異常Dgと言います.だいたいこれは数百mgal(ミリガル)の程度ですから,ズレの程度Dg/g<500*10-3gal/980gal=0.05%ぐらい.

地球のGMは,物を落としてmg=GMm/a2で決定しているのでしょうか?(中村)

衛星の軌道運動を説明するような重力ポテンシャルの形から,きめるのが正確でしょうね.中村君の方式だと,多数の地点で測定を繰り返さなければならない.

(3)雑感

Question

Answer

計算が多くて,物理的な意味が見にくいです(斉藤)

あまり親切に解説するのも,良くないとおもってます.生協書籍部に立花隆の本「東大生はバカになったか?」を読んでみてね.

昔,物理数学でひたすら導出した球面調和関数(しかも第2種)が実際にでてきて,嬉しかった(大木)

私も学生のころは,第2種なんて”日陰くさくて意味ないんじゃないの”と思ってました.

ふだん,あまり気にとめない物理定数ですが,理科年表などにかなりの精度で求められている.それはすごい努力だったのだろうと思う(川崎)

そのとおりですね.1桁精度をあげるってことが,どんなに厳しいか,いずれに身にしみてわかるようになるでしょう.