(1)グルーバルスケールの研究
地球の磁場や電場の長期的な観測を行います.これによって,外核における地球磁場の発生,核とマントルの相互作用,マントル深部の電気伝導度構造などの研究を行います.特に我々のグループが「売り」にしているのが,海底ケーブルによる地球スケールの電位差観測です.
この観測では,国際通信業務で働いてきて引退になった海底ケーブルをもらってきて,何千kmも離れた地点間の電位差を測定するのに用います.もうすでにアメリカやロシアの研究者と協力して10本位のケーブルを利用しています(図1).マントルの電気伝導度構造を調べたり,あわよくば核表面のトロイダル磁場変動を検出しようと目論んでいます.トロイダル磁場とは,外核の中に閉じ込められていて,地磁気観測では見ることができませんが,対応する電流はマントルを通して漏れ出ているはずで,このような電位差観測にかかるかも知れないからです.
このような観測ができるのは,かつて電話会社がケーブルを敷設した場所に限られます.最初はデータが得られただけで狂喜したのに,何年か経つと人間欲がでてきて,「自分の思った場所で電場の測定ができないだろうか?」と考えはじめました.そして,今年度から,自分で長−いケーブルを海底に敷設して長期間観測するシステムの開発にとりかかりました.長?いと言っても,開発するシステムではおおよそ百kmくらいの長さですから,やはり通信用ケーブルにはかないません.でも,このシステムでは電位差の測定に高性能電極を使う事ができるので,期待される信号の検知能力の点では,決して見劣りしないシステムを作れると思っています.
地磁気解析による地球深部の研究は,これまでは世界各地にある地磁気観測所の地磁気データを用いて行われてきました.しかしながら,海半球の部分についてはハワイや西サモアなど観測所がきわめて少ないという問題点があります.そこで,海洋島において信頼性の高い連続観測が行えるような磁力計を開発して,観測点の増強をはかることにしました.これまでに9ヵ所の観測点(ほとんどが南洋のリゾートアイランド!)を設置しました(図2).このような電場や磁場の長期観測をグローバルスケールで行う目的の一つはもちろん地球磁場の成因であるコアのダイナモプロセスの理解のための基礎データを得るということにあります.例えば、このデータは、これまで以上の信頼性をもつコア表面の流れを求めたり、地球回転に影響のあるコアーマントル結合の問題を解明するという目的で用いられています.