(2)セミグローバル・リージョナルスケールの研究
海半球は広いですから,海洋島における地磁気観測や海底ケーブル電位差観測だけで得られる空間分解能にはおのずと限界があります.特に地下構造についていっそう詳しく調べたい場所では,自前で測定器を設置して長期間観測を行う必要があります.海底下の地下構造を調べるためには,標準的な観測手法として,われわれのグループが開発した海底電磁計のアレー観測があります.海底電磁計は,3成分地磁気変化および2成分海底電位差の観測を,数10日〜1年程度行うことができます.1999年夏から2000年夏には,海底地震のグループと共同で,フィリピン海を横断する測線で約8ヶ月間の観測を行いました.2001年にはマリアナ海域における同様の観測を開始し,現在も継続しています.
また,中国の東北地方(旧満州)においては,中国地震局の研究所と共同で,ネットワークMTという観測を行っています.この観測方法は,推進センターの上嶋助教授が開発したもので,上嶋さんもこの共同研究の重要なメンバーの一人です.現地観測では,電話回線を用いて数10km〜数100kmの距離の電位差変動の観測を行い,地下の電気伝導度構造を調べます.海底ケーブルほどではありませんが,長い線を用いると深部までの構造を調べることができるという利点があり,中国の場合はおよそ1000kmの深さまでの構造を解明できそうです(図3).
図3 中国東北部の電気伝導度構造モデル