図 我々やアメリカの研究者により電位差観測が行われている海底ケーブル(太線)と海半球磁場観測点(▲設置すみ ▲計画中)
(1)海底ケーブルによる地球スケールの電位差観測と地球深部の研究
近年国際通信は,次々と光ファイバー化されています.用済みになった従来の同軸海底 ケーブルを用いて,何千kmも離れた地点間の電位差を測定しています(図参照).得ら れたデータには,様々な情報が含まれています.この中でも特に,マントルの電気伝導 度構造の解明と,直接観測が不可能な,流体核表面のトロイダル磁場変動の検出を目標 としています.海底ケーブルによる電位差観測は,われわれのグループの売り物で,従 来,地磁気のデータのみを用いて行われてきた研究に,新しい視点をもたらすことがで きるのではないかと考えています.
(2)海洋島と太平洋周辺域における地磁気観測
地磁気解析による地球深部の研究は,これまでは世界各地にある地磁気観測所の磁場デ ータを用いて行われてきました.しかし,太平洋域(海半球域)では観測所が極めて少 なく,グローバルな磁場の理解には大きな問題になります.そこで,海洋島や太平洋周 辺域に信頼性の高い,連続観測が行える磁力計を開発し,観測点の増強をはかることに しました.既に5点で観測を開始し,今後10点程度まで観測点を増やす予定です(図 参照).新たに取られたデータにより,海半球における地磁気変化の空間分布が格段に 向上されることが期待されています.
(3)海底地磁気長期観測
海半球をカバーするためには,海洋島における観測だけでは不十分な地域があります. そのようなところでは,海底に測定器を設置して長期間観測を行う必要があります.こ のための観測機器の開発と,実際の観測を行っています.
(4)海底電磁気アレイ観測
海底下の地下構造を調べるための標準的な観測手法として,海底電磁気計のアレイ観測 があります.これまでに,東太平洋中央海膨とフィリピン海の観測を,国際的なプロジ ェクトとして行いました.
このほかにも
電気伝導度構造を正しく求めるための理論(歌田),地球磁場を生成している流体核の ダイナミクス(清水),電気伝導度構造を用いた地域的なテクトニクス(市來),地震 発生に伴う電磁気現象の理論(小河),複雑な電気伝導度を持つ地球の電磁感応(小山), ウェーブレットによる地球磁場変動解析(浅利)等の研究を行っています.