領域概要B01 地球物理学的構造調査班(課題番号 JP16H06475)
スロー地震発生領域周辺の地震学的・電磁気学的構造の解明代表:東京大学 地震研究所 望月 公廣
研究目的
近年明らかとなった断層すべりの多様性は、プレート境界面摩擦特性の不均質性に起因し、境界面の形状、そこに存在する物質の物理的性質や水の分布などの構造・環境的要因を反映していると考えられる。本研究では、多様な断層すべりが連動して発生する豊後水道周辺域を主な対象領域として、地震学的・電磁気学的な手法を総動員し、プレート境界周辺構造の包括的な理解、さらには断層すべりの発生に伴う構造内の変化を捉えることに挑戦する。A01班、A02班の観測によって求められた詳細なスロー地震発生領域と、本研究で得られた構造との対比、さらにはB02班によって明らかとなるプレート境界物質の物性の情報とあわせ、スロー地震の発生環境を把握する。本研究の結果について、他の沈み込み帯と比較し、特に共通点・相違点の構造的要因を解明し、断層すべりの統一的理解に基づく物理モデル構築を目指す。この物理モデルの構築により、断層面構造のモニタリングによるプレート間の歪蓄積過程の推定、さらに断層すべり発生メカニズムの解明に向けた、新しい研究段階への移行が期待される。
研究内容
本研究では、海・陸域において地震学的・電磁気学的な調査・観測データを取得し、海溝軸から深部低周波微動発生域までのシームレスな3次元構造、およびプレート境界周辺の物性構造について、その詳細を明らかにする。そのため、地震学的手法としては、海陸機動観測網を展開するA01班とも協力し、既存の基盤的定常地震観測網のデータとあわせて構造解析を進める。さらに、四国西部の陸域、および豊後水道沖合を中心とした海域において、大規模な人工震源構造調査を予定している。また電磁気観測では、豊後水道を囲む四国・九州の陸域における観測網を充実させるとともに、豊後水道沖合を中心とした海域観測を実施する。ここで得られる観測・調査データを利用し、以下の研究を行う。
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- (A) 地震学的手法による構造解析
- 自然地震観測および人工震源構造調査の記録を用いたトモグラフィー解析を行い、3次元地震波速度・減衰構造を求め、物質およびその状態の同定、さらには含水量の推定を行う。構造内の物質境界にあたるプレート境界などの地震波速度構造不連続面で起こる反射、あるいはP-S変換に着目し、その形状や周辺の物性の推定の解明を行う。
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- (B) 電磁気学的手法による構造解析
- スロー地震を含む多様な断層すべり運動では、流体の関与が示唆されている。電磁気学的手法による構造解析は、特にこの流体分布を把握する上で有効な手段である。四国西部から九州東部、さらには豊後水道周辺海域での観測を通し、3次元電気伝導度構造を明らかにするとともに、スロー地震活動と流体分布との関係について解明を進める。

以上の構造解析に関する研究結果について、A01、A02班の観測による断層すべりの発生時空間分布、およびB02班によるプレート境界物質の物性に関する情報と結びつけることによって、プレート境界、およびその周辺の状態と運動の関係を理解し、C01、C02班と協力して断層すべりの物理モデル構築を目指す。
メンバー
- 研究代表者
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- 望月 公廣東京大学 地震研究所
- 研究分担者
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- 上嶋 誠東京大学 地震研究所
- 市原 寛名古屋大学 環境学研究科
- 三浦 誠一海洋研究開発機構 海域地震火山部門
- 蔵下 英司東京大学 地震研究所
- 汐見 勝彦防災科学技術研究所 地震津波防災研究部門
- 中島 淳一東京工業大学 理学院
- 研究協力者(教員・研究員)
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- 飯高 隆東京大学 地震研究所
- 吉村 令慧京都大学 防災研究所
- 相澤 広記九州大学 大学院理学研究院
- 後藤 忠徳兵庫県立大学 大学院生命理学研究科
- 多田 訓子海洋研究開発機構 海域地震火山部門
- 松野 哲男神戸大学 海洋底探査センター
- 北 佐枝子建築研究所 国際地震工学センター
- 石瀬 素子東京大学 地震研究所
- 悪原 岳東京大学 地震研究所
- 塩崎 一郎鳥取大学 工学研究科
- 小川 康雄東京工業大学 理学院