議事概要

第9回(平成28年度第1回)都市の脆弱性が引き起こす激甚災害の軽減化プロジェクト運営委員会

開催日時 平成28年8月31日(金) 13:30〜17:30

開催場所 東京大学地震研究所1号館2階 セミナー室

議事次第

[1] 報告

・開催の挨拶(武村)

・配付資料の確認(事務局)

・出席者の確認(事務局)【都28-1-1】

・前回議事録の確認(事務局)【都28-1-2】

・文部科学省挨拶(文部科学省)

・地震研究所共同利用・特定共同研究の登録(平田)【都28-1-4】

[2] 議事

研究計画 (平成27年度の進捗状況と平成28年度の実施計画)

1.南関東の地震像の解明

a.首都圏での地震発生過程の解明(地震研、平田)【都28-1-5】

b.プレート構造・変形過程と地震発生過程の解明(地震研、佐藤)【都28-1-6】

c.首都圏での中小地震と大地震の発生過程の関係の解明(地震研、佐竹)【都28-1-7】

d.首都圏の過去の地震活動に基づく地震活動予測手法の確立(地震研、鶴岡)【都28-1-8】

2.観測に基づく都市の地震被害評価技術の開発(地震研、堀)【都28-1-9】

3.サブプロジェクト@の管理・運営(地震研、平田)【都28-1-10】

4.統括委員会によるプロジェクト全体の運営(地震研、平田)【都28-1-11】

5.サブプロジェクト間の連携について(地震研、平田)【都28-1-12】

[3] その他

・最終成果の取りまとめに向けて【都28-1-13】

(最終報告書、最終成果報告会など)

・総評

配布資料一覧

都28-1-1 出席者リスト

都28-1-2 前回議事録

都28-1-4 地震研究所共同利用・特定共同研究の登録

都28-1-5 首都圏での地震発生過程の解明

都28-1-6 プレート構造・変形過程と地震発生過程の解明

都28-1-7 首都圏での中小地震と大地震の発生過程の関係の解明

都28-1-8 首都圏の過去の地震活動に基づく地震活動予測手法の確立

都28-1-9 観測に基づく都市の地震被害評価技術の開発

都28-1-10 サブプロジェクト@の管理・運営

都28-1-11 統括委員会によるプロジェクト全体の運営

都28-1-12 サブプロジェクト間の連携について

都28-1-13 最終成果の取りまとめに向けて

出席者

委員

1.研究実施機関研究者

東京大学地震研究所 教授 平田 直

東京大学地震研究所 教授 佐藤 比呂志

東京大学地震研究所 教授 佐竹 健治

東京大学地震研究所 准教授 鶴岡 弘

東京大学地震研究所 教授 堀 宗朗

東京大学地震研究所 准教授 酒井 慎一

東京大学地震研究所 講師 中川 茂樹

2.再委託先機関研究者

神奈川県温泉地学研究所 主任研究員 本多 亮

防災科学技術研究所 主任研究員 木村 尚紀

横浜国立大学 教授 石川 正弘

東京工業大学 教授 廣瀬 壮一

3.上記以外の有識者

(委員長)

名古屋大学減災連携研究センター 教授 武村 雅之

(委員)

国土交通省 国土地理院 主任研究官 水藤 尚

気象庁 地震情報企画官 中村 浩二

地震予知総合研究振興会 副首席主任研究員 笠原 敬司

筑波大学 准教授 庄司 学

兵庫県立大学 准教授 木村 玲欧

東京都総務局 防災計画担当部長 小林 忠雄

オブザーバー

(委託元)

文部科学省研究開発局地震・防災研究課 室長 松室 寛治

文部科学省研究開発局地震・防災研究課 室長補佐 田中 大和

文部科学省研究開発局地震・防災研究課 行政調査員 武田 哲也

文部科学省研究開発局地震・防災研究課 調査員 渋谷 昌彦

(再委託先、有識者等)

東京都総務局 防災専門員主任 渡辺 秀文

東京都総務局 防災専門員 萩原 弘子

東京都総務局 課長 小川 清泰

東京都総務局 課長代理(計画調整担当) 沖 修平

(地震研究所・事務局)

東京大学地震研究所 准教授 加藤 愛太郎

東京大学地震研究所 准教授 長尾 大道

東京大学地震研究所 助教 石山 達也

東京大学地震研究所 助教 西山 昭仁

東京大学地震研究所 特任研究員 パナヨトプロス・ヤニス

東京大学地震研究所 特任研究員 村岸 純

東京大学地震研究所 特任研究員 中村 亮一

東京大学地震研究所 特任研究員 五島 朋子

東京大学地震研究所 特任研究員 横井 佐代子

東京大学地震研究所 特任研究員 加納 将行

東京大学地震研究所事務部 事務長 見供 隆

東京大学地震研究所研究支援チーム 係長 水津 知成

東京大学地震研究所研究事務支援室 室長 中塚 数夫

議事録

〔報告〕

・武村委員長より開会の挨拶があった。

・事務局から配布資料の確認があった。また資料【都28-1-1】に基づき出席者の確認が行われた。その後、資料【都28-1-2】に基づき前回議事録の確認依頼があった。

・文部科学省松室室長から挨拶があった。

・平田委員より資料【都28-1-4】に基づき、地震研究所共同利用・特定共同研究の登録について説明があった

〔議事〕

研究計画(平成28年度の実施計画)

2. 観測に基づく都市の地震被害評価技術の開発

・堀委員から資料【都28-1-9-1】【都28-1-9-2】に基づき、「2.観測に基づく都市の地震被害評価技術の開発(大規模数値解析、可視化)」について説明があった。

・武村委員長から、地震動の推定は観測点間距離に制約を受けるのではないか。5秒から10秒よりももっと細かくわかるのかという質問があった。これに対し、堀委員から、要求しているのは10 Hzだが、今後の課題である。地震波の推定だけではなく地盤の構造も推定するので、単純に波長と観測点距離で決まるものではないと考えていると回答があった。長尾委員から無情報の場合は観測点間距離で決まるが、モデルの情報が入るとそうとは言えないとコメントがあった。武村委員長より目安はあるのかという質問があった。これに対して長尾委員は1 Hzは目指しているという回答があった。

・武村委員長から、検証しようとすると、モデルを考えて計算した結果をデータにして補間するというやり方だが、実際の現象はもっと複雑ではないかという質問があった。これに対して平田委員からは、この例では、実際に観測された波形と理論的に予測した波形が合っていると回答があった。続けて武村委員長から これより広いネットワークにしてその中にあるものが評価できるが、実体波が真下から来たらよくないのではないかという質問があった。これに対して長尾委員から、多くの地震の観測波形を機械学習させて地下構造を逐次的に更新し、地震動イメージングを向上させていくということを検討しているとの回答があった。また堀委員からは、データが蓄積されれば同化されていくので、観測をやめたらそこで終わってしまう。MeSO-netが続く限り同化を進め、精度の高いデータを蓄積して使っていきたいという回答があった。

・武村委員長から、古川地区の入力は何を使ったのかという質問があった。これに対し、堀委員から、東北地震のときの古川地区とK-NETの観測データがあるのでこれを外挿して、この2点を一律の地下基盤から入ったと仮定し、地盤構造を用いてその基盤に引き戻した時の入力地震動を使うという回答があった。続けて武村委員長から、このモデルはどれだけ合うのかという質問があった。これに対し堀委員から、建物の情報が抽象的で旧いモデルと新しいモデルで合うものと合わないものがあった。モデルを適切に仮定すれば合う。建物の情報がなかったので、実際の建物データを入れる予定である。建物の情報を同定して計算すると空間的に合ってくる。建物情報はあるが、実際そこに何があるかはわからなかったので、今年入手し、計算すると回答があった。

・小鹿委員から、サブプロAとの関連で、個々にみていくと詰めていかないといけないところがある。例えばセンサネットワークで、センサは安くできるが、システムとして作り上げることは大変になるとコメントがあった。これに対して堀委員からPICマイコンなどこちらで作ったものが入っている。研究者が自ら全部作るので安くなる。本当に必要なのはネットワーク技術、センサ技術、被害度判定技術で最後の一つが残っている。外注すると高くなると説明があった。小鹿委員から被害度判定はサブプロAでもやっている。固有周期の変化だけでは判定は難しいので、連携して検討していきたいとコメントがあった。

・武村委員長から、サブプロBとはどのような連携をしているかという質問があった。これに対して堀委員からは、火災被害の可視化を地震被害の可視化のようにスケールを変えたり3次元にしたりということを我々のシステムでできるようにすると回答があった。続けて武村委員長から、延焼のデータをサブプロBからもらうのかという質問があった。これに対して堀委員から、 延焼シミュレーションの結果をもらって可視化をする。火災の時系列データがあれば、我々のシミュレーションに入力するだけで可視化できるようにするという回答があった。木村(玲)委員から、消防研究所が開発してきたシミュレーションの式やデータを入れるとコメントがあった。武村委員長から、経験則が入っているのか。それは関東大震災のデータで決まっているのではないか。延焼速度などは新しいデータがあるのかという質問があった。これに対して木村(玲)委員から消防研究所の中で微調整はしているのではないか。火災シミュレーションの分野では幅広く使われているという回答があった。堀委員から、ビル内の火災は物理的な現象を示すので、シミュレーションの結果をもらえれば検証できると回答があった。武村委員長から、火災の延焼は壊れている建物と壊れていない建物でどちらが延焼しやすいのかは研究者によって見解が違う。また、地震の時の延焼のしやすさは違うとコメントがあった。堀委員からは、ビル内の火災のシミュレーションを行うには京のようなスーパーコンピューターが必要である。延焼が出るかはわからないが、火災現象は物理法則にしたがうので、スーパーコンピューターで行っているものを簡略化してシミュレーションを行いたいと回答があった。

1. 南関東の地震像の解明(a,b, c, d)

・酒井委員から資料【都28-1-5】に基づき、「a. 首都圏での地震発生過程の解明(首都圏下の新しい構造モデル)」について説明があった。

・武村委員長から、最近の地震活動が減ってきているが元の状態に戻らないのは、東北地方太平洋沖地震の前の地震活動が通常より少なかったからではないかという質問があった。酒井委員、そうなのかもしれない。東北の地震直後の減衰速度に従えば、3年程度で元に戻ると思われたが、実際には下がりきらず、以前の地震活動度より高い状態が継続していると回答があった。

・武村委員長から、東伊豆(半島)はなぜ隆起しているのかと質問があった。本多委員より、過去の大地震が原因のひとつかもしれないと回答があった。さらに武村委員長は、駿河トラフの巨大地震では、伊豆は動かないか、沈降するかのどちらかであると思われるのに、東伊豆が隆起するのはなぜだろうかと質問があった。笠原委員より、地下へのマグマの貫入によって隆起しているという説が多かったとコメントがあった。続けて武村委員長より伊豆半島の根元の逆断層運動は関係ないのかと質問があった。本多委員より、逆断層面は熱海より北にある。最近の地震を調べると逆断層型で、プレートの沈み込みを解消するようなメカニズムも考えた方がよい。低角の断層面であるので、このあたりで発生する直下型地震の候補として考えておかないといけないと回答があった。

・武村委員長より、SP変換波はフィリピン海プレートの上部で生じているのかという質問があった。これに対し、木村(尚)委員より、フィリピン海プレートの上面での変換波ということで、その走時差を説明できると回答があった。さらに武村委員長より、この変換波で従来言われていたフィリピン海プレートの深さが変わるのかという質問があった。これに対し、木村(尚)委員より、前回のプロジェクトで決めた境界面の深さの精度を上げることができると回答があった。

・田中オブザーバーよりMeSO-net観測網は重要だという認識を持っているというコメントがあった。武村委員長より、観測を10年継続できたことは貴重な記録になり、これからもっと成果が出るのではないかとコメントがあった。松室室長より、新しい要素を取り入れながらMeSO-net観測網を継続していきたいとコメントがあった。

・佐藤委員から資料【都28-1-6】に基づき、「b. プレート構造・変形過程と地震発生過程の解明(東北地方太平洋沖地震後の関東の地殻活動変化)」について説明があった。

・武村委員長から、広域応力場が関東地方で広がっているのはどのような影響で起きているのかと質問があった。佐藤委員より、粘弾性の領域が粘性緩和を起こして深部から広がってくるという回答があった。武村委員長から、茨城県でも東北地方と同じように応力場が広がるのではないか。プレートの構造によるものかという質問があった。佐藤委員より、フィリピン海プレートの構造を入れているから、パターンが乱れているのではないかという回答があった。また、平田委員からは、茨城沖では余効すべりが起きているというコメントがあった。武村委員長から、フィリピン海プレートが入っている影響ではないかというコメントがあった。佐藤委員から、フィリピン海プレートのスラブの深度が100kmであると地殻変動との合いがいいと回答があった。

・水藤委員から、この広域応力場は不思議に思っている。余効すべりが東北や茨城で大きいのはよい。粘性緩和の影響が、宮城で大きいのは応力変化が大きいはずだが、岩手県で40年後大きくなっているのは理解できないとコメントがあった。佐藤委員からは、計算結果を確認したいと回答があった。

・武村委員長から、富士山の下のメガスラストは、フィリピン海プレートの動きからして駿河トラフと同じセンスのようなものかという質問があった。これに対して佐藤委員は、その通りである。富士山に断層があっても地表では見えない。例えば、岩手宮城内陸地震は火山の周辺で発生した。そこで調査をしたら富士山でも断層が存在する可能性が出てきた。この地域は、ヒートフロー(地殻熱流量)が熱い、スラブがあるが沈み込める場所がない、地震活動が起きるところである、などの特徴がある。伊豆の丹那断層では前弧と背弧を分けている。相対的に強度が弱いのでプレートテクトニクスが単純に適用できる地域ではなく、プレートがいわば壊れているところである。この地域は複雑で断層を分配させながら地震を起こしてきたところで、いまだによくわかっていないと回答があった。

・加藤オブザーバーから、フィリピン海スラブからの反射波について、観測された波形トレースを見ると反射波は遠くなると直達波との走時差が徐々に短くなることが予想されるが、ここではあまり変化が見られない。本当に反射波なのかという質問があった。佐藤委員から、フィリピン海スラブ内のモホ面で反射していると回答があった。武村委員長からは、どこの地震を使っているのかという質問があった。佐藤委員からは、浅い地震で深さ41kmのものを使っているという回答があった。加藤オブザーバーから、変換波ではないかと質問があった。平田委員から、太平洋プレートからの反射ではないかとコメントがあった。加藤オブザーバーから、理論ではフィリピン海プレートと書いてあり反射波となっているが、観測データと整合的なのかどうか、再度検討してほしいとコメントがあった。

・石川委員から資料【都28-1-6(2)】に基づき、「b. プレート構造・変形過程と地震発生過程の解明(b2. 関東下の構成岩石モデルの構築)」について説明があった。

・加藤オブザーバーから、リザルダイトだけを考えてアンチゴライトを考えなかった理由はなにかと質問があった。これに対し、石川委員から、アンチゴライトの条件がなかったので積極的に考えていない。領域としてみえるのではなく線状に中間の値を通るので見えなかったので今回は示していないという回答があった。

・佐竹委員ならびに中村オブザーバーから資料【都28-1-7】に基づき、「c. 首都圏での中小地震と大地震の発生過程の関係の解明」について説明があった。

・笠原委員から、P-S時間が5秒以上ということからフィリピン海プレート上面の可能性はなくなると思う。萩原先生はかなり深いという話をされているがどうなのか、という質問があった。これに対し中村オブザーバーから、萩原先生は100kmと深さを推定されているが、震度分布の広がり方から、そこまで深くはないと思われる、という回答があった。武村委員長から、今はフィリピン海プレート上面や関東地震のプレート境界では地震はほとんどない、とコメントがあった。笠原委員より、東京湾北部でメカニズムが同じくらいのものが10年に一度は発生している、とコメントがあった。佐竹委員から、震源が深いことと、江戸に集中していることはなかなか両立しないので、被害を集中させるためには、上向きの断層破壊が考えられる。推測であるが、深いとするとフィリピン海プレート上面はなく、そういう意味ではフィリピン海プレート内部と考えられるのではないか、とコメントがあった。武村委員長から、極端に深くなく浅くない地震であればいいのではないか。関東はプレートが複雑なため色々なところの可能性があるので、深さを決めるのは難しいと思う、とコメントがあった。

・渡辺オブザーバーより、安政江戸地震の震度分布が江戸に集中しているようだが、地盤の影響があるのではないかとの質問があった。これに対し中村オブザーバーは、J-SHISの増幅率で補正をして基盤に戻しても、江戸で震度が大きいということがわかる、と回答があった。武村委員長より、MeSO-netの観測記録の経験的な増幅のようなものをうまく使えないのか。被害の大きいところの増幅は理論計算で合わないので経験則を作るのがいいのではないか。例えば、東京湾東部では泥が多く堆積しているため増幅しやすい場所であるから、そこだけ大きくなる可能性がある。それがJ-SHISで見えていないかもしれない、という検討を一方でやったほうがいいのではないか、とコメントがあった。中村オブザーバーから、前回の運営委員会で、酒井委員がMeSO-netのデータを使ってマグニチュードと震度のスケーリングを検討されていたが、その方法で観測記録だけから震度の揺れやすさが検討できる可能性がある、とコメントがあった。渡辺オブザーバーより、そういうことであれば震央がここでなくてもいいのではないか、とコメントがあった。笠原委員より、安政江戸地震についてできることが狭まってきており、最終の答えに近づいているのはたしかであるから、他に手掛かりがなければ、あとは観測から理解するという形がいいと思う、とコメントがあった。

・武村委員長から、九十九里に関する古文書からはっきりとした浸水域は検討できないのか、という質問があった。これに対して、佐竹委員から、現地の慰霊碑が浸水限界を示していると考えてシミュレーションを行った例はあり、犠牲者の数等の記録はある、と回答があった。武村委員長より、岡集落までは津波は到達しておらず、今回は元禄津波の痕跡は発見されなかったということか、という質問があった。これに対し、佐竹委員から、そうであると答えがあった。

・鶴岡委員から資料【都28-1-8】に基づき、「d.首都圏の過去の地震活動に基づく地震活動予測手法の確立」について説明があった。

・武村委員長から、東北地方太平洋沖地震を含むとあるが、いつからいつまでの期間をテストしているのか、また5回やって結果は変わらないのか、という質問があった。これに対し、鶴岡委員は、何回もテストしており、実際には学習期間をパラメータとして用いて、特定の期間にいくつ発生するかをテストしている。学習期間は3つのケースを用意しており、テスト結果は5回実施して少しずつ変わってくる、と回答があった。

・武村委員長から、学習期間に依存するということは今後を予測する際に、いつから学習したらいいのかはわからないのではないか、という質問があった。これに対し、鶴岡委員から、事後的に最適な期間や下限のマグニチュードがわかる。事後予測では、実験を多数重ねて、予測期間が終わったら最適期間がよりわかるようになり、事前予測というのは、平均的にパフォーマンスが出せる最適な学習期間とマグニチュードが設定できる、と回答があった。

・武村委員長から、今までの地震活動が起こるという仮定の下で予測する場合、例えば明日東北地方太平洋沖地震が発生したら全然合わなくなると思うが、なぜ東北地方太平洋沖地震を挟むのか、という質問があった。これに対し、鶴岡委員から、予測する期間によって予測の性能が変わる。東北地方太平洋沖地震の直後の活動は、際は東北地方太平洋沖地震後のデータだけから予測した方が良く、東北地方太平洋沖地震から時間が経過すると、東北地方太平洋沖地震以前の地震活動も含めないと予測がうまくいかないという結果が出ている、と回答があった。平田委員から、東北地方太平洋沖地震を境に地震活動の活発な場所も変化している、とコメントがあった。武村委員長から、東北地方太平洋沖地震直後の大森公式に当てはまるところで成績が良いということがわかる、とコメントがあった。

・武村委員長より、一番いい学習期間はどの期間か、と質問があった。これに対し、平田委員から、学習期間はモデルの一種であり、今うまくいっているモデルが今後もうまくとは限らない。著しく条件が変化すると、うまくいかないこともある、とコメントがあった。加藤オブザーバーより、どこまで過去に遡るかということであり、今後も続けて発生するという仮定の下に東北地方太平洋沖地震のようなこれまでの地震発生パターンを大きく変える地震が発生すると予測のパフォーマンスが落ちる、とコメントがあった。鶴岡委員から、Hi-netの観測網で地震カタログがあればいいが、過去に遡るとコンプリートネスマグニチュード(一様に検知できるマグニチュードの下限)が上がるということは制限になっているが、大きな地震の予測では、宇津カタログを入れるとよくなるというように、データが多くなるとパフォーマンスが良くなる、とコメントがあった。

・加藤オブザーバーから、東北地方太平洋沖地震があるにしろ長期間遡ればうまくいくのか、という質問があった。これに対し、鶴岡委員から3か月モデルでマグニチュード4以上あるので、もう少し長期間でマグニチュード7以上をみていくといい、と回答があった。平田委員から、古すぎると関東地震の余震の影響が出てくる。ETASモデルでも試しており、尾形先生は古いほどうまくいくとおっしゃっている。データの均質性は古くなると低くなる。今のところこの組み合わせ(学習期間と予測する地震のマグニチュードの範囲)で良いモデルを推測できるということだ、とコメントがあった。鶴岡委員から、事後予測したものをみると情報利得が3〜4の間で得られるので、そのパフォーマンスであればよいモデルが出来たと言える、と回答があった。

3.サブプロジェクト@の管理・運営

・平田委員から資料【都28-1-10】に基づき、サブプロジェクト@の管理・運営について説明があった。

4.統括委員会によるプロジェクト全体の運営

・平田委員から資料【都28-1-11】に基づき、統括委員会によるプロジェクト全体の運営について説明があった

5.サブプロジェクト間の連携について

・酒井委員から資料【都28-1-12】に基づき、サブプロジェクト間の連携について説明があった。

〔その他〕

・最終成果の取りまとめに向けて

・渋谷オブザーバーから資料【都28-1-13】に基づき、最終成果の取りまとめについて説明があった。

・総評

・小林委員から、今回、熊本地震もあったが、行政としてマスコミに問い合わせを受けることもある。今日の予測モデルなどヒントになるものがあるのではないか。また、プロジェクトの最終年度を迎えて、本プロジェクトの成果を、都市の強靱化における住宅の耐震性の向上等のために建築関係等の業界の方や一般の方に対しフィードバックしていく方法を考えていくべきである。最後に、行政として、救助活動をどうするかということに関して、インフラ被害など、どこに被害が集中しそうなのか等の情報を事前に把握していくための想定ができるようにしてほしい。具体的に文部科学省と内閣府が連携し、地元の自治体がヒントを得られるようにしてほしい、とコメントがあった。

・笠原委員から、5か年の最後の年にふさわしい内容の発表であった。特に、工学の可視化は頼もしい。また、安政江戸地震についても、ある意味収斂すべきところまできている。その他、観測等も引き続きやってほしい、とコメントがあった。

・中村委員より、毎回参加しているが多岐にわたるテーマである。最終年度ということで、このプロジェクトの成果のまとめに際してお願いだが、それぞれのテーマで成果を出すという形にとどまらず、都市の災害を軽減するという目的のために、複数の異なるテーマが連携してひとつの成果を出すという形を見えるようにしてほしい。一般の方にもその方がプロジェクトとしての成果が見やすいと思う、とコメントがあった。

・水藤委員より、成果は上がっているが、その成果の裏に隠された問題点や課題を次回の運営委員会で聞かせていただきたい、とコメントがあった。

・庄司委員より、東京の地震リスクマネージメントにつなげて成果を示してほしい。発表の中では、わかっていること、わかっていないことを明確にして話してほしい、とコメントがあった。

・木村委員より、異分野間の連携は重要である。サブプロ間連携に関しても光明がみえてきた。ビッグデータなどを睨みながら災害減災に生かしていくということで、連携していってほしい、とコメントがあった。

・武村委員長より、水藤委員と同様に思う。どこまでわかって、どこがわからないか、ということを次回の運営委員会で明確にしてほしいと思う。科学技術はバラ色でなく限界はある。科学者は期待されると、分かったつもりになりがちだが、わかっていることとわかっていないことを明確にした方がいい。また、どのように防災に役立っていくのかということを、それぞれの立場で連携する立場をとり、一般の方にわかりやすく説明するという視点も含め、世の中に役立つということを意識するべきである。3月のシンポジウムでは、皆さんのご協力で最後にいい花を咲かせて世の中に役に立つ道筋をつけられたらいい、とコメントがあった。

・文部科学省松室室長より、興味深い研究成果であるが、各テーマ、サブテーマ間の連携がわかりにくかった。最終成果報告の際はそれを意識してほしい。小林委員の意見に関して、この成果をどうように防災・減災に生かしていくか、その点を今後も重視していきたいと思う、とコメントがあった。

〔閉会〕

・武村運営委員長から挨拶があり、閉会した。