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地震研究所談話会 第832回 (2005年10月)

長基線地球電場長期変動の再評価と海流効果補正の試み

海半球観測研究センター清水久芳・歌田久司

 地球磁場は地球中心核におけるダイナモ作用(電気伝導性を持った流体が磁場中を運動することによる発電作用)により生成・維持されていると考えられている。このような機構で磁場を維持するためには、地球中心核の内部に、トロイダル磁場と呼ばれる球面上に巻きついているような磁場成分が存在しなければならない。しかし、この成分を地表で磁場として観測することは原理的に不可能であり、トロイダル磁場の変動等を知るためには、磁場以外の観測量から推定する以外に方法はない。例えば、トロイダル磁場が中心核に存在することによりマントル内部には電場が生ずるので、この電場を検出・測定できれば、トロイダル磁場についての情報が得られる。地震研究所では、トロイダル磁場検出を一つの目的とした、数百〜数千キロメートルの海底ケーブルを用いた電場観測を西太平洋地域において行っている。これまでに得られたデータは、西太平洋地域において、ここ十年程度の間に低緯度側の電位が系統的に上昇していることを示している。このすべてが地球中心核に起源をもつものとすると、核−マントル境界におけるトロイダル磁場の変動量は数十年で100-1000nT程度となる。

 ここで問題となるのは、観測された電場変動のすべてが中心核起源か否かということである。近年、海流の変動によっても同様の大きさをもつ電場変動が生成されうることが判明した。トロイダル磁場の変動を知るためには海流効果を除去する必要があり、このための第一段階として、潮汐成分の海流と海底ケーブルで観測される電位差の関係を調査した。これによると、以前から知られている、両者を結ぶ単純な関係式では不十分であることが判明し、今後、海流による発電効果の詳細なモデリングが必要であることがわかった。

図1  地中心核にトロイダル磁場が存在することにより、マントルに電場が生じる。海底ケーブルを用いた電場観測により、この電場を検出する

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