4-9.        地球シミュレータによる大規模地震波動伝播・強震動シミュレーション

 

地球シミュレータ(JAMSTEC横浜研究所)は5120個のベクトルプロセッサを高速のクロスバーネットワークで結合した世界最速の並列計算機であり、その理論性能は40テラフロップスに達する。地球シミュレータの利用により、不均質な3次元地下構造と震源モデルを組み込んだ大規模な地震波動伝播のシミュレーションが可能になった。

 

4-9-1  南海トラフ巨大地震のシミュレーション

 

図1は並列FDMシミュレーションから求められた、1944年東南海地震(M8)と1946年南海地震(M8)の地震波動伝播のスナップショットであり、地表の揺れの大きさを示している。ここでは、潮岬を震源に南海・東南海地震が同時に発生し(断層破壊領域を図中に桜色で示す)、破壊が南海トラフに沿ってそれぞれ東西方向に進行すること想定している。スナップショットには、地動速度10cm/sを超える強震動が断層破壊方向に伝播していく様子が確認できる。このとき、西南日本の数百km以上の広い範囲にわたって震度5〜6以上の揺れが生じることが予想される。なお、本計算では西南日本の3次元地下構造を、0.62.4kmの間隔で2.6億格子にモデル化した。計算には64Gbyteのメモリと、地球シミュレータの128プロセッサを用いた並列計算で1時間を要した。

図1 南海トラフ想定地震の地震動のスナップショット(水平動速度成分)。

 

4-9-2  1993年釧路地震と異常震域のシミュレーション

 

図2に1993年釧路沖地震(M7.8)の震度分布を示す。この地震では、北海道から東北にかけての太平洋側では日本海側よりも震度が1〜2以上大きくなっている(異常震域)。異常震域は深いプレート地震時に必ず現れ、地震波の減衰の小さな(High-Q)プレートを地震波が伝わることが関係している。計算モデルに、東北日本弧のHigh-QプレートとLow-Qマントルウエッジを組み込み、2Hzまでの高周波地震動の伝播を評価した。32億格子モデルの本計算には386Gbyteのメモリと、地球シミュレータの1024プロセッサを用いた計算で2時間を要した。計算結果には、減衰の小さなプレートを通って遠方まで地震波がよく伝わる現象がよく再現されており、異常震域をよく再現することができた。

図2 (a) 1993年釧路沖地震の震度分布とその(b)計算結果。下図は計算に用いた地下構造モデルと波動伝播のスナップショット。

 

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