霧島噴火空振観測

火山の空振とは

概説

火山の活動に伴い、様々な振動が発生します。そのうち、地面の震動を「地震」、空気の振動を「空振」と呼んでいます。空振の中に、さらに、音波として伝わる縦波と、重力波として伝わる横波があります。空振の観測は、火山の表面現象(噴火や噴気など)を知るのに有効な手段です。火口活動が変化すると、空振の大きさや波形も変化することが経験的に知られていますが、具体的に何が起こっているかを特定する方法はまだ確立されていません。空振の発生メカニズムとしては以下のようなものが考えられています(他にもいろいろあります)。

縦波の空振は、音の一種ですから、耳で聞いてみるとどういうものか感じがつかめると思います。そのままでは、人間の耳では聞こえませんが、早回しで再生すると聞こえます。→ 霧島2011年噴火の音のページへ

火山観測で対象とされる空振の振幅と周期



注1:1気圧〜100000 Pa
注2:空振の波は距離と共に減衰します。今回1500Pa が観測された場所は、火口から1km 程度の距離で、図に掲載している事例よりも近い場所での観測値です。従って、掲載中の事例よりも大きな爆発、というわけではありません。また、冒頭に述べましたように、センサー応答特性の問題から、実際の振幅はもう少し小さかったと考えられます。

参考文献:
国立天文台編「理科年表」丸善株式会社
Valentein, G.A., 1998, Damage to structures by pyroclastic flows and surges, inferred from nuclear weapons effects, J. Volcanol. Geotherm. Res.,87,117-140.
(1)Taniguchi, H. and Suzuki-Kamata, K., 1993. Direct measurement of over pressure of a volcanic blast on the June 1991 eruption at Unzen Volcano, Japan. Geophys. Res. Lett., 20. 89-92.
(2)坂井・他,1996,桜島火山のC型微動に伴う超低周波音,火山,41,181-185.
(3)Garces et al., 1999, Infrasonic precursors to a Vulcanian eruption at Sakurajima Volcano,Japan, Geophys. Res. Lett., 26, 2537-2540.
(4)青山・他,2002,有珠山2000年噴火に伴う空振活動,火山,47,521-532.
(5)山里・他,2002,空振データから見た2000年有珠山の噴火活動,火山,47,255-262.
(6)Oshima, H. and Maekawa, T.,2001, Excitation process of infrasonic waves associated with Merapi-type pyroclastic flow as revealed by a new recording system, Geophys. Res. Lett.,28,1099-1102.
(7)Ripepe, M. and Marchetti, E.,2002, Array tracking of infrasonic sources at Stromboli volcano, Geophys. Res. Lett.,29,2076.
(8)Reed,J.R.,1987,ibid., 92,11979.
(9)横尾・前野・谷口,2005,浅間山2004年9月1日噴火の窓ガラス被害報告と爆発エネルギー推定,火山,50,195-201.
(10)Kanamori, H., Mori, J., and Harkrider, D.G., 1994, Excitation of atmospheric oscillations by volcanic eruptions,J. Geopys. Res.,99, 21,947-21,96.

爆発による被害のメカニズム



参考文献:
Valentein, G.A., 1998, Damage to structures by pyroclastic flows and surges, inferred from nuclear weapons effects, J. Volcanol. Geotherm. Res.,87,117-140.

爆発に伴う空振(Pa)と地震(m/s)の波形

新燃岳火口の北、約1km の観測点には、地震計と空振計を設置しています。空振計は、マイクロフォンの一種ですが、耳に聞こえない低い音を捉えることを目的としています。今回観測された爆発の音は、この空振計の測定範囲を超えているため、大きさや波形が正確でない可能性があります。現在、マイクロフォンの応答試験を実験室で行っています。以下のデータは、その不正確さをご理解の上、ご覧下さるようお願いします。

2011/1/28 12:48の爆発


2011/1/27 15:41の爆発


SMNMC-SU Cross Correlation Analyses 

浅間火口の観測点では地震動と空振のデータに、1-7 Hzのバンドパスフィルターをかけ、相互相関をとることにより、火口活動を検出してきた (手法の詳細は浅間のページへ).同じ解析手法を、霧島火山新燃北観測点の地震と空振データに適用した。火口活動の発生と変化の様子がよく分かる。

2011年1月26日夕方の噴火活動に伴うシグナル


地震は14:50位から強くなっているが、空振活動は15:30頃から始まっている。この間で、噴出状態に何らかの変化があったと考えられる。

2011年1月27日未明の噴火活動に伴うシグナル


3時過ぎに噴出形態が大きく変化したようである。

2011年1月19日〜の変遷

データが増え、ページが重くなって来ましたため、内部用ページのみに掲載とさせて頂きます。