"重力場の時空間変動からよみとる,火山活動の推移(3)

−ダイクの閉口−"

(重力測定グループ:大久保修平、古屋正人、孫文科,田中愛幸、渡辺秀文、及川純、前川徳光

文責:大久保 okubo@eri.u-tokyo.ac.jp)


下の図(左)は,2000年9月4日から10月20日にかけての,島内各地点での重力変化を表したものです.山頂部での観測は危険なため接近が許可されず,観測データがなくなったのが残念です.

島の北東部から南西に向かう軸を対称軸とした変動がはっきりと見えています.ちょうどバタフライ(蝶々)のように見えます.この変動パターンは2000年9月の時点でも見えていたものです.おそらく10月初旬まで続いていた地殻変動に相当するものだと思います.

図(右)はシート状のマグマが閉じている(ダイクが閉じる)というモデルから期待される重力変化です.

左の観測値と右のモデル計算値とが,良く一致していることから,三宅島の北東ー南西方向を軸にしたダイクの閉口が起こっていると推測されます.ちなみに三宅島がのっているフィリピン海プレートは北西に進んでいき,伊豆半島北端でユーラシアプレートと衝突します.したがって北東ー南西にのびる軸には直交する向き(北西−南東)に圧縮応力がはたらきます.このことからダイクが閉じる方向として自然な向きだと考えます.

8月半ばまではダイクに閉じこめられていたガスが,8月末以降放出されるようになりました.これがダイク中のガス圧の低下をもたらしたのでしょう.その結果,北東ー南西方向の圧縮応力に対抗する内部応力が徐々に弱まり,ダイクが閉じて行くのだと考えます.

 

モデルの説明;ダイクは長方形と仮定.上端位置を青の実線,下端位置を青の破線で示す.面の傾斜角は105度.水平方向の長さL, 深さ方向の幅W,

上端の深さTop,閉口量U