12.津波・高潮の研究

当部門で行っている津波・高潮の研究は, i)被害津波の事例研究, ii)津波検潮記録のデータ解析, iii)流体力学としての津波研究, iv)津波測定技術の改良と災害防止への応用研究, の4点に分類することができる. i) 被害津波の事例研究: 近年は1992年のニカラグア地震津波以来,環太平洋の各地で大規模な津波災害が立て続けに生じている. 1993年北海道南西沖地震津波, 1994年東Java地震津波, 1996年インドネシアIrian-Jaya地震津波, そして1998年パプアニューギニア津波である.その他に我が国で小規模な被害を伴った津波として1994年の北海道東方沖地震津波, 1995年奄美近海地震津波がある.当研究室はこのような被害を伴う津波が起きるたびに,他大学,および国外の研究機関と共同して直後の被災現地調査を行ってきた.その結果,熱帯地方の国々での津波の原因のうちのかなりの部分が,地震に伴う海底地変よりも地震に誘発された海底地滑りであることが判ってきた.また津波による海水速度と沿岸集落の家屋被災の関係が解明された. ii)津波記録のデータ解析: 我が国は約400カ所の検潮点をもっている.当研究室では,我が国で観測される津波が起きるたびに検潮記録を集積し,我が国内外の津波研究者に津波記録のコピーを配布してきた.これらのデータによって,地震の波源域と海底地盤変動の情報が解明できる.最近判明してきたこととして,本震による津波の発生後しばらくして2次的津波の発生が起きる現象があることが判ってきた.なお,当部門では日本気象協会との共同作業でこれまで集積してきた津波検潮記録のCD-ROM化を進めており,1999年中に世界中の津波研究者に提供する予定である. iii)流体力学としての津波研究: 過去の津波データの周波数解析から,津波に誘発されて湾内発生した固有振動について分析した結果,振動モードの中にほとんど誘発されないモード欠落があることが発見された.このような欠落モードは「海水交換係数」の小さいモードに限られることが立証された.日本海中部地震の津波(1983)のビデオ映像から浅い海域での波状段波の形成が観察された.この現象が流体力学の非線形項とエネルギー損失を考慮して数値的に再現できることが立証された.その他, 室内実験により, Mach Stemの形成過程を解明した.また,低気圧通過に伴うEdge波の励起を枕崎海岸で観察し,理論的裏付けを行った. iv)津波測定技術の改良と災害防止への応用研究: 津波測定技術の改良は主として宮城県江ノ島観測所を基地としておこなっている.遅れ常数の小さな津波記録を得るため従来の検潮儀式によるのではなく,超音波式,および電波式水位計を津波測定に応用しうることを実証した.それらを応用した三陸地方の沿岸町村の協力を得て津波監視ネットワークの構築を進行させている.