2.移動型強震観測機器の開発

強震計を用いた機動アレイ観測は余震や群発地震の観測に極めて重要である.最近では,通常の強震計も軽量小型になり移動用としても利用出来るようになったが,それでも電源確保や設置などに多くの難点を抱えている.我々は上の障害を軽減する目的で,科学研究費補助金により,共同研究として新しい強震計を開発した.ロガーの消費電力が100mAh以下が実現されており,サーボ型加速度センサーの消費電力30-100mAh(3成分)は,商用電源を考えない観測において大きな負担である.そのため,電力を必要としない過減衰の動コイル型加速度計を開発する事とした. 基本形状は月ペネトレータや火山ペネトレータに開発されたセンサーと同様であり,クランプを必要とせず,移動には極めて便利である.ペネトレーター用のセンサーと大きく異なる点は,磁気減衰器(アルミニューム,ネオジウム系希土類マグネットを使用)を用いて大きな減衰定数(25―30)を得て,加速度計として広い帯域(0.1―80Hz)をカバーしていることにある.さらに,強震アレイ観測を主目的としており,軽量であること,量産が可能であることにも重点が置かれた.振り子自体は速度に比例した動きをし,測定できる最大レベルは150cm/sである.また,増幅器を付加して微動の観測にも利用出来ることを経験している.