3. 性能基盤型設計法の開発

日米共同研究による都市地震災害の軽減の一課題として,1998年度より6年間の予定で共同研究が行われている.本研究では,構造物が果たすべき機能に応じて設計目標を明快に設定し,その目標を合理的に実現するための性能基盤型の設計法を開発する.性能基盤型設計法への移行により,設計者と施主が一義的ではない設計目標を選択すること,評価可能な構造性能を有する構造物を建設すること,が可能になる.ノースリッジ地震および兵庫県南部地震による建築構造物への被害により,構造物の機能あるいは修復可能性に明快に関連させることによって耐震性能を定量的に表現しうる性能基盤型の設計法の開発が望まれている.仕様規定を含む従来の設計法から性能基盤型設計法への移行には以下のように多くの利点がある.(1)設計者と施主が明快に表現された性能を共通の理解にもとづいて選択することを可能にする.(2)材料や工法の選択の自由度が増大するとともに新技術の開発を促進する.(3)性能基盤型の設計基準は透明性のある規定であり,したがって,しばしば非関税障壁とみなされる各国で異なる設計基準の差を小さくする基盤にもなりうる.さらに,(4)性能を評価または明示することは技術競争を促進し,市場原理に従って構造物の品質を向上させることに繋がる.本研究では,日米で共通の理解にもとづいて,性能基盤型設計法の性能評価基準および評価手法の確立に必要な技術的課題を解決するために,実験的研究および解析的研究を行う.研究成果は,過去の研究成果も含めて,実用的な設計法に直接応用可能な技術資料あるいは設計指針,評価手法として提示する.