5.兵庫県南部地震による強震動シミュレーション

1995年兵庫県南部地震とそれに伴う阪神・淡路大震災が地震学,特に強震動分野に与えた衝撃は大きく,詳細な震源過程の解明を行うとともに,主に数値シミュレーションの手法を用いて強震動を理論的に再現することに努力を払った.その結果,震源域強震動の特徴である,やや長周期(周期1秒〜数秒)で継続時間が短く,断層直交方向に大きく揺れるパルス的な震動は,断層破壊に伴う指向性(directivity)効果により生み出されたことが明らかになった.また,神戸側では震源断層である六甲断層系から海側に離れて,被害の大きかった地域が幅約2km,長さ25km以上にわたって細長く分布している.このいわゆる「震災の帯」を生み出すメカニズムを強震動分布の面から解析し,(a) 指向性効果による横ずれ断層直上の強震動域と市街地堆積層によるその増幅,(b) 堆積盆地(市街地)と六甲山の境界面における複数地震波の増幅的干渉,(c) 沿岸地域や人工島における人工地盤の非線型応答,の3点が主な要因であることが明らかにされた.また,強震観測室が実施した神戸市西部地区での余震記録の解析的再現をおこない,盆地端部からの回折波と盆地へ垂直入射するS波との増幅的干渉が確認され,西部地区においても,本震時に形成された「震災の帯」の原因の一つとして指摘された.