8.地震動特性と非線形地震応答変形の関係

地震動の単位時間当たりのエネルギー入力と構造物の吸収可能なエネルギーの釣合いに着目して最大塑性応答変形を推定するために,(a)線形応答の減衰依存性,(b)非線形系での瞬間入力エネルギーの特性,(c)エネルギー入力特性にもとづく等価線形化法,を示した.継続時間と構造物周期の関係により異なる減衰系速度応答スペクトルの総エネルギー入力スペクトルに対する低減率の期待値を,地震の位相角特性に着目して,位相角差分布を正規分布と仮定することによって確率的に定式化した.この期待値は実地震動の応答スペクトルの低減率と対応すること,また,ホワイトノイズの減衰依存性の期待値を用いても等価な継続時間を定義することにより簡略な定式化が可能であることを示した.吸収エネルギーと最大応答塑性変位は地震動によらず復元力特性に応じて特定可能な一定の関係にあり,瞬間エネルギーと吸収エネルギーとの釣合いにより最大応答変形が決まる.瞬間エネルギースペクトルは,総エネルギー入力よりむしろ総エネルギーを継続時間で除した平均エネルギーと対応しており,速度換算値で約2倍程度である.以上にもとづいてエネルギー入力特性をモデル化して,最大応答時の半サイクル前の振幅に対する比率として定義された最大応答時振幅比を地震動の継続時間と構造物周期により表現した.最大応答時振幅比を考慮して,等価周期と等価粘性減衰定数を合理的に等価線形化法を修正して最大塑性応答変位を推定する手法を示した.以上が実地震動に適用可能であることを示すとともに,兵庫県南部地震による地震動の応答推定値と鉄筋コンクリート造建築構造物の被害との対応関係を吟味した.また,多自由度構造物の減衰分布と応答変形分布の関係を検討した.