ガラス中の含水量


クレーターBで採取された礫(サイズ7mm角)には、石基部分にほとんど微結晶を含まない清澄なガラスが保持されていた。この試料を両面研磨し、FTIR(透過)で3550cm-1(OH伸縮)の波数において含水量の測定を行った。

FTIRチャートの一例

含水量は測定点(サイズ55x55μグリッド)によって大きくばらつくが、0.20wt%から0.30wt%の範囲にはいる(含水量計算では密度を2.75g/cm3、モル吸光係数を6.1 m3/mol mとした)。 図中で比較しているように、斜長石の存在は-OH基伸縮振動の赤外吸収には影響を与えない(赤線:1940年噴出物中の斜長石)。したがって、石基の微斜長石の影響を受けている場合には、ガラス中を赤外光が通過する距離が減る分だけ、吸収量は低下することになる。こうした場合、真の含水量はこれより若干高くなる。いずれにせよ、透過顕微鏡で観察した限りでは、石基ガラス部分には斜長石微結晶はほとんどなく、この影響は小さいと思われる。

マグマの温度を1100度Cとした場合、水深80mから2000mの圧力におけるマグマ中への水の溶解度は0.2wt%〜0.3wtと計算される(Moore et al. 1998)。試料が水深80mで採取されたことを合わせて考えると、試料の含水量は試料が海中噴出物であることを支持している。



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