三宅島2000年噴火:噴出物の化学組成について、続報

2000年秋季火山学会発表(9/13)の一部に加筆修正したものです。

1. 要旨

(1)6/27の三宅島西方海域変色水イベントにおいて、海底へのマグマ噴出が確認された。
(2)8/18山頂噴出物はそれまでの三宅島2000年噴火イベントで得られているどの組成とも異なる。


6/27海底噴出物の全岩化学組成は三宅島1983 年の噴出物と類似しており、1983年噴出マグマの供給源に由来すると考えられる。一方、8/18 噴出物は海底噴出物とは異なる起源をもつ。斜長石の濃集や結晶化などによって海底噴出マグマから8/18 火山礫を作ることは不可能である。また、8/18以前の山頂噴出物は、スコリア片中に含まれる微結晶の組成が8/18噴出物とは明らかに異なり、8/18噴出物とはやはり異なる起源をもつと考えられる。

8/18噴出物と歴史時代の噴出物とを比較すると、1983年マグマよりももっとMgO の高い未分化なマグマ、例えば1712 年のような高MgOマグマに15%程度の斜長石を加えると、8/18 礫の組成とほぼ一致する。

このことから、8/18噴出物は、未知のマグマ溜りの上部の斜長石濃集領域に由来したものと考えることもできる。8/18噴出物については高温か低温かの議論もあるが、仮に噴出時に高温であったとするならば、もともと山体下に存在していたマグマ溜りに由来するか、あるいは、6月下旬に活動した1983タイプのマグマを押し退けて新たに上昇したマグマに由来したと考えることができよう。両者のいずれに由来するのかを、現段階(9/11までの噴出物観察)で判別することはできない。噴出物の組成の今後の推移を見守る必要がある。


2. 6/27海底噴出物について

6/27 の貫入イベントによって形成されたと考えられる理由

岩石の記載と反射電子線像

ガラス中の含水量

斜長石斑晶中のガラス包有物の硫黄/塩素量

構成鉱物の組成


3. 8/18山頂噴出物について

岩石の記載と顕微鏡写真、反射電子線像

鉱物組成の比較


4. 三宅島の過去の噴出物との比較

全岩化学組成で比較する6/27噴出物と8/18噴出物


東京大学地震研究所 マグマ研究グループ(マグマラボ&マグプロ)

(文責 安田 敦)

(Oct-13-2000)