鉱物組成の比較


8/18以前の噴出物の概要

8/18より以前の山頂噴出物は、古い噴火イベントに由来することが確実な非発泡片(変質岩片や溶岩のかけらetc)が多い。発泡片が最大頻度であった7/14-15の噴火の場合でも非発泡片が5割強(サイズ0.5mm以上)を占めていた。8/10は噴煙高度が3km以上にのぼった噴火であったが、噴出物中に占める発泡片の割合は低く、0.5mm以上の火山灰の場合は5%以下、0.18mm〜0.25mmのサイズにおいても10%以下である。これらの発泡片も同一の特徴をもつものでななく、複数の起源をもつと考えられるものであった。
発泡片に限っていえば、微斑晶として斜長石、輝石、磁鉄鉱をもつものが多く、石基の微結晶としても同一の組み合わせの場合が多かった。まれに集斑として含まれる場合を除くと、オリビンの微斑晶を持つ例はまれである。

これに対して、8/18の噴出物は、前述のように微斑晶としては斜長石、普通輝石、オリビンをもち、磁鉄鉱をもつことは稀である。石基の微結晶としては斜長石、輝石、磁鉄鉱をもつ。外見から判断すれば8/18噴出物はそれ以前の山頂噴出物とは異なるように思われる。

斑晶組み合わせや組織などの外見上の特徴だけで噴出物の起源を議論するのは危険なので、次に構成鉱物の組成について見てみよう。

鉱物の組成分析においては新鮮な石基を有する発泡片の分析値を示している。


斜長石の組成

右側のやや点がまとまった部分はコアの組成。コアの組成については噴出物間での差違は見られない。

リムとマトリックス組成部分だけを拡大。
8/18 噴出物は他の噴出物よりもやや高いAn#を持つ。

8/18 噴出物内では火山弾、火山礫、火山灰間で組成の違いは見られない。


輝石の組成

8/18 噴出物はもっとも高いMg#を持つ。また、他の噴出物では急冷によると思われるCa量の大きな変動が顕著だが、8/18 噴出物にはそれがあまり見られない。


オリビンの組成

8/18より前の噴出物にはオリビンがまれなため比較できるデータ数が少ないが、8/18 噴出物は他よりも高いMg#、低いMnO量を持つといえよう。


磁鉄鉱の組成

8/18 噴出物は測定可能なサイズの磁鉄鉱が少ない。比較的均質な組成を持っていた斜長石、輝石、オリビンと異なり、磁鉄鉱の組成巾は広く、成長中あるいは分解中である可能性がある。Al2O3が4%程度の領域にのみ着目すると、Tiの含有量から海中噴出物、7 月噴出物、8/18 噴出物は異なる分布範囲を持っている。


鉱物組成のまとめ

以上、比較検討を行った結果、8/18噴出物はそれ以前の山頂噴出物とは異なる鉱物組成をもつ。斑晶(微斑晶)組み合わせや組織などの外見上の特徴の差違ともあわせると、8/18噴出物がそれ以前の山頂噴出物や6/27に海底に噴出した本質物質とは起源を異にすることは明らかである。

それではこの8/18噴出物はどんなマグマに由来するのだろうか、次に、全岩組成から検討してみよう。


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