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学術プログラムの概要
火山都市国際会議で企画する学術プログラムは、大きく3つの分野からなります。
- シンポジウム1(火山を知る)は火山噴火現象、その予知や情報、災害などに関する研究の最新の成果を議論するもので、様々な分野の科学者が参加します。
- シンポジウム2(火山と都市)は噴火時の危機管理、火山災害が生活や社会基盤に与える影響評価、災害軽減のための対策、土地利用計画などを議論するもので、科学者に加えて、防災、行政、報道などの関係者が参加します。
- シンポジウム3(火山とともに生きる)では火山災害の軽減を計るために重要な教育・広報活動、種々の分野間の連携、過去の災害・復興体験の伝承などを議論するもので、住民も含めた様々な分野の人々が参加します。
発表は、B会場〜D会場で行われるスクリーンを使った口頭発表と、ポスターによる発表が予定されています。B会場(シンポジウム1)およびポスター発表を除き、同時通訳が用意されます。発表には個人参加登録が必要です。
シンポジウム 1 火山を知る
(コンビーナ名の横の*印はリーダー, **はサブリーダーです)
1-1 最近の火山研究の進歩
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コンビーナ |
星住英夫(産業技術総合研究所)、Major, J.(米:地質調査所)*、三宅康幸(信州大学理学部)、Neri, A.(伊:国立地球物理学火山学研究所)、宝田晋治(産業技術総合研究所)** |
キーワード:基礎研究・噴火メカニズム・火山の構造と発達史・火山噴出物・火山危険度評価
人々が火山に近い地域にまで住むようになり、また世界の空の交通がますます過密化するにつれて、火山噴火は私たちの生活と社会基盤(インフラ)に重大な脅威を与えるようになってきています。この脅威を抑えるためには、噴火現象を正確でより定量的に把握する必要があります。この分科会では、過去の火山噴火やその噴火に至る過程のメカニズムを明らかにし、様々な規模の噴火現象を確認・評価するのに役立つ研究成果を取り上げます。
1-2 火山噴火予知と火山警報
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コンビーナ |
Ewert, J.(米:地質調査所)*、藤田英輔(防災科学技術研究所)**、Garces, M.(米:ハワイ大学)、石原和弘(京都大学防災研究所)、Martini, M.(伊:国立地球物理学火山学研究所)、Newhall, C.(米:ワシントン大学)** |
キーワード:火山監視・火山噴火予測
火山噴火の予知や災害抑制の基礎となっているのは、観測調査による火山活動の監視です。噴火予測の分野では、地球物理学的、化学的、岩石学的および地質学的な研究の進歩により、どのようなシナリオで噴火が起こるのかが次第にわかるようになってきました。また、噴火検知と火山警報の発信においては、リモートセンシング技術をはじめ、他の地球物理学的・化学的手法も有効です。この分科会では最新の観測技術、特にリアルタイム観測やその解析手法に焦点をあてていきます。
1-3 活火山との共存による健康災害
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コンビーナ |
Baxter, P. (英・ケンブリッジ大学公衆衛生研究所)*、Horwell, C.(英・ブリストル大学)**、石峯康浩 (防災科学技術研究所)** |
キーワード:健康・医療対策,火山による大気・水質汚染
火山都市国際会議は、「火山と住民の共存」をテーマとする会議であり、「火山地域における健康災害」という比較的新しい研究分野を議論できるたいへん重要な機会です。この分科会では、火山活動による身体や精神への直接的な影響や、噴火から生き延びるためにどうするかの議論に加え、火山ガスによる大気・水質汚染、地球化学、医療地質学、また人間だけではなく動物の健康などの問題も幅広く取り上げます。
シンポジウム 2 火山と都市
(コンビーナ名の横の*印はリーダー, **はサブリーダーです)
2-1a 自然災害へどう対処するか:噴火の歴史と教訓から学ぶ
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コンビーナ |
Bailey, S. (米・ワシントン州ピアス郡緊急管理部)*、Gardner, C. (米・地質調査所)*、中橋徹也 (東京いのちのポータルサイト)、Solidum, R. (比・火山学地震学研究所)、山本哲也 (気象庁地震火山部)、山里 平 (気象研究所)**、横田 崇 (気象庁地震火山部) |
キーワード:緊急時の対応,火山警報の発令,避難計画,緊急時の報道機関の役割
火山によるリスクの軽減や噴火災害の対応にまつわる問題、たとえば緊急時の通報、情報伝達、避難、住民への教育などの問題は、全ての大規模な自然災害に共通しています。この分科会では、大規模自然災害を研究する科学者や、自治体などの防災関係者、報道機関が集まり、過去の実例や類似の災害事例を検討して、火山噴火の予知情報にどう備えるのか、あるいは実際に火山が噴火した時にどのように対応するのかについて議論します。
- 火山噴火警戒レベルの設定
- 住民に対する警報システムの構築
- 危機対応のための諸機関の関係や仕組みについて
- 警報を伝達する報道機関の役目
2-1b 長期的な火山災害とリスクの評価
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コンビーナ |
Connor, C.(米・南フロリダ大学)*、Sparks, S.(英・ブリストル大学)**、宇井忠英(環境防災総合政策研究機構)** |
キーワード:低頻度の噴火現象,新火口の形成や巨大噴火,火山活動と恒久的施設設置
私たちは、頻繁に繰り返し発生する中小規模の火山噴火現象に目を奪われがちです。しかし、発生頻度が非常に低くてもひとたび発生すれば、国内はもとより全地球的に大きな影響をおよぼすような破滅的巨大噴火の痕跡も存在します。そのため、数百年から数十万年に一度しか起きないような噴火現象にも注目しなければなりません。また、新たな火山が突然誕生した例もあります。このような地域にもし原子力発電所など重要施設があればさらに危険性は高まります。この分科会では、巨大噴火の発生と新たな火山の出現について、将来の火山活動および災害、リスクを科学的にどうとらえるかについて考えていきます。
2-2 火山活動の基幹施設への影響と効果的な「減災」対策
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コンビーナ |
安養寺信夫(砂防・地すべり技術センター)*、井村隆介(鹿児島大学理学部)、栗原淳一(土木研究所)、中村洋一(宇都宮大学教育学部)**、Neal, C.(米・地質調査所)**、Pierson, T.(米・地質調査所)、Zuccaro, G.(伊・ナポリ大学) |
キーワード:災害評価と予測地図,災害リスクの評価,砂防対策,費用対効果分析
火山活動は、建物、電力、水、交通、情報通信など、都市や地域社会におけるライフライン(生命線)に大きな影響を与えます。このような社会基盤施設への危険性を減らすための「減災」の方策には、ハザードマップの作成、危機管理、砂防対策、災害軽減や大規模避難計画の作成、対策の費用対効果分析など様々な手法が挙げられます。この分科会では、世界中の政府機関、公共団体、科学者、技術者、教育者などのみなさんが持つ「減災」の知恵・教訓を共有することを目標にしています。
2-3 火山のリスクを軽減する長期的土地利用
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コンビーナ |
Becker, J.(ニュージーランド:地質・核科学研究所)、Höskuldsson, Á.(アイスランド:アイスランド大学アスキャ校)、Johnston, D. (ニュージーランド:地質・核科学研究所)、木村拓郎 (社会安全研究所)、Saunders, W. (ニュージーランド:地質・核科学研究所)*、高橋和雄 (長崎大学工学部)**、田鍋敏也 (壮瞥町役場) |
キーワード:土地利用計画,火山災害に強い社会づくり,火山災害からの復興計画
火山噴火のリスクを効果的に減らすための方策として、土地利用計画の活用をあげることができます。雲仙・普賢岳災害における安中三角地帯の嵩上げ事業は、世界に誇れる土地利用の例と言えます。この分科会では、1)災害に柔軟に対応でき、かつ持続可能な地域社会を作り上げる際、土地利用計画がどのように役立つかを紹介し、2)火山災害にかかる土地利用計画を、異なる法律を持つ国の間に設定するには何が必要かを考え、3)火山災害に対して効果的な土地利用の例にはどのようなものがあるかを世界中の関係者と議論していきます。
シンポジウム 3 火山と共に生きる
(コンビーナ名の横の*印はリーダー, **はサブリーダーです)
3-1 火山災害のリスク軽減に向けての科学者、行政、報道、住民の連携
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コンビーナ |
Clavero, J.(チリ・国立地質鉱業調査所)、Leonard, G.(ニュージーランド:地質・核科学研究所)*、中川和之(時事通信社)、岡田 弘(環境防災総合政策研究機構)**、所澤新一郎(共同通信社)、Thompson, D.(WHO世界保健機構)、槌田禎子(テレビ長崎)* |
キーワード:分野や立場を超えた連携と協力,危機情報の交換と共有
火山災害の軽減には科学者、行政、報道機関、住民の連携が不可欠です。また地域コミュニティ、ボランティアの協調と相互支援も重要です。雲仙・普賢岳噴火災害では、これらの連携不足やコミュニケーション不足により44名の犠牲者が出てしまいました。しかし、2000年の北海道・有珠山噴火では、雲仙岳災害での反省のもとに噴火の5年前から進められてきた四者間の連携が強力に機能し、1人の死者も出しませんでした。この分科会では、世界の火山災害を軽減するために必要な連携のほか、最近盛んになっているインターネット上での火山情報の公開・流通の役割についても議論します。
3-2 教育と広報活動:火山に対する地域社会の自覚を高めるには
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コンビーナ |
Driedger, C. (米:地質調査所)*、林信太郎 (秋田大学教育文化学部)**、池辺伸一郎(阿蘇火山博物館)、伊藤英之 (国土技術政策総合研究所)、Ronan, K. (豪:セントラルクイーンズランド大学)、Woodcock, J. (米:ワシントン州ピアス郡役所) |
キーワード:火山教育,火山災害リスクの啓発活動
観光需要の増大によって、世界の火山地域に多くの人々が訪れ、また火山博物館などの教育・広報施設が多数建設されるようになりました。この流れは、火山学者や行政にとってはより効果的な火山災害対策への理解と普及をもたらすものであり、同時に難しい課題へのチャレンジでもあります。この分科会では、教育や広報活動を通して、情報伝達や火山災害のリスク認識を高めるためにはどうしたらよいかを考えます。
3-3 地域社会と火山活動:考古学、伝承そして復興
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コンビーナ |
Blong, R. (豪:ベンフィールド・オーストラリア)、Cronin, S. (ニュージランド:メッシー大学)**、北原糸子(神奈川大学大学院歴史民俗資料学研究科)*、三松三朗(三松正夫記念館)、中田節也(東京大学地震研究所)、中村 功(東洋大学社会学部)、Rosi, M. (伊:ピサ大学) |
キーワード:火山噴火の歴史災害,過去の火山災害からの復興と伝承
地域社会が過去の火山噴火にどうやって適応したか、あるいはそこからどう復興したかを議論することは、世界的にはこれまでほとんどありませんでした。 火山にまつわる言い伝えや古文書は、黙示録的なものから儀式の延長上のものまで様々です。それらの言い伝えは地域社会の復興を伝えるものなのか、火山の影響について信頼できる記録なのか、それとも火山災害の軽減に本当に役立つものなのか検証することは大切です。島原でも約200年前の普賢岳噴火や眉山崩壊の古文書が数多く残されていますが、それらを現代の火山噴火危機の際にどのように生かせばよいでしょうか。この分科会では、世界の噴火災害からの復興、考古学的証拠からみた噴火と人間とのかかわり、社会科学や個々の心理学に関する研究も発表されます。
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