金曜日セミナー 2011 年度の予定/記録

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2011 年度の講演者・講演タイトル一覧

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日付
Date
講演者・所属
Presenter/Affiliation
講演タイトル
Presentation title
5/13
佐竹健治
地震火山情報センター
世界の沈み込み帯における超巨大地震
6/03
三宅弘恵
災害科学系研究部門
2011年東北地方太平洋沖地震の多様な震源インバージョン結果:Overview
6/10
前田拓人
東京大学 大学院情報学環 総合防災情報研究センター 特任助教(東京大学 地震研究所 災害科学系研究部門 外来研究員)
海底ケーブル津波記録と大規模数値シミュレーションから見る2011年東北地方太平洋沖地震
6/24
鈴木雄治郎
数理系研究部門
火山現象の数値実験(これまでの研究概要と今後の抱負)
7/1
三浦哲
地震火山噴火予知研究推進センター
測地観測から見た東北地方太平洋沖地震
7/8
瀬野徹三
東京大学地震研究所数理系研究部門
プレート学から巨大地震はどう理解されるか?
7/13
齊藤昭則
京都大学大学院理学研究科
2011年東北地方太平洋沖地震後に生じた電離圏変動
7/15
井出哲
東京大学大学院理学系研究科
東北沖地震の震源像が意味すること
9/2
田中聖三
災害科学系研究部門
ハリケーンによる高潮被害予測シミュレーションの高効率化
9/9
加藤尚之
地震火山噴火予知研究推進センター
アスペリティ,摩擦構成則,地震の複雑さ
9/16
Dr. Jessica Murray-Moraleda
U.S. Geological Survey, Menlo Park
Applications of GPS data for improving seismic hazard assessment and transient deformation detection
9/30
堀高峰
海洋研究開発機構 地震津波・防災研究プロジェクト
海溝付近での大きなすべりの発生メカニズム
10/7
Emily Brodsky
Associate Professor of Geophysics, Dept. of Earth and Planetary Sciences, UC Santa Cruz
Earthquakes Triggered by Seismic Waves
10/28
Prof. Solomatov
Washington University
Variations of mineral grain size in the Earth's mantle: Implications for mantle dynamics and seismology
11/11
遠田晋次
京都大学防災研究所 地震予知研究センター
震源核群の構成と誘発作用 ー東北地方太平洋沖地震からの考察ー
11/25
内田直希
東北大学大学院理学研究科 地震・噴火予知研究観測センター
繰り返し地震解析による東北地方太平洋沖地震前後のプレート境界すべりの時空間変化
1/13
石山達也、加藤照之
地震研究所地震予知研究センター
東北地方太平洋沖沿岸の上下変動に関する一考察
1/27
中谷正生
地球計測系研究部門
大ぺのなかの小ぺ ー preslipによる短期予知のfeasibility に対する示唆
2/10
山口哲生
九州大学大学院工学研究院機械工学部門
ゲルのすべり摩擦におけるグーテンベルグ‐リヒター則と巨大地震
3/9
田中愛幸
地球計測系研究部門
長期的余効果変動と東北地方太平洋沖地震
3/23
芝崎文一郎
独立行政法人建築研究所
高速摩擦特性を考慮した東北地方太平洋沖地震の発生サイクルモデル
3/30
小原一成・加藤愛太郎
地震研究所
ゆっくりすべりは巨大地震を引き起こせるのか?

2011 年度のアブストラクト

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2011.5.13
世界の沈み込み帯における超巨大地震
佐竹健治(地震火山情報センター)
M9クラスの超巨大地震は20世紀以降世界で5回程度しか発生していない.こ れらの地震の発生履歴を調べると,それぞれの地域において数百年間隔で繰り 返しているようだ. 2004年スマトラ・アンダマン地震(M 9.1)は20世紀以降,唯一インド洋で発生 した超巨大地震であったが,2005年以降にインド洋沿岸各地で進められた古地 震調査の結果,似たような地震・津波が14世紀頃に発生したことが分かってき た.ただし,各地のデータは必ずしも同じタイプの地震の繰り返しを示さない. 1960年のチリ地震(M 9.5)について,南米の歴史記録からは100年程度の間 隔で繰り返していると考えられていたが,津波堆積物を残すほど大規模なもの は300年程度の間隔であることがわかった(Cisternas et al., 2005). 北米カスケードや北海道東部(千島海溝)での古地震調査からは,超巨大地 震が500年程度の間隔で繰り返し発生してきたこと,最新のものは17世紀に発生 したことが示されている. これらの巨大地震は,いくつかのセグメントが同時に破壊した連動型地震で ある可能性が高い.M8クラスの巨大地震が数十~百年程度で繰り返す地震サイ クルの上に,数百年に一度M9クラスの地震が発生するという階層構造を示す証 拠が増えつつある.
2011.6.3
2011年東北地方太平洋沖地震の多様な震源インバージョン結果:Overview
三宅弘恵(災害科学系研究部門)
断層のすべり分布の正確な推定は,震源像を把握し物理モデルを構築する基礎情 報となる.2011年東北地方太平洋沖地震では,遠地・強震・測地・津波等の観測 記録から数多くの震源インバージョン結果が提示されており,解析者の震源観を 垣間見ることができる.CMTに代表される地震規模や震源メカニズムは安定に求 まる時代となったが,震源インバージョンよって推定されるすべり分布は,観測 点の選択・断層面の設定・グリーン関数・手法などの違いに起因し て,variationがみられるのが実情である.また,すべりが拘束される場所は各 データセットによって異なる.本発表では,2011年東北地方太平洋沖地震の震源 インバージョン結果の共通点・相違点を整理し,宮城県沖のすべりの有無,dip に沿った複雑な破壊進展,海溝軸付近のすべりの絶対量などに焦点をあてて議論 する.
2011.6.10
海底ケーブル津波記録と大規模数値シミュレーションから見る2011年東北地方太平洋沖地震
前田拓人 東京大学 大学院情報学環 総合防災情報研究センター 特任助教(東京大学 地震研究所 災害科学系研究部門 外来研究員)
 近年のDART観測、GPSブイ、そして海底ケーブル観測の充実により、津波観測 およびその波形解析は大きな転機を迎えている。東北および関東地方沿岸に激甚 な被害をもたらした2011年東北地方太平洋沖地震では、釜石沖に設置されていた 連続海底ケーブル津波記録が沖合において5mを超える特異な波形が観測された。 この断層域直上の記録が本地震の津波励起源を推定する上での大きな拘束条件と なり、宮城県はるか沖の海溝軸付近に極めて大きな滑り、あるいはそれに相当す る津波励起源が存在することが明らかになった。しかし、その津波の主たる成因 がプレート境界の地震性の高速滑りによるものか、あるいは津波地震的なゆっく り滑りの効果なのか、はたまた津浪のみを押し上げる追補的な要因が存在したの かは未だ十分には明らかでなく、今後のさらなる調査検討が必要とされる。本発 表では、いかにして海底ケーブル記録から大津波励起源が推定されたのかを振り 返りつつ、沈み込み帯浅部で起こったことについて、いくつかの可能性を整理・ 議論する。  また、海底及び陸域の稠密観測網の整備と、最先端スパコンおよび計算アルゴ リズム両面の進歩により、震源モデルを不均質な3次元地球構造モデルの地震・ 津波波動伝播シミュレーションから直接検証することが可能になりつつある。近 年我々が開発をしている新たな地震津波統合シミュレーション法とその本地震へ の適用、そして数値シミュレーションを用いた次なる巨大地震の被害予測に向け た最近の取り組みについても紹介したい。
2011.6.24
火山現象の数値実験(これまでの研究概要と今後の抱負)
鈴木雄治郎(数理系研究部門)
火山噴火では火口からマグマが噴出し,溶岩流,噴煙柱,火砕流など 多様な流動様式が観察される.マグマが固相・液相・気相からなる混相 流体として振舞うことが,それらの流動様式の理解を難しいものにして いる.流動様式の支配要因を明らかにすること,そして,それら流動様 式や堆積物・堆積構造の特徴から,火口での噴出条件やマグマ溜まり の情報などを推定することが,火山学の大きな目標となっている.  発表者は特に,火山噴煙ダイナミクスの理解と,噴煙の観測データと噴 出条件の関係を定量的に明らかにすることを目標に,数値シミュレーショ ンモデルの開発を進めている.これまでに,大規模噴火(ピナツボ火山 1991年噴火)における観測データと噴出条件の関係を定量的に正しく再現 するモデルの開発に成功している.しかし,今年初頭の新燃岳噴火のよう な小中規模の噴煙を正しく再現するには,現モデルで無視している風の影 響や,火山灰が落ちる効果といった混相流体として本質的な物理過程を 導入しなければならない.関連する最新の進捗状況と今後の抱負につい て述べる予定である.
2011.7.1
測地観測から見た東北地方太平洋沖地震
三浦哲 (地震火山噴火予知研究推進センター)
発表者は,これまで測地学的データに基づいて東北地方の地殻変動について研究を行ってきた.特に,プレート境界の地震活動が比較的低調で,地震間の定常的変動を表していると考えられた1997年から2001年までの5年間のGPS連続観測データを解析し,いわゆるバックスリップ分布を求めることでプレート間固着の空間分布を推定した.その結果,北海道の十勝沖から青森県東方沖にかけての領域と,宮城・福島県沖の領域のプレート境界において,プレート間が強く固着していることが明らかになった.この結果を裏付けるように,2003年にM8.0の十勝沖地震や2005年にM7.2の宮城県沖地震が発生したことから,プレート境界地震の長期予測が可能になったと結論づけたが,それが全くの幻想に過ぎなかったことが本年3月の東北地方太平洋沖地震発生によって明らかとなった.何故M9の超巨大地震の発生が間近に控えていることを見逃してしまったのか,同じ過ちを二度と繰り返さないために,現時点で可能な限り検証を行いたい.また,今回の超巨大地震に伴って発生した大津波により1万5千人を超える尊い犠牲を払ってしまったことは,地震予知研究に深く関わってきた一人として断腸の思いである.このような災害を軽減させるためには,正確で迅速な津波警報システムの構築が急務である.我々は,2009年秋からリアルタイムGPS解析を用いた大地震の即時的規模推定システムの開発を行ってきた.これについても,未完成であったため大変残念ながら今回の津波災害軽減に役立てることはできなかったが,太平洋沖地震前後のデータを用いたシミュレーションにより,地震発生4分後にはM8.7という推定結果を得ている.気象庁によるマグニチュードの発表において,本震後約1時間15分後で8.4,約3時間で8.8であることを勘案すれば,迅速な津波波高推定にも応用が期待できる.本システムについても紹介を行う.
2011.7.8
プレート学から巨大地震はどう理解されるか?
瀬野徹三(東京大学地震研究所数理系研究部門)
Uyeda & Kanamori (1979)によって定式化された比較沈み込み学では,三陸沖はチリ型とマリアナ型の中間として位置づけられ,Ruff & Kanamori (1980)は,プレートの年代と収束速度の二つのパラメーターで地震の大小を説明することを試みた.しかしその後地震カップリング率の大小は彼らの関係が成り立たないことを示した.2004年スマトラ島沖地震は彼らの関係から顕著にはずれ,ついにMcCaffrey (2008)はどの沈み込み帯でも同じようにM9の巨大地震を起こしうるとし,比較沈み込み学を否定した.  しかしMcCaffreyの考えは,琉球など大地震を起こさない弧をすべて合わせた長大な領域でM9の地震がこれまで起こってこなかったことから否定される.一方,比較沈み込み学が成り立っていても,東北日本沖の地震の起こり方が常識として受け入れられていた場合(島崎のいうパラダイム),それを乗り越えることは不可能に近い.仮に先入観なしに判断を行える立場にいたとしても,貞観の津波堆積物やバックスリップの分布から,M9というランク付けを行うことは容易でない.  ランク付けを客観的に行う手段はあるのか?地震発生スラスト帯の間隙流体圧比λを間隙流体圧/静岩石圧とすると,スラスト帯の剪断応力は1-λに比例することから,上盤側の応力分布を用いてλを決めることが出来る.これを四国,宮城沖,カスケーディア,ペルー,北部チリ,南部チリで行ったところ,大地震の応力降下∝1-λが得られた(Seno, 2009).地震の応力降下∝Sa/S(アスペリティの面積/地震断層面積) なので,アスペリティサイズが1-λに比例し,宮城沖はカスケーディアや南部チリとともにアスペリティサイズがM9の地域に入ることがわかる.  1-λ∝Sa/Sの関係はバリア-侵食(Seno, 2003)で説明できる.このモデルではバリア-中のλが~1で地震が起こる.それが1より小さい場合アスペリティはゆっくりつぶれて行き,東北日本沖の多くの場所でほとんどの期間そのような遷移的な状態にあったと考えられる.沈み込むスラブが水を深部まで持ち込めず浅部ではきだすか,あるいは深部まで持ち込むかが,平均的λの大小を決めている.すなわちアスペリティサイズを決める要因は,現在の沈み込みパラメーターではなく,沈み込みに伴う脱水の歴史全体であるといえる.
2011.7.13
2011年東北地方太平洋沖地震後に生じた電離圏変動
齊藤昭則(京都大学大学院理学研究科 )
2011年3月11日の東北太平洋沖地震は、固体地球の震動としての地震波、海洋の 震動としての津波に加えて、大気の震動も起こしており、その震動は高度300km の超高層大気領域まで到達していた。この変動は、地上GPS受信機網や電離圏レーダー (北海道HFレーダー、アイオノゾンデ)によって観測されており、これまでにない 高精度の観測データが得られた。その結果のうち、あるものは理論的予測と整合性が 高く数値モデルにより再現できるが、あるものは物理過程が十分に解明できていない。 発表では、日本国内の観測結果を中心に、地震によって励起された電離大気の変動に ついて紹介する。
2011.7.15
東北沖地震の震源像が意味すること
井出哲(東京大学大学院理学系研究科)
東北沖地震の破壊過程を遠地実体波などを使って明らかにした。 破壊は大きく分けて4つの段階で起き、断層の浅部と深部が 交互に破壊すべりを繰り返したと推定される。特に破壊開始60秒後に 海溝近くで発生した大きなすべりが大きな津波の励起につながった。 地震波エネルギーの推定値はこの地震が特に「津波地震」という程の 特異な地震ではなかったことを示しており、またその空間分布は 顕著な西北西(傾斜方向)への伝播を示す。これは破壊すべりの最終 的な分布に特に走向方向の方位依存性が見られないこととも調和的 である。破壊すべりの進展の様子や地震波エネルギーの空間分布から この地震では深部から浅部へ向けて破壊が伝播し、地表に達したこと で大規模なダイナミックオーバーシュートを起こしたと考えられる。 応力降下が大きかったことは、地震後数日間に起きたプレート間の 低角正断層地震からも支持される。 東北沖地震を動的にモデル化するにはプレート境界に破壊エネルギー が桁で変化するような領域を想定する必要がある。これはIde and Aochi (2005)で提唱されている階層型パッチモデル、もしくはいわゆるM8の アスペリティの外のM9のハイパーアスペリティで説明できるかも しれない。しかし、このような階層性の存在は現在の地震予知計画が よりどころとしているプレスリップを伴う固有地震とはかなり相性が 悪い、というかほぼ対極に位置するものである。東北沖地震の教訓は、 いい加減に固有地震的モデル一辺倒から卒業すべきということだろう。
2011.9.2
ハリケーンによる高潮被害予測シミュレーションの高効率化
田中聖三(災害科学系研究部門)
ハリケーンによる高潮は,低発生確率ではあるものの海岸設備に甚大な被害を及ぼし,多くの人命を失うこともあるインパクトの高い災害である.特に近年のKatrinaやIkeといったハリケーンが与えた被害は記憶にも新しい.ハリケーンに対する被害予測シミュレーションはそのリスク評価や防護施設の設計,避難計画などに対して強力なツールとなっている.これらのシミュレーションは緊急度の高いものであり,3,4日分の予測シミュレーションは数時間以内に完了されなければならない.また,氾濫・浸水域を正確に評価するためには,地形や植生等を微細に表現可能な高解像度の解析メッシュが必要となり,計算時間,記憶容量は増加する.そのため,これらのシミュレーションは大規模並列計算機システム上で実行され,そのスケーラビリティは強く保持されなけらばならない.また,実際のシミュレーションにおいては,当然のことながら解析結果を出力する必要があり,これらのI/Oも含めて高効率化が行われなければならない.  今回の発表では,特にこの解析結果の出力の効率化を行うために導入したwriter coreについて説明をする.これは計算実行時に一部のCPUを解析結果出力専用に割り当てるものである.また,計算機環境に依存しない出力形式であるNetCDFについても紹介を行う.
2011.9.9
アスペリティ,摩擦構成則,地震の複雑さ
加藤尚之(地震火山噴火予知研究推進センター)
プレート境界地震の発生過程は,すべり様式が場所に固定されていると仮定するアスペリティモデルに基づき理解されて きた.すなわち,プレート境界地震はアスペリティと呼ばれる領域で発生し,そこは地震間には固着して歪を蓄積する. 一方,非アスペリティ領域では非地震的なすべりにより歪を解消する.このようなすべり様式の違いは摩擦構成則(速 度・状態依存則)によるモデルでよく説明できる.ただし,速度・状態依存則によると,すべり様式はその場の摩擦特性 のみで決まるわけではなく,すべり域の広がりや応力変化速度等にも依存し,複雑なものになる可能性がある.セミナー では,アスペリティモデル,および,その摩擦構成則に基づく理解についてレビューし,東北地方太平洋沖地震の発生過 程について議論する. 以上のモデルでは,摩擦特性が場所に固定されており,地震発生の非周期性などの複雑さの起源は摩擦特性の空間不均一 によると考えている.他に地震の複雑さの原因として考えられる次の2点について検討する.(1) すべりに伴う断層帯内 の間隙の変化や摩擦熱による有効封圧の変化.(2) すべりによる応力不均一性の自発的な形成.
2011.9.16
Applications of GPS data for improving seismic hazard assessment and transient deformation detection
Dr. Jessica Murray-Moraleda (U.S. Geological Survey, Menlo Park)
The first part of this talk will focus on the application of Global Positioning System (GPS) data to quantify fault slip rates and distributed shear strain in order to improve seismic hazard assessment. I will present newly estimated GPS velocities based on data collected in the vicinity of the San Andreas fault system in California and preliminary crustal deformation models designed to test current hypotheses regarding ongoing deformation processes. The second part of the talk will focus on automated detection of transient crustal deformation from continuous GPS data. The growing number of continuously-recording GPS sites worldwide provides the opportunity to observe temporal changes that may signal transient fault slip or volcanic unrest in near-real-time, however the large volume of data and potentially subtle signals makes it impractical to attempt such monitoring by eye. I will present one approach I have developed for this purpose and discuss the further development of this method which is the subject of my research while visiting ERI.
2011.9.30
海溝付近での大きなすべりの発生メカニズム
堀高峰(海洋研究開発機構 地震津波・防災研究プロジェクト)
東北地方太平洋沖地震の最大の特徴は、海溝付近で大きなすべりが生じたことだと思われる。このすべりの発生メカニズムを理解することは、今回の地震全体を理解する上でも、今後他の地域での巨大地震を評価する上でも、重要なポイントである。本講演では、プレート境界地震の繰り返し発生や付加体形成の数値実験による知見、上盤側応力場の解析などにもとづいて、大きなすべりが海溝付近で生じたメカニズムについて議論する。
2011.10.7
Earthquakes Triggered by Seismic Waves
Emily Brodsky(Associate Professor of Geophysics Dept. of Earth and Planetary Sciences UC Santa Cruz)
Seismic waves can trigger earthquakes. The phenomenon of dynamic triggering was first established by observing long-range earthquake interactions nearly 20 years ago. Today we have evidence that dynamic triggering plays an important role in determining earthquake timing even for common aftershocks. This ubiquity allows us to use triggering to quantitatively measure the conditions necessary for failure of natural faults. For instance, we have established an empirical relationship between seismicity rate changes and the peak dynamic strain in the triggering wave. This relationship contains information of the distribution of faults stresses.It also presents a method of predicting earthquake rates based on a physical observable, i.e., the amplitude of seismic waves. The global significance of dynamic triggering for determining the timing of big earthquakes has yet to be established and hinges critically on observations of very small earthquakes.
2011.10.28
Variations of mineral grain size in the Earth's mantle: Implications for mantle dynamics and seismology
Prof. Solomatov (Washington University)
I will review factors controlling mineral grain size in the Earth's mantle, including coarsening, phase transitions, dynamic recrystallization, and grain size heterogeneities formed during the early history of the planet. These variations strongly affect mantle viscosity, structure and dynamics. Examples include the secular cooling of the planet, chemical mixing, and the structure of phase boundaries and plate boundaries. I will also discuss the effect of grain size variations on seismic velocities and how the grain size may affect the interpretation of seismic anomalies in the asthenosphere.
2011.11.11
震源核群の構成と誘発作用 ー東北地方太平洋沖地震からの考察ー
遠田晋次(京都大学防災研究所 地震予知研究センター)
東北地方太平洋沖地震によって東北日本弧の地震発生域と発震機構が変化し た.特に,秋田県南部,長野県北部,喜多方市周辺,茨城―福島県境付近,宮城 県沖の陸棚浅部など,これまで地震活動が低調であった地域で活発化した.これ らの活動は横ずれや正断層型を主体とし,逆断層をレシーバ断層(ΔCFFを計算す る断層面)に仮定した静的クーロン応力変化(ΔCFF)では説明できない.一方 で,これらのメカニズム解の変化は,応力擾乱による主応力軸の回転によるもの とは考えにくい.これらの地域は新第三紀以降の火山・カルデラ地域などにあた り,地質構造や応力状態の不均質性が期待される.多様な断層群のうち,本震後 の東西伸張に呼応する断層(震源核)が選択的に励起された可能性が高い.応力 変化に呼応する『多様な震源核群』は,本震数日後から遅れて静穏化した地震活 動(例,岩手宮城内陸地震余震域)や,誘発群発地震活動(例,福島県浜通の地 震活動)などを説明する.本発表では,速度・状態依存摩擦構成則を取り入れた 応力ー地震応答のモデル計算結果なども紹介する.
2011.11.25
繰り返し地震解析による東北地方太平洋沖地震前後のプレート境界すべりの時空間変化
内田直希(東北大学大学院理学研究科 地震・噴火予知研究観測センター)
東北地方太平洋沖地震の震源域周囲のプレート境界において,小繰り返し 地震の積算すべりを計算することにより,地震前後のプレート間カップリングの 空間分布とすべりの時間変化について調べた.地震前について,本震すべり域に は,繰り返し地震がほとんど存在しないかカップリング率が大きい領域が広く存 在し,そのまわりに低カップリング領域があったことが分かった.このことは, 広域にカップリングが強かった場所で今回の地震が起きたことを示す.また,時 間変化に注目すると,地震前の2008年前後に福島県沖から岩手県沖の海溝寄りで すべり速度が増加するイベントがあった.また福島県沖の陸寄りでも2000年ころ から,それまでより速いすべり速度が見られた.これらのすべりの時間変化 は,2011年の地震の準備過程を示している可能性がある.一方本震後は,余効す べりが宮城県北部~岩手県沖の地震時すべりの深部延長にあたる場所で顕著に見 られた.また,地震時すべり域からの距離とともに余効すべりが減衰・時間遅れ をすることも分かった.さらに余効すべりが顕著に見られた場所では,同じ繰り 返し地震グループでも本震後,その規模(マグニチュード)が大きくなる傾向が あることが分かった.これは,地震の規模が周囲のすべり速度に依存する場合が あることを示している.
2012.1.13
東北地方太平洋沖沿岸の上下変動に関する一考察
石山達也、加藤照之(地震研究所地震予知研究センター)
北海道から東北地方の太平洋沿岸地域は,第四紀後期 の10万年程度の時間スケールでは上下変動は小さいかあるい は0.3-0.5mm/yr程度の 微弱な隆起となっている.一方,測地学的には最近数十年は6-10mm/yrのかなり早い沈降を示している.昨年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震では,最近の測地学的沈降が回復するどころかところによっては1m以上という大きな 沈降を示した.その後の余効変動によって多少の回復的隆起が見られるものの,現状が続く限り地震前の沈降が数年~数十年で回復するとは考えられない.この地質学的なデータと測地学的なデータのギャップはどのようにして埋められるのか,興味深い問題である.  現在進行中の余効変動は主として本震震源域の深部延 長のプレート境界でのスロースリップによるものと考えられるが,現在までの余効変動の解析結果では沿岸を隆起させるほど十分深部にまで達 していない.今後次第に深部延長部にすべりが拡大していく可能性は否定できないが,今後は次第にマントル上部の粘弾性効果が卓越してくる であろうと考えられる.この粘弾性効果によって沿岸が隆起に転じる可能性も考えられるが,果たしてこれらの相乗効果で上記のギャップが解消されるかどうか,あるいはまた別のメカニズムを考える必要があるのか,考察してみたい.(加藤照之) また,2011年東北太平洋沖地震の発生後に前弧域で正断層の地震が発生するなど,特徴的な地殻変動がみられる.上記のような東北日本太平洋沿岸の長期間(100000-1000年スケール)の地殻変動の概要について研究紹介を行うとともに,その成因や正断層運動について若干の考察を行う(石山達也)
2012.1.27
大ぺのなかの小ぺ ー preslipによる短期予知のfeasibility に対する示唆
中谷正生(地球計測系研究部門)
震源核のpreslipによる地震予知(以下JMA予知)ができないとされる一番の論拠は,摩擦すべり弱化の特性距離Dcが小さい(普通に引用される実験では,10um)から,大地震といえども核のサイズは小さくて観測できないというものである.最近では地震の動的破壊時のDcは,地震の滑り量にくらべてそう小さくはないことがコンセンサスになってきたが,それは高速破壊時に特有なメカニズムによる[e.g., Andrews, 2005, Shimamoto-DiToro 高速すべり]ものかもしれず,静的な震源核形成時のDcも大きいと想定するのは不謹慎であるという考えは根強い.しかし,2011東北M9地震の巨大すべり域の一部がすべったとおもわれるM7級地震は,浅部の>20m滑り域に限っても,2日前のM7.3をはじめ,過去数十年間に多数おこっている.M9地震の応力蓄積サイクルからみればほぼ満期であったはずの時期にM7地震がそれ以上拡がらずに停止したのだから,あの巨大アスペリティは,その内部での30kmサイズのクラックを食い止めておける大きな静的なDcをもつことが証明されたことになる.実際,最近の摩擦実験[Nakatani, 1997,1998; Karner&Marone, 2001; Nakatani & Shoclz, 2004, Chambon et al, 2006]によっても,メートル級のstaticなDcが10cm程度のガウジ層(shear bandは1cm)内で生じうることがわかってきた.Dcが1メートルなら臨界核サイズは10km以上になり,JMA予知は基本的にはできるはずである. 一方,M9パッチ(大ぺ)内部でおこったM7級地震は,Dcが桁で小さい虫喰いのような小領域(小ぺ)と考えればよい[Ide&Aochi,2005; Hori and Miyazaki, 2010,2011].アスペリティーの空間サイズとそのDcを比例させるという,IA2005の発明はJMA予知が成功するための基本的要請だが,大ペが小ペに虫喰われる型の配置を許したために,cascade upという新たな敵が登場した.実際,IA2005の主旨は「地震は最小パッチの破壊ではじまり,パッチの幾何配列が幸運なレアケースでは,cascade upが何段階も止らずに続いて大地震になる」ということであり,JMA予知に否定的なものである.(短期的な)核形成は,最終的な地震のサイズに関わらず,最小パッチ地震の臨界サイズということになるからである.しかし,IA2005は,最小パッチ#1ー#9999をひとつひとつキックしてみて,それぞれのケースがどこまで駆け上るかを調べたのであって,前駆滑りはそもそも計算していない.したがって,大きなパッチ自体で核形成して大きな地震がおこるという可能性は最初から検討していないのである.前駆滑りが許される摩擦則(RSF)を用いて,大ペのなかにも小ぺが許されるIA2005のモデルのサイクルシミュレーションを行えば,大ペのnucleationが準静的に起る場合(JMA予知成功)と,小ペ地震からのcascade upでスキップされてしまう場合(JMA予知見逃し)の両方が生みだされるはずである.本講演では, 1.大ぺのなかに小ぺを1個だけいれた予備的計算[Noda,Hori,Nakatani, ongogin work]で,1回交替で成功と見逃しになるサイクル例 2.成功と見逃しを支配するファクター を議論するとともに, 3.このプロジェクトが依拠する最大の仮定である「Dcの大きな広い領域がDcの小さな狭い領域で虫喰われている」というIA2005の設定を,巨視的摩擦則はirregular systemの統計平均であるという観点から正当化[Nakatani, 2011, ESF conference]することを試みる.
2012.2.10
ゲルのすべり摩擦におけるグーテンベルグ‐リヒター則と巨大地震
山口哲生(九州大学大学院工学研究院機械工学部門)
通常,機械の大きさ程度のスケールですべり摩擦を研究する学問分野である トライボロジーでは,物体がお互いに一定速度で相対運動を起こす定常すべりと, 物体間でしばらく固着が生じた後ブロック全体がすべる運動を繰り返す,スティック‐ スリップの2つの運動モードが知られている.しかしながら,もっと大きな系である断層 では,後者のモードでさらに複雑な現象が起こりうる.すなわち,すべりを起こす際に ブロック全体がすべりを起こさず,ほとんどの領域は固着したまま局所的なすべりが 起こるという現象であり,これが地震である.実は,このような振る舞いを実験室で再現 しようとしても,いくつかの例外(粉体系やカーペット上のブロックなど)を 除いてなかなかうまくいかない.その原因は,ブロックの弾性が大きすぎると, すべりが始まるやいなや全体に伝播し,局所的なすべりを生み出せないからである.  最近我々は,高分子ゲルと呼ばれるやわらかい弾性体を用いて実験を行なうことで, さまざまな規模でのすべりを生じる摩擦実験系を構築することに成功した.実験では, 電子機器内で部品を保護するために使われる,シリコーンゲルとよばれるやわらかい 弾性体をアクリル樹脂に定荷重で押し付 け,一定の速度でゆっくりとせん断を加えた. すると,小・中程度の大きさ(Mw~-8)でグーテンベルグ‐リヒター(GR)則を再現する ようなすべり挙動が現れた.また,その後もせん断を続けると摩擦力は増大し,小・中 規模のイベントによって生成された破壊核からゆっくりとしたすべりが生じ,試料の端に 到達した途端全体がすべりを起こす,”巨大地震”(Mw~-6)が発生することがわかった. さらに,このような過程は繰り返し起こった.つまり,GR的な振る舞いが巨大地震の前駆 (準備)過程として存在しており,巨大地震は長い周期で繰り返し起こるということである. 今回の発表では,イベント発生位置の同定,イベント規模の推定,せん断応力場のモニタ リング,イベント発生メカニズムの解明などの目的で行なった,PIV法を用いた可視化実 験の結果についても紹介する.最後に,(似て非なる現象である可能性は高いが)昨年 3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震との類似点や相違点についても考えてみたい.
2012.3.9
長期的余効果変動と東北地方太平洋沖地震
田中愛幸(地球計測系研究部門)
大地震の発生の後に発生する地殻変動を余効変動と呼ぶが、余効変動には いくつかのメカニズムが提唱されている。このうち、数十年以上にわたって継続する変動の 原因は地殻下部や上部マントルの粘弾性に起因すると考えられている。本講演では 余効変動について簡単に説明した後、上のような長期的余効変動の観測事実や モデリングの実際(境界条件や様々な効果の比較)について少し詳しく解説する。 続いて、東北地方太平洋沖地震により生じる長期的余効変動の モデル計算の一例を示し、今後の推移とすべり欠損推定への影響について考察する。 このモデルによれば、東北地方沿岸部では、今後50年近くにわたって、粘弾性による見かけの 東西圧縮が生じる。その速度は、定常的なプレート沈み込みによる東西圧縮速度の半分以上の速度を持つ。 したがって、今後のすべり欠損を求める際にはこれを差し引かないと、過剰見積もりが起こりうる。 同地域での粘弾性による上下変動は時系列でみると最終的には沈降を示すため、地質学的データとのギャップを 解消することはできない。しかし、粘弾性による沈降速度は地震後、数100年を経過した後でも 毎年数ミリに及び得るため、長期的な上下変動データのみからすべり欠損を推定する際には 注意が必要である。
2012.3.23
高速摩擦特性を考慮した東北地方太平洋沖地震の発生サイクルモデル
芝崎文一郎(独立行政法人建築研究所)
最近の断層の研究では、高速で摩擦係数が著しく低下することが示されている(e.g. Di Toro et al., 2011)。2011年東北地方太平洋沖地震では、海溝付近で非常に大きなすべりが生じた。また、震源域周辺の地震のメカニズム変化や逆解析により得られたすべり分布からせん断応力が大きく解放されたことが示唆されている(Hasegawa et al., 2011; Yagi and Fukahata, 2011)。従って、高速の摩擦特性として摩擦係数が著しく低下したことが一つの可能性として考えられる。本講演では、最近の高速摩擦実験により得られた摩擦挙動を考慮した東北地方太平洋沖地震発生サイクルモデル(Shibazaki e t al., 2011)を紹介する。Tsutsumi et al. (2011)は、沈み込み帯浅部断層物質を用いた摩擦実験により、低速から中速ですべり速度弱化もしくはすべり速度強化を示すが、高速になると著しいすべり速度弱化を示すことを明らかにした。Shibazaki et al. (2011)は、Tsutsumi et al. (2011)の実験結果を参考にして、高速での著しい弱化過程を表現するために、二つの状態変数を有する摩擦構成則を提案した。シミュレーションでは、これまでに地震波や津波の解析から求められている宮城県沖、福島県沖、茨城県沖地震のアスペリティ分布と海溝付近の大きなアスペリティを考慮する。そして、アスペリティ内では、低速ですべり速度弱化、高速で著しいすべり速度弱化、アスペリティ外では、低速ですべり速度強化、高速で著しいすべり速度弱化の性質を与える。このような摩擦の性質を与え、準動的地震発生サイクルシミュレーションを行うことで、数10年間隔で発生するM 7.5クラスの地震と数100年間隔で発生するM 9クラスの地震を再現することができる。M 9の地震間では安定的に振る舞う領域でも、M 9の地震の際には、高速ですべり量が大きくなるために、不安定すべりを引き起こす。本講演では、M 9の地震発生に先行するすべり過程や、余効すべりのシミュレーション結果についても紹介する。
2012.3.30
ゆっくりすべりは巨大地震を引き起こせるのか?
小原一成・加藤愛太郎(地震研究所)
(小原 要旨)
ゆっくりすべり(スロー地震)は、巨大地震と同じ沈み込みプレート境界上 で発生する現象であり、巨大地震との関連が期待される。南海トラフ沈み込 み帯では、異なる時定数を有するスロー地震が巨大地震震源域周囲に分布し、 それぞれ棲み分けているとともに、隣接するスロー地震間で連動するなど、 応力伝達等による相互作用の存在を示している。このことは、巨大地震と隣接 するスロー地震との相互作用の可能性を示唆するものであるが、深部のスロー 地震と巨大地震震源域との間にはギャップが存在し、また局所的に存在する長 期的スロースリップは巨大地震震源域と隣接しているものの、これまで両者の 関連性を示す観測結果は得られていない。関連する観測結果としては、San Andreas断層で発生する微動活動の発生様式が、2004年のParkfield地震前後で 変化した事例が報告されているのみである。一方、東北沖では南海トラフ に見られるような自律的スロー地震は存在せず、大地震にトリガーされる余効 すべりのみであった。しかし、東北沖地震の2度にわたる前震活動の際に検出さ れたスロースリップは、通常の余効すべりよりすべり速度が速い。この場所では、 2008年にもスロースリップが起きていたことが報告されており、その発生前には 大きな地震がないことから余効すべりではなく、自律的スロースリップである 可能性がある。M9の発生にはもちろん強パッチにおいて既に十分な応力が蓄積され ていることが必要であるが、東北沖には珍しい自律的スロースリップ域がM9の強 パッチに隣接し、そこでのすべりがM9のトリガーになったのかもしれない。

(加藤 要旨)
2011年東北地方太平洋沖地震は、その発生約1ヶ月前から、本震の破壊開始点 の北側で群発的な前震活動を伴った。震源域に近接する地震観測網の連続波形 データに着目し、地震波形との相互相関解析を施すことで、気象庁カタログに含 まれていない多数の微小地震を検出し、新たな前震の震源カタログを構築した。 このカタログを分析することで、本震の破壊開始点へ向かう震源移動が、ほぼ同 じ領域(以下、EMZ)で、2度にわたり起きていたことが示された。1度目の移動 は、2月中旬から下旬まで継続し、その移動速度は2~5 km/dayであった。2度目 の移動は、3月9日のM7.3の最大前震の発生後に見られた。その移動速度は平均約 10 km/dayで、移動速度は前震M7.3の発生後から徐々に減速を示した。 これらの前震活動には、小繰り返し地震が含まれていたことから、震源の移動 は、本震の破壊開始点へ向かうプレート境界面上のゆっくりすべりの伝播を意味 する。3月9日の前震M7.3の発生後、EMZの北側では、M7-8級の地震後に見られる 余効すべりと類似したすべり挙動が見られた。一方で、EMZ内では、2月中旬-下 旬に引き続いて2度目のゆっくりすべりの伝播が観察された。ゆっくりすべりに より、約M7.1に相当する地震モーメントが解放されたと推定される。本震前に生 じた2度にわたる「ゆっくりすべりの伝播」が、本震の破壊開始点へ応力集中を 引き起こし、巨大地震の発生を促した可能性が考えられる。