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地震研究所談話会 第835回 (2006年 1月)

2004年浅間山噴火の解釈 −地震振幅、空振振幅、噴出物量の関係について−

火山噴火予知研究推進センター 大湊隆雄

浅間山は日本における最も活動的な火山のひとつであり,爆発的な噴火を何度も繰り返してきた.2004年9月1日噴火は1983年以来の爆発的噴火であった.同年9月23, 29日,10月10日,11月14日に小・中規模の噴火が続いた後,噴火活動は低下した.地震研究所では浅間山周辺に常時地震観測網を展開している.9月1日の噴火後には防災科学研究所と共同で臨時地震観測点を追加し,充実した地震観測網によって噴火に伴う地震を観測することに成功した.

比較的規模の大きい5回の噴火につき,噴火に伴う地震の強度と,空振(噴火に伴う空気振動),噴石・火山灰などの噴出物の量との関係を調べたところ,図1に示す結果になった.黒丸は地震強度(左軸),白三角は空振強度(右軸)である.噴出物量(横軸)に対して空振はほぼ比例するが(赤線),地震は青線で示される一部を除き比例しない(赤点線).

噴火前の火道(上昇するマグマの通路)は先端を塞がれ,そこに高圧火山ガスが蓄っている.火道を塞ぐフタは固結した溶岩などであるが,それが圧力に耐えられなくなると,吹き飛ばされて噴火が発生する.地震強度は噴火直前の火道内圧力に比例する.また,空振強度は吹き飛ばされるフタの加速度に比例する.一方,フタの加速度は火道内の圧力に比例し,フタの質量に比例する.即ち,軽いフタの加速度は大きく,重いフタの加速度は小さい.図1に示される地震と空振の強さから,5回の噴火における火道内圧力と火道を塞ぐフタの質量は次のような関係にあったと推定される.

(1)9月1日噴火前に蓄積されていた圧力は比較的低く,火道を塞ぐフタも薄くて軽かった(図2上).(2)9月23日噴火の前には火口底に溜まった溶岩により火道が厚くフタをされていた.噴火前の圧力は高かったが,フタが極めて重いために大きな加速度が得られず,空振は比較的弱かった(図2下).

火口縁を飛び越えるだけの加速度を持つことのできた噴出物のみが図1の噴出物量としてカウントされている.従って,火口外で観測される噴出物量は,フタが軽く加速度も空振も大きい場合に多く,逆に,フタが重く加速度が得られない場合は少なくなる.

ニュースレター2006年2月号

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