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地震研究所談話会 第839回 (2006年 5月)

Scaling laws for mantle plumes: from a point source to Rayleigh-Benard convection

熊谷一郎・J.Vatteville・A.Davaille(IPGP,France)、岩田心・栗田敬(地震研)

はじめに

地表における火山活動や地球の熱史を考える上で、マントル深部で発生するプルームと呼ばれる高温の上昇流の運動を理解することは重要である。最近我々は、熱源サイズを系統的に変化させた場合に、プルームの上昇の仕方がどのように変わるのかについてアナログ流体実験を行ったので、その成果を報告する。

実験および結果

水槽に水飴を満たし、底部に円形ヒーターを設置した。ヒーターに一定パワーを与えることで、熱プルームを発生させ、プルーム頭部の高さ変化を計測した。水飴には感温液晶マイクロカプセル粒子を分散させ、レーザーシート光を照射することによって、温度場を可視化した(図1)。一連の実験結果の例として、図2にパワーの異なる3つのプルーム実験の結果を示す。プルームの高さ−時間変化(図2a)を見ると、パワーの大きい方が、速く上昇していくのがわかる。

図1:熱プルームの実験。レーザーシート光と感温液晶粒子によって、等温度線を定量的に可視化(左の数字は各等温線の温度)。中央の写真がVpeakのときのプルーム。ヒーターのサイズは直径80mm。

また、上昇速度―時間変化(図2b)を見ると、どのプルームも初期に加速してピーク速度(Vpeak)に達し、その後減速していく。図2c は、Vpeakおよびそれに達するまでの時間(tpeak)で無次元化した結果である。この無次元化によって、同じサイズのヒーターであれば、全てのプロットが1つの曲線(ユニバーサルカーブ)に乗ることが明らかになった。図3は、ヒーターのサイズを変化させた場合の結果である。ヒーターが小さい場合には加速後の減速の程度が小さいが、大きい場合には急加速・急減速となっている。Rayleigh-Benard対流(ヒーターサイズ無限大に相当)で発生するプルームについても計測したところ、直径80mmのヒーターの場合と似たような曲線が得られた。

図2:プルーム頭部の(a)高さ−時間と(b)速度−時間変化。(c)は、Vpeakとtpeakで無次元化した図(ユニバーサルカーブ)。水飴の粘性は5Pas(20℃)、ヒーター直径80mmの場合。図1は、15.78Wの実験。

実験から地球への応用

マントル最下部では、スラブの滞留などにより水平方向に不均質で、熱源サイズが場所によって異なることが予想される。実験結果に適当なスケーリングを行ったところ、マントル内部では、熱源サイズの影響による急加速・急減速の領域が直接効いてくる。このことは、多様なマントルプルームを生み出す原因となる。

図3:無次元のプルーム上昇速度―時間の図。橙色の数字は、ヒーターの直径。サイズが大きくなるほど減速が大きい。白黒のプロットは、Kaminski & Jaupart (2003)から引用。

ニュースレター2006年6月号

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