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地震研究所談話会 第840回 (2006年 6月)

コア−マントル電磁結合と数十年スケールコア流体運動

浅利晴紀・清水久芳・歌田久司

 地磁気変動データから推定されたコア表面流を用いて数十年スケールのコアダイナミクスに関する研究が行われている。その成果として、回転軸方向の角運動量がコアとマントルの間で交換されていることが、近年になって示唆された。この角運動量交換を担う力学的コア−マントル結合メカニズムとして、電磁結合が挙げられる。しかし、電磁結合がコア内部のダイナミクスと整合的であるかということについてはわかっていない。

数十年スケールでは、ローレンツ力を復元力とした図1のような円柱殻状の振動がコア内に存在すると考えられている。そこで以下のような疑問点が挙げられる。

1. 円柱殻に働く電磁トルクと慣性トルクの間でバランスが保たれるか?

2. 電磁トルクは振動の励起源になり得るか?

以上の点を明らかにするために、コア表面流モデルから円柱殻に働く電磁トルクを計算するフォワードコードを開発し、慣性トルクと共に各円柱殻に働く電磁トルクの時間変動を過去150年間に渡って計算した。その結果、慣性トルクに見られるような経年スケールの時間変動性が電磁トルクにはないということが確認された(図2)。結論として、電磁結合はねじれ振動を励起する単独のメカニズムにはなりえないということがわかった。

図1.コア流体のねじれ振動

図2. 余緯度39.5°のコア円柱殻に働く慣性トルク(破線)と電磁トルク(赤線)の変動

ニュースレター2006年7月号

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