地震研究所ロゴマーク 地震研究所ロゴタイプ 東京大学

地震研究所談話会 第840回 (2006年 6月)

八ヶ岳地磁気観測所内磁気異常の時間変化:雷誘導磁化の影響

清水久芳・小山崇夫・小山茂・歌田久司

 八ヶ岳地磁気観測所における磁場環境モニタリングを目的とした磁気サーベイを2005年12月に行った。高さ2mにおける観測所内の磁気異常分布を図1に示す。磁力計設置点においては、磁場勾配は1-2nT/m と小さく、観測に適していることが確認された。しかし、敷地内中央部に、細長く延びた強い磁気異常のペアが見られる。

 今回求められた磁気異常分布と 1975年、1982年の磁気異常図を比較したところ、強い磁気異常は、1975年から1982年の間に出現し、その後は安定して存在していることがわかった。この原因として、1981年7月16日の八ヶ岳観測所敷地内への落雷が考えられる。落雷によって大電流が地中を流れると、それに伴う磁場によって、岩石が磁化を獲得し(雷誘導磁化)、この磁化が磁気異常の原因になりうるのである。

 地表直下で水平方向に線状に電流が流れることに伴う雷誘導磁化をモデル化し、その磁化による磁場を計算した。八ヶ岳地磁気観測所における条件で磁気異常分布を求めたところ、計算された分布によって、観測された分布の特徴がよく再現できることが確認された。観測された磁気異常の強さを説明するには、磁化分布モデルによって最大で10-50A/mの磁化が必要となるが、これは十分に可能な値である。

図1.2005年の八ヶ岳地磁気観測所内磁気異常分布

ニュースレター2006年7月号

地震研究所トップページ