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地震研究所談話会 第841回 (2006年7月)

波形インバージョンによるグローバル内部構造モデルから示唆される670km不連続面の性質

海半球観測研究センター 竹内 希

 海溝で沈み込んだスラブが、その先どのような運命をたどるかを知ることは、地球内部の力学機構を理解する上での重要な課題である。全世界の短周期地震計の初動(P波)到達時刻を詳細に解析し地球内部の地震波速度分布を推定することにより、沈み込むスラブは 670 km の不連続面近傍で横たわることが示唆されていた。データ数を増やした最近の解析では、スラブは 670 km 不連続面の直上だけでなく、深さ400-1000 km 程度の様々な深さで横たわっていることが示唆された(図中のWEPP2モデル)が、その信頼性は必ずしも自明でなかった。本研究では、全世界の広帯域地震計の波形データを解析することにより、上記解析とは独立に地震波速度分布を推定した。従来の同種データを用いた解析(図中のSB4L18, SAW24B16, S362D1, S20RTSモデル)に比べ、独自手法を用いて高精度かつ高解像度に地震波速度分布の推定を試みた結果、WEPP2モデルと整合的な解を得ることに成功した(図参照)。

 スラブが横たわる深さに多様性があることは、現在地震学的に検出されている670 km不連続面以外の場所で、何らかの形でスラブの沈み込みを堰き止める力が働いていることを示唆している。その力の正体が何かを突き止めることは今後の重要な課題となる。



図: 世界各地の沈み込み帯における様々な地震波速度分布モデルの比較

ニュースレター2006年8月号

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