プレート境界の固着域の端では周囲の非地震性すべりにより応力集中が生じているが,応力集中とともに増大するエネルギー解放率が固着域での破壊エネルギーに等しくなったときに固着域が破壊されプレート境界大地震が発生する.非地震性すべり量はプレート相対運動速度と地震の再来周期から推定できるため,これらから破壊開始点の破壊エネルギーが推定できる.この理論の妥当性をシミュレーションで検証し,破壊エネルギーを推定するための関係式を導いた.南海トラフのM8 級地震と2011 年東北地方太平洋沖地震の発生を支配していた高強度領域の破壊エネルギーを推定したところ,それぞれ,0.1-1 ,約10
の値を得た.
アスペリティでは,周囲の定常的な非地震性すべりにより応力集中が生じると考えられる.一方,プレート内の断層など固着率が高い場所では,このような応力集中は生じないと考えられる.周囲で非地震性すべりが発生する場合と,周囲が完全に固着する場合とで,地震発生サイクルの数値シミュレーションを行い,地震の応力降下量を比較した.その結果,周囲が固着している場合(プレート内地震に対応)の応力降下量は周囲で非地震性すべりが発生している場合(プレート境界地震に対応)の約2倍となった.これはプレート内地震の応力降下量が大きいという観測事実を定量的に説明する.