2.11.7 テレメータ室の活動

(1) テレメータシステムの運用管理

観測開発基盤センターの地震・火山観測網において,地震波形データをはじめとする,各種リアルタイム観測データの伝送および連続収録を行うテレメータシステムの運用管理を継続している.研究者が目的に応じて接続するセンサーの連続データを,途切れなく伝送し収集・提供するとともに,一部イベント収録処理も行う.伝送手段としては衛星通信(VSAT)や,ISDN・ADSL・光回線・無線LAN・モバイル通信等,最新の通信技術を取り入れた各種IP通信回線を利用している(図22).管轄する観測点数は地震・火山合わせて約200である.特に衛星通信については,全国の大学の共同利用設備として,VSATシステムのハブ局を東京と長野の2か所で運用し,140局のVSATの維持管理を行い,地上回線の利用が困難な山間僻地や離島での機動的な観測研究に貢献している.2012年から2013年にかけ,VSATはNanometrics製から白山製へ,地上テレメータ装置は白山製LT8500から同LFシリーズへ,それぞれ世代交代を進めた.また2013年2月からは,観測点からのデータをSINET4データセンタへ直接収集して直ちにJDXnetに乗せる,耐災害性の高いデータ伝送システムの運用を開始した.

(2) 全国の大学を含む各機関とのデータ交換システムの運用管理

リアルタイム観測データの全国的な流通のため,各大学や地震火山情報センターと協力して,高速広域網JGN-XとSINET4のそれぞれL2VLANサービスや,フレッツ系回線等を利用し,全国の大学等を結ぶJDXnet(Japan Data eXchange network)を構築・運用管理している(図23).また,地震観測に関係する全国の大学を代表して,東京大手町にあるTDX(Tokyo Data eXchange)を介した,気象庁・防災科研等他観測機関とのリアルタイムデータ交換の窓口の役割を果たしている.そのために,TDX,衛星通信ハブ局等の拠点間を接続する延長約300kmの光ファイバー通信網を構築・運用管理している.これらの高速広域ネットワークにより,全国の広範な研究者が各機関の全国千数百観測点に上るリアルタイム観測データを研究利用することが可能になっている.

(3) 収集データの利用支援

テレメータシステムやデータ交換システムによって収集されたデータは,所内ネットワークやインターネットを通じて所内外の研究者に提供される.それには収録済みデータのオンライン利用やオフライン利用(テープの再生等)とともに,インターネットやJDXnetを介したリアルタイム配信サービスも含まれる.これら所内外の共同利用ユーザーに対する技術的および手続き面での支援を行っている.

(4) 観測機材の全国共同利用への対応

2010年までに整備されたVSATシステムおよび地上テレメータ装置,データロガー等合計約千台を,地震研共同利用の手続きに従って全国の大学の研究者に提供(貸し出し)している.2014年1月現在の貸し出し台数は約750台である.