2.12.6 巨大地震・津波の研究

(1) 世界の巨大地震・津波の研究

津波データや測地データを用いて,1960年・2010年チリ地震など世界の巨大地震 の断層運動の詳細や津波の発生過程について調査している(図13).1900年 以降に千島海溝沿いで発生した巨大地震 及び大地震について,本震と余震の震源 決定と震源過程の解析を行い,約 110年間にわたる時空間分布を明らかにした. 同様に,日本海東縁部で20世紀に発生した大地震について,本震・余震の震源と 本震のメカニズムの再決定や遠地地震波形を用いた震源過程の推定を行った. 2011年東北地方太平洋沖地震を含めた20世紀のM9クラスの地震に関して,アスペ リティを含む断層パラメタ―のスケーリング則が大地震と同様に成り立つことを示 した.

(2) 東北地方太平洋沖地震・津波の調査・研究

2011年3月11日に発生した東北地方太平沖地震について,三陸沿岸・北関東の太平 洋岸で津波調査を行い,約300点における津波高さを測定した.地震研究所や他機 関の海底水圧計,GPS波浪計,水位計などに記録された津波波形を使って,断層面 上のすべりの時空間分布を推定した(図14).三陸沖で破壊開始から3分以上 後に発生したすべりによって,震源付近の最大すべり域から約100㎞北の三陸海岸 で津波が最大となったことが説明できた.日本海沿岸で,地震直後から記録され ている海面変動は地震時の水平変動と海底斜面によって生じた津波によるもので あることを明らかにした.東北地方太平洋沖地震後に活発化した茨城県南西部・ 千葉県北部のやや深発地震や伊豆・箱根の浅い地震の震源・発震機構解を決定し, その多くが本震による応力変化で説明できることを示した.