3.2.2 技術部

技術部は,総合観測室と技術開発室,情報処理室の3室から構成されている.2010年4月の地震研究所改組に伴い,その運営も大きく変わった.これまでは,各技術職員は特定のセンター・研究室と結びついてその技術支援を行ってきたが,改組後は,毎年度地震研究所の研究者の要請に応じてその技術支援を行うようにシステムを変更した.その結果,各技術職員の支援内容も多岐にわたるようになり,更に技術職員間の相互協力が高まった.技術室では,TV会議システムを用いて遠隔地の技術職員を含めた技術部全員のミーティングを毎朝行うとともに1週間に一度の打ち合わせを実施し,各技術職員の業務内容を把握するとともに,業務の平準化と情報交換を行なっている.

技術部運営委員会及び技術職員検討委員会は,技術部全体の運営を行うとともに,技術職員の連携強化と技術力向上のための技術研修の効果的な実施等を行っている.また研修運営委員会では,全国の大学・研究機関の地震・火山観測関連業務及びそれ以外の業務に従事する技術職員を集めて,年に一度3日間の日程で職員研修会を実施し,,観測・実験・データ処理などの日常研究教育業務の紹介やその成果,観測方法の工夫や装置の改良などを相互に報告することで,技術力の向上を図っている.

(1)情報処理室

情報処理室では,情報処理の面からの観測データ管理,データ・研究成果公開,ホームページ作成,情報処理環境整備による研究活動サポートを行ってきた.具体的には,幾つかのセンターや部門の研究事務支援,共同利用研究集会の支援,反射法地震探査機材の管理,地震研ホームページの維持,地震研究所所蔵の空中写真・地質図幅の管理・貸出業務などである.技術職員の退職に伴い,これらの業務の多くは,研究事務支援室,広報アウトリーチ室,図書室へ移行している.

(2)技術開発室

技術開発室は,開発系と分析系に分かれている.開発系では,観測・実験に必要な機器の試作・開発・装置の維持管理を通じて,観測・実験研究を技術面から支援している.また,所内教職員からの依頼による機械工作(金工・木工),電気回路製作,技術相談を行っている.更に,汎用性の高い工作機械,工具類,計測装置,機械・電気部品,ソフトを常備し,利用者の利便性を図っている.また,定期的に機械工作講習会を実施している.分析系では,火山岩試料,実験合成物などの化学分析サポートや機器保守を行っている.

(3)総合観測室

総合観測室の活動は,観測開発基盤センターが管理している地震・地殻変動・火山・電磁気の観測所及び観測網の保守及びデータ管理・処理,本センター所有の観測機材の維持・管理,地震研究所の各センター・部門の実施する観測研究の支援,地震研究所が共同利用共同研究拠点として実施している全国大学合同観測研究やその他の共同利用に関わる支援まで,非常に多岐にわたる.また,海域観測支援も総合観測室の重要な仕事である.更に,突発的な地震・火山噴火に対応した,臨時の野外観測の中核となっている.冒頭で述べたように,現在は,地震研究所の研究者の要請に応じて技術職員が技術支援を行うシステムになっている.その結果,各技術職員の支援内容も多岐にわたるようになり,更に技術職員間の相互協力が高まった.2011~2012年度に多くの技術職員が退職を迎えるにあたり,若い世代の職員への引き継ぎ作業を重点的に実施した.その結果,退職した職員の技術はほぼ伝承されたと言ってよい.2013年には,職員間の更なる相互支援が進み,単なる技術の伝承ではなく,新たなシステム開発の機運も高まっている.

(4) 技術部を取り巻く諸問題

この5年間の2007~2012年に,11名の技術職員が退職 ,1名が死去した.更に,次の2年間で3人の技術職員が退職する.一方,この5年間に新たに採用した技術職員は,5人であり,十分な人員補充がなされていない.これは,以下の点で大きな問題となると認識している.

以上の問題点を解決するためには,十分な人員を確保することが最も理想的ではあるが,現状においては,現有の技術職員に全ての支援業務依頼(共同利用・共同研究に伴う業務依頼を含む)に対応することは不可能であり,アウトソーシングも模索する必要があるとともに,その為の資金(外部資金まで含めた)確保が必要となる.