9.1.1 拠点の概要

地震研究所は,1994年に全国共同利用研究所へ改組した後,主として地震・火山関連の理工学研究者に対し,「全国共同利用」の各種プログラムを提供してきた.2010年度からは全国共同利用制度が拡充され,「共同利用・共同研究の拠点」が文部科学大臣の認定により,国公私立大学に設置できることとなった.地震・火山噴火予知研究協議会(9.2節参照)に参加する大学や,地震及び火山に関連する諸学会の理解と要請とを受けて,地震研究所は「地震・火山科学の共同利用・共同研究拠点」の認定を2009年3月に申請し,2010年4月から共同利用・共同研究拠点として活動している.

地震や火山噴火現象をはじめとする固体地球科学の研究推進のためには,国内外の研究機関・研究者の協力による長期的大規模観測研究が欠かせない.地震研究所は,共同利用・共同研究拠点として,全国の大学や研究機関が連携した共同観測研究において下記(1)〜(3)に示す役割を果たしている.

(1)災害の軽減に貢献するための地震火山観測研究計画の推進
全国的プロジェクトとして2013年度まで実施された「地震及び火山噴火予知のための観測研究計画(以下,予知研究)」(2014年度からは「災害の軽減に貢献するための地震火山観測研究計画の推進について )に関連して地震研究所内に地震・火山噴火予知研究協議会を設置し,研究計画立案に中核的役割を果たすとともに,全国連携を強化する(9.2参照).

(2)研究コミュニティのベースアップと国際化への貢献
後述の共同利用・共同研究拠点プログラムを戦略的に実施し,固体地球科学コミュニティの拡大とコミュニティ全体のベースアップを図る.また,固体地球科学の先端的研究推進に必須である観測研究の国際化促進を目的として,国際的地球物理観測ネットワークを維持するためのコンソーシアムを他機関と共同して立ち上げるとともに,その運営に主導的役割を果たす.本共同利用・共同研究拠点制度と所内組織である国際地震・火山研究推進室(8.1節)を合わせて活用することによって,研究コミュニティ全体の国際化の窓口となる.

(3)新しい潮流となる大型研究プロジェクトの創出
固体地球科学を科学技術全般の進展および社会のニーズに合わせて発展させることを目的として,総合大学における共同利用・共同研究拠点としての強みを活かし,常に新しい潮流となる学問領域を開拓し,多様な学問分野を横断する大型研究プロジェクトを創出する.