10.4.1 センターの方針

2.9.1で説明したが,本センターは2011年東日本大震災を契機として発足した.東大本部に提出され学内1次スクリーニングを通った概算要求のプロジェクトを取りやめ,理工学連携強化とシミュレーション統合を理念とした本センターの発足を提案した.提案の結果,時限付教授ポスト1,准教授ポスト2を得たのである.京コンピュータの大型プロジェクトに参加しているため,シミュレーションを根幹に置く本センターの研究環境は恵まれたものであったと考えられる.少なくとも,京コンピュータのプロジェクトに加わることができなかったとしたら,本センターの研究活動は,全く次元の異なったレベルに落ちたことは想像に難くない. サイエンスプラン追補の中で核となる,観測研究と最先端計算科学の融合を推進するために,解析理論の構築と解析手法の開発という計算研究の基盤を整備することが本センターの方針である.基盤整備は,先端研究とも直結する.例えば,具体的な目標として,常時観測のデータと大規模計算シミュレーションを使うデータ同化の理論構築と手法開発を継続的に実施し,これをコミュニティモデル構築の礎とすることが考えられている. この方針に従って,注目に値する研究成果を上げることで,計算科学との融合という研究戦略の有効性を明示することが必要である.本センター発足の理念である,理工学連携強化とシミュレーション統合が,この研究戦略に沿った5年単位での研究戦術となる.ポストペタプロジェクトの参加が見込まれることを前提に,シミュレーション室・データ同化の所内研究プロジェクトと共同利用研究という所外研究プロジェクトを進めることを考えている.