4-5. 雲仙火道掘削

 

 雲仙科学掘削プロジェクト(USDP)が科学技術振興調整費研究として、1年間の予備研究を経て1999年度から6年間の予定で始まっている。これは、1990年から1995年まで噴火(平成噴火)が起きた雲仙火山において行う「科学掘削による噴火機構とマグマ活動解明のための国際共同研究」である。産業技術総合研究所、地震研究所、九州大学理学院などのほか外国の研究機関が参加して行われている。雲仙火山の成長史、構造、マグマ上昇の様式を解明するために地質、地球物理、地球科学的な研究を行う。本プロジェクトはそれぞれ3年の2期からなり、第1期(19992001年度)では、山腹に2カ所のボーリングを行って成長史を明らかにするとともに、地震や電磁気学的な探査によって3次元的地下構造を求めた。また、火道掘削をするための戦略と技術的検討を行うとともに、火道掘削の候補サイトである普賢岳北斜面においてパイロット掘削を実施した。第2期においては、普賢岳噴火でできた溶岩ドーム(平成新山)の火道をボーリングで貫通し、火道におけるマグマ上昇と脱ガスのメカニズムを明らかにし、平成噴火のモデルを検証することを目的としている。第2期は国際陸上科学掘削計画と共同事業として行われる。

 マグマが地上に接近する最後の約1kmにおいてマグマ中の水の溶解度が急激に減少するために、マグマの発泡とそれに伴う脱ガスがこの深さで効果的に起こりうる(図1)。珪酸に富んだメルトからの脱ガスとその結果による結晶化によってマグマの物性は大きく変化する。このような深さにおいて、噴火前や途中に低周波(長周期)地震が発生することや圧力増することは、これを間接的に裏付けている。平成噴火においては孤立型微動が深さ1.0-1.5kmで、低周波地震が深さ0.5-0kmでそれぞれ起き、ブルカノ式噴火の圧力源と震源がそれぞれ深さ0.8-0.8kmと1kmに相当した。このような深さを直接ボーリングで掘り貫くことが、噴火中に脱ガスに伴って起きた減少をその場観察する最善の方法である。

 火道掘削のターゲットの形状は長さ数百mほどで厚さ10-20 mの岩脈(板)状であると考えられる。また、雲仙火山地域の南北引張応力場、噴火直前に起きた火山構造性の地震の配列分布、および、溶岩ドームに最期に貫入した溶岩尖塔の形から考えて、東西方向に伸びていると考えられる。火道掘削は普賢岳の北斜面において、岩脈方向に垂直に行われるため、火道に当たる可能性は高い。地震学的探査結果から、低地震波速度で水平な地層からの反射が観測されない場所に火道があると考えれる。始めに垂直掘削で開始し次第に増角する工法で行うことが最も確実の方法である(図2)。火道の中心温度は600℃近いと考えられるが、高温部は薄い火道にのみ限られる。坑底温度を特殊なケーシングプログラムと泥水循環を行うことによって低く保つことができる。このため、温度測定、坑壁画像撮影などの坑内計測を火道近傍においても行うことができる。

図1 平成新山溶岩ドームと火道上部のイメージ図。マグマは火道上部で泡立ち、その後、破砕・溶結するまでにガスがマグマから効率良く逃げる。2003年には本坑(USDP-4)掘削で調査し、2004年には枝坑(USDP-4a)で確実にコア採取を狙う。

 

図2 火道掘削の坑跡図。New RS-3RS-3はそれぞれ本坑・枝坑とパイロット坑掘削サイト。

 

 

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