5-8. 地震活動に関連する電磁気現象発現機構の研究

 

 電磁場の時間変化を追うことによって,地下間隙水の流動(界面動電現象),応力の変化(ピエゾ磁気効果),温度構造の変化(熱磁気効果)が捉えられ得る.また,比抵抗構造の時間変化を捉えることは,間隙流体量やそのつながり方の変化を明らかにすることにつながる.一方で,近年の測地学的技術革新(GPS,SAR,絶対重力計など)や,広帯域地震計の普及によって,従来では観測にかからなかった微細な変動や長周期の変動が空間分布を持った形で捉えられるようになった.従って,電磁場データと上記の新しい観測データとを照合することによって,物理的解釈が可能な異常変化が捉えられれば,従来の地震学的描像からだけでは得られなかった地殻内流体の移動を伴った新しい地殻活動のイメージが構築出来る可能性がある.

 そこで,全国の大学,研究機関と共同して伊豆半島東部地域・東海・関東地域の電磁場連続観測を実施している(図1).また,伊豆諸島域においても全磁力,自然電位モニターを実施してきた.伊豆半島全体として群発地震活動や隆起が鈍化するにつれ全磁力変動も小さくなっていること,活動時の電磁場変化からこの地域の活動に熱水の上昇が関与していたらしいことが示唆された.平成10年までに顕著な全磁力減少(-30nT/5年間)を示していた伊東市北部,御石ヶ沢観測点では一旦平成10年後半から変化が停滞し,平成11年7月頃からゆるやかに全磁力が減少した.同地域での多点磁力計観測から,この変化が局所的なものであることが明らかになった.しかし,通常この種の変化の原因とされる熱消磁では,北側正/南側負の対をなした変化となるが,北側での正変化が認められず,依然としてその変化の原因は不明である.また,各観測点近傍10m四方の領域でメッシュ状に全磁力マッピングを実施した結果,観測点での全磁力年周変動が温度変化による観測点近傍の磁化の消帯磁で説明可能であることが明らかとなった.東海地域での観測については,全磁力差永年変動のトレンドに2000年後半から変化が認められたが,それが2000年に起こった様々な地殻変動に対応するものかどうかは現在検討中である.三宅島においては,全磁力変化から噴火前2年間にわたる熱消磁の進行や,陥没孔形成以前の地下での空洞の形成,陥没孔拡大の詳細なプロセスが推定されたほか,自然電位変化から傾斜ステップに対応して水が周囲に押し出されていたことが示唆された.

図1.東海・関東地域の電磁場観測点分布.伊豆半島東部地域を拡大して左上に示す.

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